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【書籍化】追放された公爵令嬢ですが、天気予報スキルのおかげでイケメンに拾われました  作者: 青空あかな


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第23話:父上と母上、そして第二王子(Side:プライド④)

「さて、プライド。どういうことか説明してもらおう」

「わかりやすくお願いしますわね」


 俺は王の間で床に跪いている。

 隣にはアローガもいるが滝のような汗をかいていた。

 玉座には父上と母上が座っている。

 スタミーニの件はもとより、お触れのことまで説明を求められていた。


「は、はい。何と言いますか、アローガ……さんの天気予報が外れてしまいまして。それでスタミーニ殿の鷹がケガを……」

「そんなことはわかっておる!!」


 父上に思いっきり怒鳴られた。

 俺たちは心臓が縮みあがる。

 アローガはもはや気絶しそうだった。


「プライド、そのお方はどちらで? ウェーザさんはどうされたのかしらね? 姿が見えませんが」


 母上は声を荒らげたりしない。

 それどころか満面の笑みだ。

 だが、母上の方がはるかに恐ろしかった。

 必死に怒りを抑え込んでいるといった感じだ。

 それでも、怒りのオーラがじわじわと身体からにじみ出ている。


「こ、こ、こちらは、アローガ・ポトリー公爵令嬢です。ほら、アローガご挨拶しなさい」

「ア、アローガ・ポトリーでございます」

「ですから、プライド。ウェーザさんはどうされたの? さっきも聞いたはずですよ? とぼけないでちょうだいな」


 ウフフと母上は目を閉じながら笑っている。

 はたから見ると精霊のように美しいお顔だろう。

 しかし、俺は心臓が止まりそうだった。

 というか、むしろ止まってほしかった。


「え、え~っとですね。メイド生ま……ウェーザさんはちょっと色々ありまして。婚約を破棄してほしいと言われたのです。悲しみに暮れているところをこちらのアローガ嬢が慰めてくれまして。アローガ嬢と再度婚約を結んだのでございます」


 アローガは首が取れそうなほど激しくうなずいている。

 こうなったらどうにかしてごまかすしかない。


「では、ウェーザ嬢に確認をとろう。ウェーザ嬢を連れてきなさい」

「アローガさん。ウェーザさんはあなたのお姉さまよね? 今はお家にいるのかしら?」

「「あ、いや……」」


 返答に困っているとアローガが俺のことを小突いてきた。

 何か適当なことを言えということらしい。


「ちょっと外国へ旅行に……」

「嘘を吐くな! 貴様らが結託してウェーザ嬢を追い出したことは知っておる!」


 その直後、父上の怒鳴り声が響き渡った。

 骨の髄まで怒られているようで、身体の芯から震えが止まらない。

 かろうじてアローガを見ると、彼女も顔面蒼白になっていた。

 母上が静かに話を続ける。


「おまけに王宮天気予報士まで解任させてしまうなんて。いい加減にしてほしいですよ、プライド。どうしてこの子はこんなにダメなのでしょう?」


 母上の言葉を聞いてハッとした。

 そうだ、アローガだって天気がわかる。


(ここで挽回すればまだ何とかなるはずだ)


「父上、母上! アローガ嬢も天気を予報するスキルがあるのですよ! だから、新しく王宮天気予報士に任命したのです! そうだよね、アローガ

!?」

「は、はい! 私のスキルは【天気予想】と言いまして……」

「それで、精度はどれくらいなのだ?」


 精度と聞いてドキッとした。

 アローガも同じだろう。


「ま、まぁ、彼女の予報は外れるときもありますが、あたらずとも遠からずと言いますか、半分は合っているような……」

「天気もすぐ変わることがございまして。想定外と申し上げますか……」

「愚か者!!! 外れたら意味がないだろうが!!!」


 王の間が壊れる、と思うほどの大声で怒鳴られた。

 俺たちはさらに震え上がる。


「あのお触れはいったい何なのでしょうね? なんと書いてあったか……そうだわ。アローガさんの予報に文句を言ったら即監獄行きと書いてあったの。面白いでしょう?」


 母上は相変わらずウフフと笑っている。

 開いた目の奥が怒りに満ちあふれていた。


「あ、あれはですね。アローガ嬢も頑張っているのですが、国民たちはそれを理解できないらしく……」

「私も手紙が来ることにとても疲れてしまいまして……」

「寝ぼけたことを言うな!!!」


 またしても父上の雷が落ちた。

 俺たちは震え上がることしかできない。


「そんなことでお触れを出すヤツがどこにいる! 国民の怒りも相当なものだぞ! お前は国民をどうでもいいと思っているのか!?」

「あなたのおかげで国民からの信頼もガタ落ちだわ。ああそうでした。ネイバリング王国との関係も急いで直さないといけないですわね。問題が山積み……嬉しいわぁ」


 どうすればこの場を切り抜けられるか必死になって考える。

 だが、何も思いつかない。


「貴様にスタミーニ大臣の歓待を頼んだのは…………試練の意味もあったのだぞ」


 がっかりした様子の父上が独り言のように言った。

 どんなに怖い怒鳴り声よりも、その疲れ切った表情の方がよほど堪えた。


「し、試練……でございますか?」

「プライドに次期国王としての資質があるか判断するため、大事な友好国の外交を任せたのだ。我輩は国王の座を譲る者を貴様にするかディセントにするか、ずっと悩んでいたからな。スタミーニ大臣も旧知の仲ということで特別に協力してくれた」


