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鉄と蒸気と生きる意味(仮)  作者: Jelly Fish Satellite
6/12

あれ?自分、またなんかやっちゃいました?

今回から設定を後書きに書いていくので良かったら見たって下さい。

気が向いたらで良いんです、ほんと。

 アルデンの街ー冒険者ギルド内食堂


 ダレルと再会したキタミ達は近くの席に座り情報交換をする事にした。

 マリーは商会に戻るそうで手を振って別れる。

 …なんかやたらニヴルファルの事を見ているがそんなに怖かったのだろうか?


「それで、なんでダレルはこんな所でバーテンなんかしてたんだ?」


 まず聞きたいのはこれだ。

 キタミは森の中で突っ立っていたし、ニヴルファルに至ってはピラミッドの中の石棺に封印されていたのだ。

 何故ダレルはこんな所にいるのだろうか。


「そうですね…では順を追って、私がこの世界で目覚めてからお話しさせていただきます」


 そう言って話してくれた内容はこうだ。

 ダレルが目覚めたのはキタミと同じく森の中で、場所はこの街から南にある『亜竜山脈』と呼ばれる山脈地帯の麓。どうもキタミ達が居た森もこの『亜竜山脈』の麓であるらしい。

 目覚めてからは森に自生していた植物を食糧に周辺を探索してキタミを探していたそうだ。

 その最中にオークに襲われている馬車を助けたのだが、なんとこの馬車、この街の領主の娘が乗っていたらしい。

 そしてそのままこの街に同行し、領主から人探しならここが良いとギルドを紹介されたそうで冒険者として登録してギルドの依頼と食堂でのウェイターの仕事をしながらキタミの情報が見付かるのを待っていたそうだ。


 なんか凄い主人公してんなこの爺。


 そして1ヶ月が経ち、今日こうして再会できたと言う事だ。

 つまりはこの世界に来たのはほぼ同時期らしい。


「なるほどねぇ、他の従者については何か知ってる?」


「いえ、これと言った情報は届いておりません」


 残念ながら小さな情報すら上がっていないらしい。

 それからこの世界についてだが、これは分からない。

 分かっている事と言えば吉崎の居た世界では無いし、【SSS】の世界でも無いと言う事。

 それから世界には魔力が満ちている事とこの世界の人々も【SSS】と同じ様にステータスを持っている事だけだった。


「じゃあステータスを鑑定する道具とかあるの?」


「はい、一度拝見させていただきましたが…建物1つを丸々使う巨大な物でとても実用に足る性能では御座いませんでした」


 なるほど、技術力的にはそんなに高く無いのかな?

