依頼はきていない七日目の昼
ミンチは二人の会話を聞いて驚いていた。
「その枕はないとか、なくても寝れるっていうのは、流行ってるの?」ミンチはきいた。
「まさか。私の思い付きですよ」Qちゃんが答える。「良いですよね。これ。『自分に合った枕はどこにもない』『自分に合った枕がなくても寝れる』何回きいても素敵やわ」
「似た様なのが流行ってたりする?」ミンチはきいた。
「さぁ?わかりませんけど。でも、そんな人がいたら見込みがありますね」Qちゃんはニッコリと笑う。
「センスが鈍ったんじゃないっすか?」ナナ氏はこっちを見ている。
ミンチの表面は頷いていた。でも、頭の中で考えている。一週間前の、便利屋を開業した日に、おかしな女性に会った。その女性が同じセリフを言っていた。
違う。その女性は、そのセリフを聞くことになると、言ったのだ。彼女自身は、それを予知能力と言っていた。その場面を見た、と。
ミンチは周りを見渡して、馬鹿らしくなり溜息をついた。どう考えればいいのだろう?有名な台詞とは思えないし、偶然にしては重なりすぎている。
もしかして、本当に予知を……?
それだけない。
そういえば、その女性は、その時、自分が困っているとも言っていた。今朝、知らない少女がベッドの上で眠っていた。その少女は、浴室に隠れている。困っているといえば、困っている。これも予知していたのだろうか?
馬鹿馬鹿しい。
でも、無視も出来ない。
あの予知と言っていた女性と知り合ったのは、偶然だ。彼女が落とした荷物を一緒に運んだから、あの予知らしい言葉をきいた。仕込みなどではないだろう。もし、仕込むなら、落とした荷物を拾って手渡した時に言うだろう。
だったら、予知能力が存在すると、認めるのか?
「ちょっと、トイレ借りますね」Qちゃんは立ち上がって、キッチンの部屋へ行った。「えっと、左でしたっけ?」
「右っ」ミンチは声が大きくなった。自分が焦っているのを自覚する。つい、立ち上がりそうになったのを、抑えた。トイレの位置を教える為にわざわざ、案内するのは不自然だ。
「どうしたんすか?」ナナ氏はこっちを見ている。
「なんでもない」
Qちゃんからの悲鳴は聞こえない。間違えなかったのだろう。後ろめたい事などないのに、罪悪感のようなものがある。
やらなきゃいけない事は幾つかある。まず、ヒカリという少女を適切に対処しなければならない。依頼人の城向にも確認と取って、予知能力とかの女性にも、話をききたい。
ゆっくりしている暇はない。
Qちゃんは戻って来た。その顔はどこか曇っているようにも見えた。




