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便利屋に依頼がこない  作者: ニシロ ハチ
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依頼はきていない六日目

 ミンチは水道管の点検の紙をポストに入れた。

 これで今日の仕事は終わりだ。後は、後日、それらしい恰好をして伺えばいい。何事も準備が肝心だ。これは、便利屋とは関係ない、先日のカフェで受けた仕事の一部だ。レンタカーに乗り込む時、視線を感じて周りを見渡すと、中学生くらいの女の子がこっちを見ていた。気にせずにエンジンを掛けて車を発進させた。

 レンタカーを返して、自宅までは歩いて帰った。アパートの前でなんとなく電柱の先を見ると、鞄は消えていた。矢島が夜中に登ったのだろう。ああ見えて、それなりに体力はあるみたいだ。

 玄関を開けて、中に入る。鍵は常に掛けていない。盗まれて困るものは、ここには一つも置いていない。それに、このアパートのドアなら、鍵が無くても専用の器具さえあれば、簡単に開けることは出来る。自分に出来るのだから、他の人もそうだろう。そうなると、鍵を掛けていない方が、下見をしている連中には有効だ。鍵をこじ開けて中に侵入するのと、鍵が掛かっていない所から侵入するのは、慣れた人からすれば大差はない。それよりも、侵入した後の、部屋の中にいる時間の方が問題だ。その時間のリスクは、どちらも同じだからだ。だったら、リターンが望める方を選ぶだろう。

 以上の考えから、鍵を掛けない事にしている。その他のメリットは、出入りが楽なこと。鍵を持ち歩く必要がないこと。

 ミンチは、簡単な夕食を作ってそれを食べた。シャワーを浴びて、体を乾かした後、ベッドに横になった。普段はアルコールを飲まないミンチだった。

 今日は、いつもと変わらない日常だった。ミンチは、目を瞑る。


 ミンチには、未来を見通す力などあるはずもなかった。せいぜい、予測を立てて行動する程度だ。だから、翌朝、目覚めた時の衝撃を知らないでいる。でも、注意深く、そして、人を信じて生きていたとしても、あの出来事を予測することなど出来なかっただろう。だから、最初から、どうしようもなかったのである。ミンチに選択肢はなく、強制的に巻き込まれただけなのだから。


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