ハリウッド版貞〇
……体を揺さぶられている。
目を覚ますと、息子が俺を起こそうと体を揺さぶっていた。
親父起きろ!
とか声を掛けないで無言で揺する辺りが思春期感あるよね。
なんて思いながら周囲を見ると真っ白も真っ白。前後どころか上下不覚に成るほど白い空間に居た。
「親父、多分これは……あれが来るぞ。」
ん?
何?
あ、貞〇!?
それはシャレにならない!
「逃げるぞ!」と息子の手を引くと、部活には入らないが筋トレは毎日欠かさない謎の生物である息子(16)は俺の体を軽々と引っ張り返す。
「いや女神から逃げないでしょ。斬新過ぎ。」
「いやいや、君らの世代の貞〇って女神に成ってるの?」
「誰だよ貞〇って。」
ジェネレーションギャーップ!
貞〇知らないって事はあれよ?
〇子知らないって事よ?
そうか、ビデオテープ世代じゃないと知らないのか。
「無理に引っ張ってしまいごめんなさい。」
急に後ろから声がして、心臓が止まりかける程驚きながら振り返る。
そこには……欧米人がいた。
ハリウッド版貞〇か!?
「私はゲームマスター。シルフォニアという世界の管理者です。」
「ゲームマスター……だと。そっちのパターンか。」
息子よ、何が何パターンあるのよ?
「はい。お二人にはこれからシルフォニアに転生して頂きます。」
「チートとか恩恵とかはないの?」
やたらスムーズだけど、何の会話が進行してるの?
「私はただのゲームマスターですから何も与えられません。ただ、管理者として苦情や改善点のご提案は常時受け付けております。」
何? 改善点? 人を誘拐しておいて改善点?
もう分かった。
これVRの次世代版とかだろ?
ゲームマスターとやらは俺が知らないだけで若者に人気の芸能人だろ?
凄く可愛らしいお嬢さんだし、おしゃれな白いワンピース着てるしね。
もうついて行けないよ。
君達こそ新人類だよ。
「それではシルフォニアへ転送します。」