表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】追放された公爵令嬢ですが、天気予報スキルのおかげでイケメンに拾われました  作者: 青空あかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/84

第45話:蓼藍探し

「さて、まずは蓼藍を手に入れないとな。だが、こんな植物見たことないぞ」

「この辺りに生えているといいんですが……」


 私たちは本を見ながら悩んでいた。

 蓼藍は茎の先に実のような蕾がいっぱいくっついている。

 濃いピンク色のお花だ。

 しかし、このような植物は“重農の鋤”でも見たことがなかった。

 

「行商人に頼んでみるか? だが、採りたての葉の方がよく染まると書いてあるな」

「できれば自生しているものを使いたいですね。“ジャッパン”の植物だから珍しい植物なんでしょうか。ねえ、ネイルスちゃんはこの植物見たことある?」


 ネイルスちゃんを見ると、顎に手を当てて考え込んでいた。

 まるで何かを思い出すように。

 見たことないくらい真剣な表情だ。

 あまりの真剣さにラフさんもたじろいでいた。


「ど、どうした、ネイルス」

「私……この植物見たことある」

「え!? ほんと、ネイルスちゃん!?」

「見たことあるだって!?」


 まさかネイルスちゃんが見つけているとは思わなかった。

 とうの本人は蓼藍の絵を見ながら、うんうんとうなずいている。


「……うん、やっぱりそうだ。バーシルちゃんとお散歩しているときに見つけたの。食べてみたらすごく苦かったからよく覚えているよ」

「そうだったのか。それで、どこにあるんだ?」

「ギルドの近くにある森の中に生えていたよ。少し奥の方だけど。本当にまずかったから動物も食べたりしてないんじゃないかな」

「じゃあ、明日さっそく採りに行こう。今日はもう遅いからな」



 翌日、ギルドの仕事を終えた私たちは森へ行く準備をしていた。

 事情を話すと、アグリカルさんも快く送り出してくれた。

 

「蓼藍はこの小さな鎌で刈り取ろう。採取した物はこのカバンに入れれば大丈夫そうだな」

「たくさん採れるといいですね」

「ちょっとした遠足みたいで楽しみだねぇ」


 目的の森は、農場のさらに奥だ。

 途中、みんなで歩いているとバーシルさんがやってきた。


『勢揃いしてどうしたんだ、お前ら。これからどっか行くのか?』

「この前、バーシルちゃんとお散歩したときに見つけた植物を採りに行くんだよ。ほら、あのすっごい苦かった葉っぱ覚えてる? 蓼藍っていうんだって」

『ああ、あれか。たしかに、めちゃくちゃまずかったな。ひょっとして、美味い飯の作り方がわかったのか?』


 バーシルさんは嬉しそうにハッハッとしている。

 ラフさんが呆れたように話した。


「違うぞ、バーシル。葉を染め出すと美しい青色が採れるんだ。俺は青い布がほしいんだが、なかなか見つからなくてな」

「みんなで染めてみようという話になったんです。“ジャッパン”の技術に藍染めというのがありまして……」

『なにぃ、“ジャッパン”だとぉ!?』


 修羅の国の名前を出したら、バーシルさんが勢い良く食いついてきた。


『“ジャッパン”のウワサなら俺様も聞いたことがあるぞ。ますます面白そうじゃないか。せっかくだから一緒に行ってやる』

「別にいいよ。お前が来たらうるさくなるし」

『こら! うるさくなるってなんだ!』


 ラフさんが適当にあしらうと、バーシルさんがプンスカしだしてしまった。

 すかさずネイルスちゃんが間に入る。


「まぁまぁ、バーシルちゃんも一緒に行こうよ。その方が確実だし。でしょ、ウェーザお姉ちゃん」

「え? う、うん、そう私も思うわ」


 いきなり私にふられたので、たどたどしく返事をしてしまった。


「まぁ……ウェーザたちがそう言うのならしょうがないか。バーシル、お前も一緒に来ていいが、はしゃいで植物を台無しにするなよ」

『いくら俺様でもそんなことはしないさ』


 ということで、バーシルさんも一緒に行くことになった。


『ああ、そうだ。“ジャッパン”と言えば、尻尾が九本も生えている化け物がいるらしいな。だが、俺様にとっては敵じゃない。なぜなら、俺様はどんな生き物より強いシルバーワーグで……』


 楽しそうにペチャクチャ喋るバーシルさんは、いつものように微笑ましかった。



 やがて、森の奥に来た。

 森の端っこに比べて、背の高い木が多く鬱蒼としている。

 晴れていても日が陰ってしまうくらいだった。


「この辺りか、ネイルス?」

「うん、ここら辺だったと思うよ。いや、もうちょっと先かな」

『ああ、もう少し向こうだった気がするぞ。大きな木の下に生えていたはずだ』


 二人に付いて行くと、さらに巨大な木が出てきた。

 その下には眩しいくらいに濃いピンクの花が咲いている。


『「あった! あれだ!」』

「お、おい、そんなに走ると危ないぞ」

「ちょ、ちょっと待って」


 真っ先にネイルスちゃんとバーシルさんが駆けだした。

 私たちも慌てて後に続く。

 そこには探していた植物がいっぱい生えていた。

 鮮やかな緑の葉っぱに、はっきりとしたピンクのお花。

 本で見たのとそっくりだ。


「ほら、これだよ、お兄ちゃん! 見て見て!」

『どうだ、俺様を連れてきて良かっただろう!』

「よくやったぞ、二人とも」

「ありがとう、ネイルスちゃん、バーシルさん」


 私たちがお礼を言うと、二人はにんまりしていた。

 さっそく、ラフさんは植物を観察する。


「これが蓼藍か。たしか、本に見分け方が書いてあったな」

「えーっと……指で葉っぱをすり潰すと指先が青くなるって書いてありますね」

「よし、確かめてみよう」


 ラフさんと一緒に葉っぱをすりつぶす。

 少し擦っただけで指先が青くなった。

 この植物が蓼藍で間違いない。

 

「うわぁ、ほんとに青くなるんだねぇ」

『こんな植物があるんだな。俺様も初めて見たぞ』

「よかった……やっぱり蓼藍でしたね、ラフさん」


 森の中を歓声が包んだ。

 ラフさんも嬉しそうな様子だ。


「ああ、良く染まる気がするぞ。これもみんなのおかげだな」


 まずはお試しということで、少しだけ刈り取ってきた。

 良さそうであれば、またみんなで採りに来る。

 もちろん、森に影響しないくらいの量だ。

 藍染めの場所として、ギルドの前のスぺースを貸してもらった。


「上手く染まるといいですね」

「そうだな。では、さっそく藍染めを始めるか」


 私たちはドキドキしながら藍染めの準備を始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mノベルスf様より、第1巻2022年11月10日発売します。どうぞよろしくお願いいたします。画像をクリックすると書籍紹介ページに移動いたします。 i000000 i000000 i000000
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