表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】追放された公爵令嬢ですが、天気予報スキルのおかげでイケメンに拾われました  作者: 青空あかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/84

第66話:破蕾病の出現

「ウェ、ウェーザ嬢……それにフレッシュも……」

「私たちは“破蕾病”を治した経験があります。きっと、お力になれると思います」

「うむ……し、しかし……」

「他国の方に話していいものでしょうか……」

 

 ルーズレスさんたちは言い淀んでいる。

 でも、あの病気の怖さ、辛さはネイルスちゃんだけでなく私の身にも染みていた。

 苦しんでいる人がいるならば、少しでもどうにかしたい。

 

「“破蕾病”の怖さは私もよく知っています。どうか、お話願えませんか?」

「俺の妹もその病気になっていたんだ。今はもう完治したがな。俺たちにも話してくれないか?」

「アタシらにも多少の知識はあるよ」

「父上、母上、お願いです。話してください」

「そうだったのか……ラフ殿の妹君まで」


 みんなで話すと、ルーズレスさんたちも静かに話し出してくれた。


「ラントバウ王国では、最近“破蕾病”が報告され始めてな。我々も相談を受けているのだが、対処に困っているのだ」

「昔はそんなことはなかったのよ。本当にここ最近ね。なので、“重農の鋤”で育てているという<さすらいコマクサ>を私たちにも分けてくれないかしら?」

「ええ、それはもちろんお分けしますが……。再発したというのはなんでしょうか」

「再発なんて俺も聞いたことがないな」


 “破蕾病”は<さすらいコマクサ>から作った薬を飲めば完治するはずだ。

 ネイルスちゃんだってしっかり治った。

 アザが復活することもない。


「そのことなのだが……」


 ルーズレスさんたちは顔を見合わせると、深刻な表情で話し出した。


「“破蕾病”が報告され始めてから、流れの薬師が来てな。とある国の宮廷薬師も務めたことがあるという触れ込みだ。どうやら、<さすらいコマクサ>を使わない“破蕾病”の新しい薬を作ったらしい」

「え、そんな薬があるのですか?」

「ああ、なんでも長年の研究成果だそうだ。<さすらいコマクサ>は王国でも見つかっておらん。私も聞いたときは画期的な発明だと思った」


 ネイルスちゃんの“破蕾病”を治すときは、そのような薬はなかった。

 だから、あんなに必死になって<さすらいコマクサ>を探し出したのだ。

 ギルドのみんなも聞いたことがないようだった。


「ですが、再発するとは変です。まだ試作段階の薬なんでしょうか」

「どうやら、一時的にはアザが消えて治るらしい。だが、少し経つとぶり返すと聞いている。さらには症状がより強くなるようだ」

「それは、なんだか怪しいですね。治ったと思ったのにまた症状が出るなんて」

「僕も変だと思います。<さすらいコマクサ>から作った薬であれば完治するはずですから」


 一旦治ってもぶり返すのでは意味がない。

 それどころか、症状が強くなったらより苦しんでしまう。

 どうしてそんな薬を売るのだろうと思った。


「そして、奇妙なことに一部の貴族に多発している。どの病人も……クライム公爵の土地で働いている者たちなのだ」

「「クライム公爵……(ですか)?」」

 

  ルーズレスさんとシビアリアさんは話を続ける。


「ラントバウ王国でも有数の大貴族だ。我らにも負けないほど規模が大きく、政治への発言力も強い」

「以前、大嵐で農場がダメになった小さな貴族がたくさんいたの。そういう人たちは使用人も雇えなくなっちゃってね。クライム公爵はそのような貴族に土地や家を与えて、また農業ができるように契約していたのよ」

「なるほど……話を聞いている限りですと良い人に思えますね……生活を支援しているということですよね」


 自然災害で困っている人に土地を分けて、生活の立て直しをサポートする。

 むしろ、良い行いをしているように聞こえた。


「表向きはウェーザ嬢の言うとおりだ。だが、実際は地主と小作人の関係に近いようだ。クライム公爵は税という名目で、厳しく作物や金を徴収しているらしい」

「昔から良いウワサをあまり聞かない家なの。それとなく私たちも意見しているのだけど、よその貴族にあまり口出しはできないのよ」


 ルークスリッチ王国でも、貴族は互いに深く干渉することはなかった。

 その辺りは貴族特有の文化なのかもしれない。


「それで、“破蕾病”のことを相談してきたのは、クライム公爵と契約している貴族の方ですか?」

「ああ、そうだ。“破蕾病”と薬の件はかなり固く口止めされているようでな。私も最近まで知らなかった。ようやく数人が話してくれたような状況だ」

「口止め……ですか。なぜ隠したがるのでしょう」

「クライム公爵は、自分の土地から“破蕾病”が出るなど恥だ、などと言っているらしい。他言すると薬師が治療に専念できなくなる、ともな。契約している貴族たちも、立場上相談しにくいのだろう」


 ルーズレスさんの話は終わり、室内は静かになった。

 どことなく薄気味悪さを感じる話だ。

 ずっと黙って聞いていたアグリカルさんが口を開いた。


「聞けば聞くほどおかしな話だね。アタシには知られたくないことがあるような気がしてならないよ」

「俺もそう思う。薬を飲んでも“破蕾病”が再発するというのは、もっとよく調べるべきだ」

「他の貴族に相談すれば、同時に警告にもなるのに。どうしてそんなことをするのだろう」


 私もギルドのみんなと同じ意見だ。

 疑問に感じることばかりだった。


「その“破蕾病”が再発したという方の話を、もう一度よく聞いてみませんか」


 この話はうやむやにしてはいけない気がする。

 何かが隠されているように思えてならないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mノベルスf様より、第1巻2022年11月10日発売します。どうぞよろしくお願いいたします。画像をクリックすると書籍紹介ページに移動いたします。 i000000 i000000 i000000
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