【SSS】では衛兵は蒸気機関ライフルを装備していたがこちらは槍と弓だったし、それも簡素な造りだった。

 この街はサスペント王国でもそこそこ大きな街らしいし装備が世代遅れって事はないだろう。


「さてご主人様、積もる話も御座いますが先ずは冒険者登録をされては如何でしょうか?」


 そう言われて当初の目的を思い出す。


 キタミは席から立ち上がりギルド内を見ながらそれっぽいカウンターに向かって行く。

 食堂部分は入って右手にあり、受付らしきカウンターは入って正面にあり女性が4人横並びになっている。

 何というか役所の受付みたいだ。

 左手には机と椅子が置かれ、そこで冒険者の男女が打ち合わせをしている。

 さらにその奥の壁には大きな掲示板が貼られ、長方形の札が沢山掛けられている。


「冒険者ギルド・アルデン支部へようこそ、本日のご用件をお伺いします」


 受付には長い髪を三つ編みにして後頭部で団子にした髪型の受付嬢が待機していた。

 キツそうな鋭い眼をしているが、どこと無く優しい雰囲気を感じる。

 これが受付嬢か…と変に感動して見つめてしまう。

 ゲーマーは誰しも冒険者ギルドと受付嬢に憧れるのだ。


 ずっと黙って見つめてる訳にもいかないので取り敢えず声を出す。


「あ、あー、えーと、2人、冒険者登録をしたいんですが…ここで?」


「かしこまりました、書類を用意いたしますので暫くお待ち下さい」


 そう言って受付嬢はカウンターの奥の扉から裏へ入って行く。

 ややして4枚の書類を持って戻ってくると用紙を見せながら説明をしてくれる。


「これから、登録の前に冒険者について説明させていただきます」


 ──────────────────────────


 〜冒険者ギルドの概要〜


 冒険者ギルドとは大陸全土で活動する民間相互戦闘組織である。

 いかなる国家へも帰属せず、大陸中央部にあるギルド管理の街、アドランダーズを本拠とし支部を各地に設置している。

 冒険者ギルドは人間及び国家同士への戦闘、紛争、戦争には一切の関与はせず、対モンスターの討伐や捕獲。素材収集、未知の調査などを独立して依頼に準じて行う。

 例外としてギルド支部の所属する街や国などがモンスターによる危機に見舞われた場合、支部長の判断で現地軍との連携が認められている。



 冒険者ギルド3則

 以下に定める規則に違反した者は、やむを得ない事情を認められた場合を除き、除名又は降格となる。


 1.他の一般人及び冒険者を故意に殺傷しない。

 1.冒険者ギルドを介さずに直接依頼の取引をしない。

 1.冒険者ギルド発行の強制依頼は拒否できない。



 〜冒険者の階級制度について〜


 冒険者はギルドから一定以上の功績を認められる、又はギルド指定の条件を満たし試験に合格する事で階級を上げる事が出来る。

 冒険者階級を上げる事でより上位の依頼の受注が可能になり、ギルドからの援助も大きくなる。


 木札級:仮登録者。登録時試験の後、本登録される。


 銅級:本登録が終わって一番最初の階級。


 鉄級:この級から一人前と言われる。討伐等冒険者としての基本技能を持っていると認められる者


 黒鉄級:殆どの若い冒険者がこの階級。一定以上の依頼達成によってギルドにその手腕を示す事で認定される。


 鋼鉄級:最も人数の多い階級で、経験を積んだ黒鉄級が試験に合格する事で認定される。


 銀級:熟練かつ信頼度の高い冒険者達の階級。ここから認定試験の条件にギルドからの推薦が必要になる。


 金級:高い戦闘力と豊富な知識が認められた一部の冒険者達の階級。各国家において下位の貴族と同等に扱われる。


 金剛(アダマンタイト)級:ごく少数の英雄的な力を持つ冒険者達の階級。国家において上位の貴族と同等に扱われる。


 魔銀(ミスリル)級:もはや人外の力を持つと言われる者たち。世界全体で見て現在10人だけが認定されている。



 〜魔物の脅威度階級制度について〜


 5級:一般人でも討伐が可能、群れた場合は危険。


 4級:一般人の討伐は困難であるが、ある程度の戦闘経験のある者ならば討伐が可能。


 3級:通常黒鉄級の冒険者が3人以上のパーティーで討伐を行う。


 2級:熟達した戦闘技術が無ければ討伐が難しい。鋼鉄級以上のパーティーでの討伐が推奨される。


 1級:一体で小さな街や村を壊滅させる危険がある。銀級以上のパーティーでの討伐が推奨される。


 災害級:国家又は街に対し甚大な被害をもたらす危険がある。個人や少人数での討伐は困難であり、軍隊規模での討伐が推奨される。


 厄災級:国家の存亡を左右する危険があり国家正規軍以上での対応が必要。竜種などごく一部のモンスターのみが該当する。


 ──────────────────────────


 うーん、中々沢山内容がある…。

 と頭を捻っていたが、どうやらこの説明用紙とは別に冒険者の心得と言う小冊子を貰えるらしい。

 冒険者とモンスターのランク分け然り、若手の無駄な損耗を抑える為の制度なんだそうだ。


「以上で登録時の説明は終了ですが、何かご不明な点はございましたか?」


「あの、この3則って…ギルドの規則ってこれだけなんですか?」


 思ったより少ないんだよな。

 それこそ10とかそこらはあっても良さそうなもんだけど、そんなに縛る気は無いのかな?


