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【書籍化】追放された公爵令嬢ですが、天気予報スキルのおかげでイケメンに拾われました  作者: 青空あかな


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第64話:祝勝会

「さあ、みんな着いたよ。我が家へようこそ」

「こ、ここがフレッシュさんの家……」

「じゅ、“重農の鋤”より大きいじゃないか……」

「こいつは巨大な屋敷だ……」


 その後、ルーズレスさんたちのお屋敷に招待された。

 “花の品評会”を優勝した祝勝会を開いてくれるというのだ。

 グーデンユクラ大公爵家。

 つまり、フレッシュさんの実家なわけだけど、途方もなく大きなお家だった。

 シックな赤レンガの壁に落ち着いた茶色の屋根、目の前に広がるお庭は樹木が刈り込まれていて、それすらが立派な庭園だ。

 

「さあ、まずは家の中にどうぞ。父上、母上、ギルドのみんなを連れてまいりましたよー」

「「は、はい」」


 フレッシュさんに案内されお屋敷に入る。


「「お帰りなさいませ、フレッシュ様!」」

「「うわっ」」


 ズラリッ! と使用人たちが規則正しく並んでいた。

 右にはメイドさん、左には執事さん。

 一分の隙も無いほどに美しく並んでいる。


「「フレッシュ様のお帰りを使用人一同、心待ちにしておりました」」

「みんな、心配かけて本当に悪かったね。僕がいない間屋敷を管理してくれてありがとう」


 フレッシュさんはサラリと挨拶を交わして進んでいく。

 さすがは跡取り息子だ。


「よく来たな、フレッシュ。そして、“重農の鋤”の皆さん」

「いらっしゃい。その節は悪かったわね。あなたたちを悪く言うつもりはなかったの」


 奥の部屋からルーズレスさんたちが歩いてきた。

 二人とも“重農の鋤”に来たときの威圧感はない。

 むしろ、穏やかで優しい微笑みをたたえていた。

 フレッシュさんと楽しそうにお話している。


「なんだか、初めて会ったときと感じが違いますね」

「あいつらにもあんな顔ができるなんてね」

「なんだかんだ、親子ということなんだろう」


 さて、とフレッシュさんが振り向く。

 

「みんな、祝勝会の用意はできているよ。大広間に案内するね」

 

 大広間もこれまた広かった。

 横長のテーブルが部屋の端までありそうなほど置かれている。

 ルークスリッチ王国の大広間にも負けないくらいだ。

 

「では、フレッシュ及び“重農の鋤”の優勝を祝って……かんぱーい!」

「「かんぱーい!」」


 ルーズレスさんの合図で祝勝会が始まった。

 たくさんの美味しそうなお料理が運び込まれてくる。

 子豚の丸焼きや、おいしそうな魚のフライなど盛りだくさんだ。

 もちろん、ラントバウ王国特産の作物たちもたくさん出されていた。

 さっそく、ルーズレスさんたちはこちらに来た。


「あれから私たちも話し合ったんだが、思い返せばお前と会話することもあまりなかったな。仕事がどうしても忙しくて、お前を放っておいてしまった」

「あなたとちゃんと向き合わなかった私たちも悪かったわね。もっと私たちから歩み寄るべきだったわ。ごめんなさい」

「いえ……僕の方こそ勝手なことばかり言ってしまい申し訳ありません」


 ルーズレスさんたちは優しくフレッシュさんを抱きしめる。


「フレッシュ。お前の様子を見ていたが、本当に楽しそうだった……」

「あなたの笑顔を見るのはいつぶりだったかしらね……」

「父上、母上……」


 二人は寂しそうに呟いている。


「<歌うたいのマーガレット>を見ていると、お前の農業に対する気持ちが伝わってきた。よくあそこまで育てたな」

「あの歌声もフレッシュの真剣さが形になったようだったわ」


 きっと、親子のすれ違いが確執の原因だったんだろう。

 ルーズレスさんたちは、“重農の鋤”も褒めてくれた。


「“重農の鋤”の皆さんも、フレッシュに力を貸していただいてありがとう。息子だけでは到底成しえなかった偉業だ」

「あなたたちもラントバウ王国に負けないくらい素晴らしい技術を持ってらっしゃるのね」


 アグリカルさんと固く握手を交わしている。


「諸々の道具はアグリカル殿が作ったと聞いている。そんな道具が作れる鍛冶師はラントバウ王国でもなかなかいないだろう」

「まだそんなに若いのにギルドを率いるとは、大変優秀な人なんでしょうね」

「あ、いや、そんな大したことじゃないさ」


 アグリカルさんは照れつつも嬉しそうにしていた。


「ウェーザ嬢。天気予報が100%わかるとは大変に羨ましい。天気は農業に必須の情報だからな。フレッシュからも、貴殿のおかげでギルドは発展できていると聞いている」

「ルークスリッチ王国とロファンティの両方で天気予報をしているみたいね。私たちの国にも来てほしいくらいだわ」

「お褒めの言葉恐れ入ります。でも、私にできるのは天気を予報することだけです。実際の農業はギルドの皆さんのお力だと思います」

「謙遜しなくてもいいのよ。あなたは本当に素晴らしい人なのだから」

 

 ギルドのみんなや王国の人たちに感謝されるのとは、また違った嬉しさを感じた。


「それで、フレッシュ。お前の進退だが“重農の鋤”にいていい。むしろ、今のお前には必要な環境だとよくわかった」

「農業を勉強させてもらいなさい。だけど、たまには顔を見せなさいね」

「ありがとうございます、父上、母上!」


 私たちが優勝したらフレッシュさんはギルドに残れると決まっていたけど、改めて言われると喜びがあふれる。


(よかった、これからもみんなと一緒にいられる……)


 フレッシュさんは喜びながら話を続ける。


「あと、そうだ。僕たちは<さすらいコマクサ>の栽培にも成功したんですよ」

「「……<さすらいコマクサ>?」」


 ルーズレスさんたちはピタリと動きを止めた。


「<さすらいコマクサ>とは、あの<さすらいコマクサ>か? 破蕾病を治療薬になる……」

「ラントバウ王国でも全然見つからないのに……」

「ええ、まさしくそうです。こっちにいるウェーザさんとラフが登るのが非常に難しい山から採ってきてくれたんですよ」


 説明を聞いても、ルーズレスさんたちは相変わらず唖然としていた。


「しかし、よく採取できたな……」

「ウェーザの【天気予報】スキルで動きを予想したんだ」

「「なるほど……そんな使い方もできるのか(ね)」」


 ラフさんと一緒に軽く会釈した。

 フレッシュさんは嬉しそうに話を続ける。


「“花の品評会”には管理の都合で出品を取りやめたのですが、これが非常に美しい花で……。風に揺れている様子は妖精が躍っているみたいなんです。ようやく小さな畑くらいは増やすことができました」

「フレッシュ、そういうことはだな……もっと早く言うもんだ」

「本当よ。そんな話を聞いていれば、あんな態度を取る必要はなかったのに」

「す、すみません! あの時はそんなことを考える余裕もなくて……!」

「「あはは」」


 フレッシュさんたちの確執は消えていく。

 静かに見守っていたラフさんに話しかけた。


「よかったですね、ラフさん」

「ああ。頑張って本当に良かったよ」


 出されているお料理には、どれも幸せの味がする。

 そのまま、和やかな雰囲気で夜も更けていった。

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Mノベルスf様より、第1巻2022年11月10日発売します。どうぞよろしくお願いいたします。画像をクリックすると書籍紹介ページに移動いたします。 i000000 i000000 i000000
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