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【書籍化】追放された公爵令嬢ですが、天気予報スキルのおかげでイケメンに拾われました  作者: 青空あかな


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第52話:お土産話と訪問者

「では、皆さん、本当にありがとうございました。おかげさまで晩餐会は大成功しましたよ」


 晩餐会も無事に終わり、私たちがギルドに戻る日がやってきた。

 お忙しいだろうに、ディセント様がお見送りに来てくれている。


「アタシらも楽しかったよ。ギルドの作物も色んな人に食べてもらえたからね」

「ディセント王子、こちらこそありがとうございました。僕たちの方こそ貴重な経験をさせてもらいました」

「またいつでも遊びに来てください。国を挙げて歓迎しますよ」

 

 アグリカルさんたちはディセント様と握手を交わす。

 ラフさんはちょっと離れたところで待機していた。


「ほら、ラフ。何やってんだい、こっち来な」

「別れの挨拶くらいしなよ。お世話になったんだから」


 二人に促され、しぶしぶといった感じでやってきた。

 ディセント様の目の前に立つ。


「またな」

「ええ、またお会いしましょう」

 

 握手こそしないもののきちんと挨拶していた。

 さて、と荷馬車を走らす。

 ディセント様は姿が見えなくなるまで手を振っていた。


「“重農の鋤”のみなさーん! お元気でー!」

「色々ありがとうー! アンタはいいヤツだったねー!」

「ディセント様ー! 本当にお世話になりましたー!」


 御者は帰り道もラフさんとフレッシュさんが引き受けてくれた。

 アグリカルさんが荷台から声をかける。

  

「アンタたち、帰るまで気を抜くんじゃないよ。いつどこから盗賊どもが来るかわからないからね」

「言われなくてもわかってる。ウェーザ、すまないが後ろの方を見ていてくれるか?」

「はい、こっちの見張りは任せてください。怪しい動きがあったらすぐに知らせます」


 気合いを入れて辺りを見回す。

 どんな怪しい人でも見逃さないつもりだった。

 人っ子一人いないけど。


「ウェーザは優しくていいな。どこぞのギルドマスターとは大違いだ」

「なんだって!?」


 アハハ、とみんなで笑いながらロファンティに向かう。

 ギルドのみんなに王国の話をするのが楽しみだった。



 しばらくして、私たちは“重農の鋤”に帰ってきた。

 荷物がなかったので行きより早く着いた。

 もちろん、盗賊などの悪い人に襲われることもなかった。

 アグリカルさんは力を吸収するように、目いっぱい空気を吸っている。


「あぁ、アタシはこういう場所の方が好きだよ。王国も良い所だったけどね」

「僕も山に囲まれていると、自然体でいられるような気がします」

「やれやれ、肩の荷が降りた感じだ。ホッとしたな」


 やっぱり、みんなはロファンティが好きなんだなと改めて強く思った。

 

「あっ、おかえり! 帰ってきたんだね!」

『まったく待ちくたびれたぞ! 特に変わりないか!? 怪我とかしてないだろうな!?』


 ちょうど荷馬車を片づたとき、ネイルスちゃんとバーシルさんが走ってきた。

 ガバッと私たちに抱き着く。


「「うわっ!」」

「こ、こら! そんなに勢いよく飛びつくなって」

「だって、ずっと待ってたんだもん」

『俺様も待ちくたびれたぞ!』

「まったく、しょうがないな」

「ただいま、怪我なんかしていないわよ。心配してくれてありがとう」


 二人はラフさんに撫でられにんまりしていた。


「おーい、みんなぁ、ウェーザお姉ちゃんたちが帰ってきたよぉ!」

「「なにっ!? 帰ってきたって!?」」


 ネイルスちゃんが大声で言うと、ギルドの人たちがわいわいと集まってきた。


(“重農の鋤”に戻ってきたんだな……)

 

