依頼がこない八日目 1
目が覚めえると、隣でヒカリが眠っていた。
この部屋には、ベッドの他に横になれるスペースは床しかない。床には絨毯も敷いていないので、肩や腰が痛くなるだろう。彼女をそこで寝かせるのは、心が痛むので、スペース分け与えている。
ミンチは一人で起きて、自分用のコーヒーを淹れた。それを飲んでゆっくりしていると、ヒカリが目を覚ました。
「おはようございます」ヒカリは言った。
「おはよう。牛乳飲む?」
「うん」ヒカリは頷いた。
彼女の分の牛乳をグラスに注いでテーブルの上に置いた。彼女はそれを半分まで飲んだ。
「そういえば、朝ごはんは食べる?」ミンチはきいた。
「どちらででも」彼女は答えた。
「いや、食べた方がいい。けど、いつもは何を食べてるの?」
「コーンフレークかパン」彼女は行儀良く椅子に座ったまま答える。
「今は、どちらもない。キャベツと豚肉ならあるから、それを炒めたものなら、作れるけど」
「そんな気分じゃない」
「ソーセージとキャベツの千切りでもいい」
「そっちの方がいい」
「わかった」
ミンチはソーセージをフライパンで熱して、その間に、キャベツを切った。マヨネーズとドレッシングをテーブルに置いて、大きな平皿にキャベツとソーセージを乗せた。それを彼女の前に置く。
「ミンチさんは食べないの?」彼女は言った。
「食べない」
「どうして?」
「食べない方が調子がいい」
「私も別にいらないけど」
「無理にでも食べた方がいい」
「どうして?」
「体を大きくする必要があるから。その為には栄養がいる」
「お姉ちゃんは食べない時もある」
「食べる様に言ってあげたらいい」
「わかった」彼女はニッコリと笑って食事を始めた。
「警察以外からは、逃げている人はいるの?」ミンチは、彼女が食べ終わった後にきいた。
「いる」彼女は答える。
「誰?」
「わかんない」
「なんで?」
「お姉ちゃんが教えてくれないから」
「どうして逃げてるの?」
「わかんない」
「いつまで続けるつもり?」
「わかんない」
「大抵の場合は、逃げる必要も無かったりする。捕まったとしても、思っているよりも罪が軽くなる。子どもだったら尚更だ。ちょっとの時間拘束で済む。両親は呼ばれるだろうけど。ずっとは続けられないと思う」
「難しい」彼女はこっちを見たまま言った。
「誰も、君を怒らない。笑って済ましてくれるかもしれない」
彼女は下を向いてしまった。
ミンチは、ここ一カ月以内のニュースを確認していた。行方不明になった子どもの記事は幾つか見つかったが、死体をして見つかったり、下流で発見されたり、隣の県で無事発見されたりと、解決されたものばかりだった。赤井という姓の事件は一つもない。
依頼人である城向に連絡もとったが、やはり、繋がらなかった。
その時、インターフォンが鳴った。