(あの訪問にはそんなに重要な意味があったのかよ。ま、まずい、何とかして言い訳を……)


「さすがの僕も兄さんがこんなに愚かだとは思わなかったよ」


 突然、後ろの方から声が聞こえた。

 いつの間にか、見慣れた男が入口の近くに立っている。

 軍服っぽいチュニックに身を包み、腰には細い剣をぶら下げていた。


「ディ、ディセント!」


 第二王子のディセント・ルークスリッチ。

 俺と同じ金髪碧眼で、中性的な顔つきをしている。

 こいつは何を考えているのかよくわからないヤツだ。

 実の弟なのに俺を冷めた目で見ていた。


「僕は兄さんみたいな男が国王になってしまうのを本当に心配していたんだよ。こんなに愚かな人が王様になったら、それこそ国の終わりだからね」

「な、なんだと! いい気になるな、ディセント!」


 弟のくせに俺をコケにしてきやがった。

 説教が終わったらそのムカつく態度を叩き直してやる。


「だって、そうじゃないか。天気を100%当てられる人なんてこの世に二人といないのに。追い出してしまうんだから」

「ぐっ……」


 こいつは子どもの頃から、やけに目が据わっている。

 その不気味なくらい落ち着いた瞳で言われると、思わず怖気づいてしまった。


「ディセント様。お言葉ですが私にも天気が予報できますわよ。そりゃあ、お姉さまより精度は低いですが、だからといって……」

「アローガ嬢には聞いていないよ。少し黙っていて」

「うっ……」


 ディセントはさらりと、しかし有無を言わさぬ圧力で言った。

 母上に似て静かだが恐ろしい雰囲気を持っている。

 アローガも呻いただけで黙り込んでしまった。


「天気の情報がどれくらい大事かなんて考えなくてもわかるだろうに。兄さんは国民のこと、ましてや国のことなんて本当はどうでもいいんだろう?」

「そ、そんなわけないだろ! でたらめ言うな!」


 ディセントは容赦なく核心を突いてくる。

 すかさず否定するが、動揺は隠せなかった。


「兄さんは昔から政治とか外交に全然興味を示さなかったからね。仮にも第一王子として恥ずかしくないのかい?」

「このっ、言わせておけば……!」


 いったい、こいつはどこまで俺をけなせば気が済むのだ。


「ウェーザさんを追放したのが明らかな証拠じゃないか。彼女は本当に良く頑張ってくれていたよね。いつも一週間先まで予報してくれていたし、頼めば数か月先まで予報してくれた。それどころか、一度も外したことさえない。アローガ嬢は明日の予報しかできないんでしょう? それこそ天と地ほどの差じゃないか」

「っ……」


 ディセントは忌々しいほどにスラスラと説明してくる。

 改めて言われると反論の余地もなかった。


「しかもそれだけじゃないよね、兄さんたちの悪行は」


 呆れた様子のディセントと入れ替わるように父上たちが話し出す。


「我輩たちの見えないところでイジメを扇動していたようだな。貴族どもに問いただすとペラペラ話しおったぞ」

「あなたがこんなことをするとは私も思いませんでしたわ。どこで教育を間違えてしまったのでしょうね」


(クソッ! あいつらは都合が悪くなるとすぐに裏切りやがる! ウェーザを追放するときは、我先にと俺たちのところに来やがったのに!)


 貴族たちの調子の良さに心底ウンザリした。

 説教が終わったらきつく言っておいた方が良さそうだ。


「さて、プライド。お前の王位継承権のことだがな」


 父上は母上と顔を見合わせている。

 もちろん、次期国王は俺だ。

 王子が二人いる場合、第二王子が選ばれることはない。

 これは古から決まっていることだ。


(なんだ、父上も結局俺がかわいいってことか)


 ようやく説教が終わり一安心する。

 だが、父上は信じられないことを言ってきた。


「貴様の王位継承権は剥奪だ! 次期国王はディセントとする!」

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Mノベルスf様より、第1巻2022年11月10日発売します。どうぞよろしくお願いいたします。画像をクリックすると書籍紹介ページに移動いたします。 i000000 i000000 i000000
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