「3則は必ず守っていただく最低限の事です、当然人道に悖る行為を確認するなどした場合はギルドから罰則が課せられる事があります。人として当然の配慮をお持ちください」


 なるほど、アレコレ書くより最低でもこれだけ守れって事なのか。


「あ、はい…すいません…」


 キツめの見た目の人にしっかりした口調で喋られるとなんだか叱られてる気分になってくる。

 思わず謝罪すると、受付嬢の眼が揺れた気がした。

 何か不味い言い方をしてしまっただろうか?

 慌てて繋がる様に言葉を出す。


「あとこの…登録時試験って何をするんですか?」


 もしペーパーなら字が書けない気がする。

 一応今までの所文字の読解も会話も出来てるため心配しすぎかも知れないが、全く見た事のない文字なのだ。

 この文化レベルでならそこまで識字率が高いとは思えないからペーパーテストは無いとは思うがどうだろう。


「はい、そちらは試験とはなっていますが、登録者の戦闘能力を確認する為の物ですので、ある程度の訓練を積んでいらっしゃれば落ちる事はありませんからご安心下さい」


 受付嬢はそう言いながら3枚目の書類をカウンターの上に置く。

 見た感じこれが登録用紙だろうか、名前などを記入するスペースがある。


「こちらの用紙に記入が完了しましたらそちら、横の階段から練習場へ向かっていただきます、そこで模擬戦を行いますのでそれが登録時試験となっています。」


「ありがとうございました、それじゃあ登録お願いします」


 文字は、書けた。

 読めるし大丈夫だと思っては居たが、なんの苦もなくスラスラとペンを走らせる事が出来た事には驚いた。

 なんで言葉が分かるのか、それも最初から知っているかの様に読み書き出来るとは…翻訳スキルとか持って無いんだけどなぁ…。

 ただ、ニヴルファルは読めるが書けないらしいので代わりにキタミがニヴルファルの分も登録用紙に記入した。


「ありがとうございます、それではこちらが仮登録証の木札です」


 と言ってクレジットカードサイズの木札を渡してくれる。

 表面には『仮証01』と書いてある。ニヴルファルの方は02だ。


「本登録後にそちらの木札と交換で正規のギルドカードをお渡ししますので、決して破損させたり紛失しないようにお気を付け下さい」


 そう言うとカウンターから立ち上がり、練習場へ案内してくれる。


「それではこちらの階段を降りた先で訓練官が待っておりますので、以降は訓練官の指示に…


「失礼する!!!火急の用だ!急ぎ支部長殿へお通し願いたい!!」


 受付嬢が階段への扉を開き案内してくれている時、バンッと大きな音を立ててギルドの中に鎧を着込んだ男、恐らく兵士が駆け込んできた。


「領主グラム様より支部長殿へ緊急の伝令である!」


 とその後ろからもう1人兵士が続き、何か紙を見せながら用件を伝える。


「ただいまご用意致しますので、こちらへどうぞ」


 そう言って紙を確認した別の受付嬢が兵士達をカウンターの中へ案内して連れて行く。


「ダレル、あれは?」


「この街の領主、グラム・ファル・マザール辺境伯様の私兵でございます」


 私兵、つまり領地内の正規兵って事かな。

 衛兵とは鎧が違うのは部署違いのせいか、任務の違いなのか。


「とりあえず、行こうか」


「お怪我のありませんよう、お気を付けて」


 受付嬢に見送られざわつくギルド内を後にし、練習場へ向かい試験を受ける。

 試験内容は至って簡単で、剣、槍、棍の近接武器と弓、杖の遠距離武器いずれかの得意な武器で停止標的、つまりはカカシを攻撃して動きを評価される、それから訓練官との模擬戦を行うと言う順番だった。


