町に着いたぞー。
町に着いたのは丁度日が暮れた頃だった。城塞都市と言うのだろうか? 四角く城壁で囲まれた空間で古代中国で言うならば邑と呼ばれ、城壁に囲まれた都市で時代によって国や城を意味する……だったかな? まぁそんな感じの町だ。
城門は開いており、門番らしき人が立っている。
「取り合えず、宿屋に泊まろうか?」
「……いや、宿屋はギルドで登録を行いつつ、受付に信頼できる店を教えてもらうのが鉄則だ。」
この子はゲーム脳なの?
いや、実際ゲームみたいな世界に居ると旅上手ってことになるのか?
「すまないが、ギルドは何処にある?」
新平爺さんは物おじせずに門番さんに尋ねる。
「何だ爺さん。この町は初めてか? ようこそ呪われた町『カイトデール』へ。ギルドはこの道を真っすぐ行けば着くよ。」
「真っすぐだな、礼を言う。」
え?
呪われた町?
新平君、そこは深堀りしないの?
門番さんも呪いエピソードトーク待ちしてたと思うよ?
スタスタと先を進む新平爺さんに付いて行く。
取り合えず、息子のオタク知識が通じているか判断出来るまで黙って付いて行こう。
10分程で『冒険者ギルド カイトデール支部』という看板のある建物に着いた。
扉を開けると、中央から二分して左に役所のような受付があり、右側は酒場の様だった。酒場は無人で、建物内は静まり返っていた。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
若い女性が愛想良く接客してくれる。
「冒険者登録をしたい。」
新平爺さんが急に登録とか言い出した。
「ちょっと新平君? 登録とかはちゃんと説明を聞いておかないと。」
「それでは、冒険者ギルドについて説明させて頂きます。冒険者ギルドの役割は主に3つです。」
小声で言ったつもりが聞こえてたのかな?
受付のお嬢さんによると
1. パーティ加入メンバーの斡旋・仲介。
2. 貴族・議員の依頼による、護衛やモンスター討伐任務の伝達。
3. 町民からの依頼の掲示及び、パーティによる受注と報酬の仲介。
が主な業務だそうだ。
貴族様からの依頼は命令なのね。
「等級はどういう基準でアップする?」
オタクが謎の質問をする。
「……等級とは?」
だよね?
このお爺さん何言ってるの? って思うよね?
「ゲームマスター。」
新平が、奴を呼んだので急いで振り向く。
やっぱり居た。
「ギルドに等級がないとはどういうことだ?」
「等級とは何のために必要な制度なのでしょうか?」
「冒険者の格付けに使う。依頼の難易度に応じた等級の冒険者が依頼を受けられるようにすることで、依頼の成功率を担保しつつ新米を無駄死にさせないための制度だ。また、最上級の等級を与えられた者は公爵と同程度の権利や地位を得られる設定も珍しくない。」
何だか分からんが、前半はとても良い制度だね。無茶振り仕事で死んじゃったら元も子もないしね。
「……承認しました。前者の理由は変更に値しませんが、後者の必要性は認められるため冒険者ギルドに等級制度を導入します。」
見解の相違!? って消えた。
「あの~。」
後ろを振り向くと受付さんが不思議な顔でこちらを見ている。
そうだよね。変な欧米人が急に出て来て消えたもんね。
「等級制度についての説明を致します。」
あら?
「等級は、AからEランクまであり、一定数の依頼を達成したり、特に大きな功績を挙げたりすることでギルドが昇級を認定します。お二人は初回登録ですので、Eランクからのスタートとなります。こちらがギルドカードです。カードを通してギルド本部が常に状況を把握しており、本部の認定が下りるとカードの表記が変わります。また、格別の功績を残した場合はS級という特別等級に任命されることもあり、各国で公爵と同等の待遇や権利を認められます。説明は以上です。登録される場合はこちらの宝玉に手をかざして下さい。」
……こうして新平爺さんは躊躇なく宝玉に手をかざしましたとさ。
「あと、安くて評判の良い宿を教えて貰えると助かる。」
「それでしたら……」
もう話が頭に入って来ない。新人が無駄死にを防ぐ措置が不要で、最上級者の貴族待遇が必要?
自分の実力に見合った依頼かどうかを見える化してないって、救済を不当に困難にする要素じゃない?
それに管理者が設定を変えると、世の中が一瞬で変わっちゃう訳ね。
ギルドに来る途中で買い物してる人がカード支払いしてたし間違いないな。
そんな事を考えている内に、息子に勝手に手を宝玉に乗せられており、俺のカードも出来上がっていた。
「よし、では宿に行こうかウラノス。」
ウラノス?
人前だとそんな名前で呼び合うの?
お父さんには世界の救済よりハードルが高いよ新平君。