 みんなを見ていると、自分の家に帰ってきたような安心した気持ちになる。

 そして、片付けやらなんたらをしていると夜になった。

 フランクさんの美味しいご飯を食べたら、みんなにお土産話をする時間だ。


「ほら、アンタたちに土産さ。王子がたくさんくれたよ」


 アグリカルさんがドサッとお土産を置く。

 王国で一番の紅茶、色とりどりのドライフルーツが入ったおいしそうなクッキー、どっしりとしたホールチーズなどなど……。

 ディセント様が色々珍しい物を渡してくださった。

 フランクさんとメイさんも大喜びだ。


「わぁ、おいしそう! さっそく、明日のおやつにみんなで食べようよ!」

「おお! こんな立派なチーズはなかなか手に入らないぞ! 匂いを嗅いだだけで美味いのがわかるな!」

「オヤジ、隠れ食いだけはしないでくれよ。みんなのチーズなんだからさ」

「なんだと、メイ! そんなことするわけないだろ!」

「うわああ! 冗談だってのに!」


 フランクさんがメイさんを追いかけ回す。


「静かにしとくれ! 疲れてんだよ! まったく、アンタたちはいつもうるさいね!」

「「ははははは」」


 アグリカルさんに怒られるのもいつもの光景だった。


「ねえ、ウェーザお姉ちゃん。王国のお話を聞かせて!」

「もちろんいいわよ。ルークスリッチ王国の宮殿にはお庭があってね。ギルドでも見かけないようなお花がたくさん咲いていたよ。ネイルスちゃんにも見せてあげたかったなぁ」

「ええ~、私もキレイなお花見たかったぁ」


 ネイルスちゃんはうっとりしていた。

 アグリカルさんが納得していない様子で話す。


「むしり取ろうとしたらラフが止めるんだよ」

「当たり前だろうが」

「まったくアンタはケチだね。ちょっとくらいいいだろうに」

「言っておくが俺の花じゃないからな」


 森で似たようなお花が咲いてたら少し積んでこようかなと思った。

 アグリカルさんは疲れた様子で肩をトントンと叩いている。


「晩餐会では質問の嵐だったよ。どうやって育てるんだ、どうやって食べるんだ、とかね。さすがのアタシも疲れたさ」

「それほど、王国にとっては珍しい食べ物だったってことですよ」


 そして、私たちが王国や晩餐会の様子を話している間も、ラフさんは浮かない表情でいた。

 みんなは気づいていないみたいだけど、私にはなんとなくわかる。


(やっぱり、いつもと違う……)


 どことなく暗い影が差している。

 でも、体の具合が悪いわけではなさそうだ。

 やがてお土産話も終わり、お休みの時間となった。 


「ラフさん、ちょっといいですか?」

「なんだ、ウェーザ」


 寝室へ向かうラフさんを呼び止める。 

 やっぱり聞いておきたかった。


「あの……何かあったんじゃないですか? さっきも浮かない様子でしたし……」

「ああ、そのことか。いや……本当になんでもないんだ」


 ラフさんはにこりと笑っている。

 心配させないようにしてくれているんだろう。

 でも、私には力のない笑顔に見えてしまった。

 きっと、話したくない事情があるのだと思う。 


(ラフさんから話してくれるまで待とう)


「そうですか。もし何かあったらいつでも言ってください」

「ありがとう、ウェーザ……おやすみ」

「おやすみなさい」


 自分の寝室に行きベッドに入る。

 窓からはまん丸な満月が見えた。

 優しい光が差し込む。

 ベッドの上がほのかに明るくなった。

 

(私もラフさんを明るく照らせるような存在になれたらいいな)


 そんなことを思いながら眠りに就いた。



□□□


 翌日、目が覚めると体のあちこちが痛かった。


(いたた……きっと、馬車で長い間揺られたからね)


 今日は気をつけて農作業した方がいいかもしれない。

 寝ぐせを整え食堂に降りる。

 朝早いというのに、なんだか騒がしかった。

 ギルドメンバーがあっちこっち走り回っている。

 ふと、横を見るとラフさんがいた。


「あっ、ラフさん、おはようございます。なんだか慌ただしいですが、どうしたんでしょう?」

「おはよう、ウェーザ。どうやら、フレッシュに関係があるようだ」

「フレッシュさん……ですか」

「ああ」


 ラフさんは頷きながらギルドの入り口を指す。

 そこには、フレッシュさんが見たことないくらい硬い表情で立っている。

 そして、大きな男の人とすごくキレイな女性が入ってきた。


「探したぞ、フレッシュ」

「まさか、こんなところにいたなんてね」


 フレッシュさんによく似た背の高い男女だった。

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Mノベルスf様より、第1巻2022年11月10日発売します。どうぞよろしくお願いいたします。画像をクリックすると書籍紹介ページに移動いたします。 i000000 i000000 i000000
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