「あー、よろしくお願いします…」


「ふむ…いざ尋常に!」


 そして無事に模擬戦もお互いに怪我無く終えた。

 別に態々進んで目立つつもりも無いし、受付嬢は落ちる事は無いと言っていたのでかなり手抜きだったが、何故だか訓練官の目つきが怖い。

 手を抜いたのがバレたのかな…そりゃ怒るな、でも模擬戦だし落ちないって言ってたし…まぁいいや、今後は手は抜かないでおこう。


「ふむ…戦闘技能は十分だな…あとの処理はこちらで行うからギルドカードが発行される3日後に受け取りに来なさい」


 そう言って訓練官はスタスタと戻って行ってしまった。

 絶対怒らせた、本当に申し訳ない事をしてしまったようだ。

 訓練官には3日後に来いと言われたので一先ずギルドを出て宿を探す事にしよう。

 幸い金はグラムが稼いで置いてくれたので暫くは大丈夫そうだ。


「あ、ニヴルファルの試験…」


 訓練官は帰ってしまったしまあ良いか。

 取り敢えずやる事は終わったので練習場から出る。


 ◇◇◇


 階段を登って行くと丁度カウンターから筋骨隆々な男が出て来る所だった。


「……フン…」


 なんかこっち見て鼻で笑った気がする…。

 釈然としない気持ちで男を見ていると、男はギルド内に向けて大声で喋り始めた。


「聞けぃ!!アルデン支部長!ダン・マーだ!」


 おぉ、支部長だったのか。

 じゃあ、これから話すのはさっきの領兵の伝令についてか。

 ただならぬ雰囲気にキタミはダンの方に向き直り、話を聞く態勢になる。


「おい!マルー!ゼラ!ガイ!お前達は急ぎ『朝焼けの畑』の連中をギルドに連れて来い!今は家に居るはずだ!」


 声を掛けられた3人は何も言わず直ぐにギルドを飛び出して行った。

 凄い、支部長は人望があるタイプらしいな。


「さて、お前達!たった今、領主様からの依頼が入った!」


 そう言って紙を掲げる。


「これが依頼書だ!内容は街に接近するゴブリン約100人からの街の防衛への協力だ!これを受けてアルデン支部は強制依頼を発行する!」


 と、そこで食堂に居た中年の冒険者が声を上げる。


「おいおい!ここらのゴブリンは友好的なはずだろう?防衛戦って一体どう言う事だよ?」


「そうだぜ!俺はこないだ取引したばっかりだぜ?!」


 支部長は声を上げる冒険者の方を一度見ると手を向けて軽く宥めてまたギルド内全体に視線を戻す。


「まぁ落ち着け!今聞いたように、この街周辺のゴブリンは人間に対して友好的だ!だが今街に接近している集団は武装している上に目的が不明だ!よって、ゴブリンの敵対か友好かを判断の後、友好的ならば街の中へ誘導した後、領兵が事情を確認する!敵対的であれば門を最終防衛線として迎え討ち撃滅する!」


