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便利屋に依頼がこない  作者: ニシロ ハチ
17/56

依頼がこない八日目 1

 目が覚めえると、隣でヒカリが眠っていた。

 この部屋には、ベッドの他に横になれるスペースは床しかない。床には絨毯も敷いていないので、肩や腰が痛くなるだろう。彼女をそこで寝かせるのは、心が痛むので、スペース分け与えている。

 ミンチは一人で起きて、自分用のコーヒーを淹れた。それを飲んでゆっくりしていると、ヒカリが目を覚ました。

「おはようございます」ヒカリは言った。

「おはよう。牛乳飲む?」

「うん」ヒカリは頷いた。

 彼女の分の牛乳をグラスに注いでテーブルの上に置いた。彼女はそれを半分まで飲んだ。

「そういえば、朝ごはんは食べる?」ミンチはきいた。

「どちらででも」彼女は答えた。

「いや、食べた方がいい。けど、いつもは何を食べてるの?」

「コーンフレークかパン」彼女は行儀良く椅子に座ったまま答える。

「今は、どちらもない。キャベツと豚肉ならあるから、それを炒めたものなら、作れるけど」

「そんな気分じゃない」

「ソーセージとキャベツの千切りでもいい」

「そっちの方がいい」

「わかった」

 ミンチはソーセージをフライパンで熱して、その間に、キャベツを切った。マヨネーズとドレッシングをテーブルに置いて、大きな平皿にキャベツとソーセージを乗せた。それを彼女の前に置く。

「ミンチさんは食べないの?」彼女は言った。

「食べない」

「どうして?」

「食べない方が調子がいい」

「私も別にいらないけど」

「無理にでも食べた方がいい」

「どうして?」

「体を大きくする必要があるから。その為には栄養がいる」

「お姉ちゃんは食べない時もある」

「食べる様に言ってあげたらいい」

「わかった」彼女はニッコリと笑って食事を始めた。

「警察以外からは、逃げている人はいるの?」ミンチは、彼女が食べ終わった後にきいた。

「いる」彼女は答える。

「誰?」

「わかんない」

「なんで?」

「お姉ちゃんが教えてくれないから」

「どうして逃げてるの?」

「わかんない」

「いつまで続けるつもり?」

「わかんない」

「大抵の場合は、逃げる必要も無かったりする。捕まったとしても、思っているよりも罪が軽くなる。子どもだったら尚更だ。ちょっとの時間拘束で済む。両親は呼ばれるだろうけど。ずっとは続けられないと思う」

「難しい」彼女はこっちを見たまま言った。

「誰も、君を怒らない。笑って済ましてくれるかもしれない」

 彼女は下を向いてしまった。

 ミンチは、ここ一カ月以内のニュースを確認していた。行方不明になった子どもの記事は幾つか見つかったが、死体をして見つかったり、下流で発見されたり、隣の県で無事発見されたりと、解決されたものばかりだった。赤井という姓の事件は一つもない。

 依頼人である城向に連絡もとったが、やはり、繋がらなかった。

 その時、インターフォンが鳴った。


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