 その後、作戦の内容と各冒険者への役割分担が行われた。

 領兵と衛兵に冒険者が協力する形で作戦を行い、冒険者は階級で役割を分ける。


 銅級以下は衛兵と共に市民の避難誘導と後方支援。

 鉄級は前線での後方支援。

 鋼鉄級以上は領兵の指揮下に入り戦闘を行う。

 ゴブリンへの誰何(すいか)は領兵が行うため、冒険者達は戦闘になった場合の保険である。


「友好的な場合は角笛を長く1回、敵対的な場合は短く2回鳴らす」


 最後に合図を伝達し、ダンは行動開始を指示して執務室へ戻って行った。

 キタミとニヴルファルは木札級であるため避難誘導に当てられ、ダレルは鋼鉄級であるため戦闘班に割り振られたためギルドで一旦別れる。


 ゴブリンは南側から接近しているため南門を防衛線とするらしく、ギルドのある中央広場から南門へ向けて伸びる市場周辺住民の避難が指示された。

 キタミとニヴルファルは市場通りの端、丁度カワセ商会の建物周辺の避難誘導に当たる。


「全く、ギルドの奴らは何を考えているんでしょうか!何故キタミ様を前線ではなくこの様な雑事に使うのか!」


 なんかニヴルファルがまた愚痴を言っている。

 まあ確かに主人が舐められると言う事は自分が舐められる事と同義だもんな、それで怒ってるのかもしれない。


「ファル!そっちの誘導は…終わってるな…」


 愚痴を言いながらやる事はやる辺りやはり優秀だ。

 むしろキタミの方の誘導がまだ終わっていない、手伝ってもらおうとニヴルファルに近寄る。


「ああっ!キタミ様!」


 と、商会からカワセが慌てた様子で飛び出てくる。


「キタミ様!マリーが!市場に買い物へ行ってまだ戻っていないのです!マリーが!!」


「あ、カワセさん…」


(顔見知り見捨てるのは寝覚が悪いよなぁ…でも俺たちここの避難誘導頼まれてるしなぁ…)

 この流れはきっとマリーを探してくれとか頼まれるのだろう。


 だが、まだこの地域の避難誘導は完了していない。

 流石にこの緊急時に個人的な関係を優先して良いものか、キタミには判断が付かなかった。


「キタミ様!どうか!マリーを探して下さい!どうかお願いします!この通りでごさいます!どうか!」


 予想通りマリーの捜索を頼んでくる。

 しかし、どうすれば…。

 と悩んでいると横にニヴルファルが並ぶ。


「…キタミ様、私めは市場に武器を忘れて来てしまったようです」


 と言いながら視線で何か訴えかけてくる。

 なるほど、一芝居茶番をしようって事か。


「おやおや?それは困った!俺の従者なのだからしっかりしてくれないと!」


「は!申し訳ございません!」


「しかし武器が無いのは万が一の時に困るな!どれ!一緒に取りに行ってやりたいが、あぁ困った!まだ避難誘導が終わっていないぞ!」


 カワセも察したのだろう。


「ここの避難誘導はお任せください!我が商会全員で当たらせていただきます!武器のついでで良いのです、マリーをどうか!」


「それは助かる!危なくなったら逃げるように!それじゃあ時間もない、マリーちゃんの事は確約出来ないが、武器を取りに行ってくるよ!」


 我ながら棒読みも甚だしい胡散臭い三文芝居だったが、まぁ周囲にはやりたい事は伝わったろう。

 こう言うのは敢えて迂遠な方が理解を得やすいと思うんだ。


 ややしてキタミ達は市場に到着した。

 門に近いため市民は皆避難しており物資を運ぶ冒険者や領兵だけが見える。

 もしまだ居るとすれば建物の中だろうか。


「キタミ様、こちらです」


 早速ニヴルファルはマリーの匂いを嗅ぎ取ったらしい。

 案内に従って道具店の中に入って行く。

 色々と興味を惹かれる道具が置いてあるが、今は後だ。

 そんなに広い店じゃない、探して行くと奥のカウンターの裏でマリーとマリーが守る様に老婆が隠れていた。


「あ…お兄さん…」


 軽く手を上げて挨拶をする。


「あ、あー…お待たせ、カワセさんに言われて探しに来たよ」


 どうも足を挫いているマリーはまだしっかりと歩くことが出来ず逃げ遅れたらしい。

 仕方無く隠れるために入った店で足が悪く逃げられずに居た老婆を見つけそのまま店に隠れていたのだそうだ。


 と、そうして事情を聞いている途中で1回だけ角笛がなる。


(1回…友好的だったかな…)


 キタミはニヴルファルをマリーちゃんの護衛として店に残し、門の様子を見に行く。


 門前では誘導されて広場に入ってきたゴブリン達を領兵達が囲む様にして事情の確認が行われていた。


「オーガ!攻メテ来タ!!我々勝テナイ…逃ゲタ

 来タ、助ケテ…!」


 代表者らしい戦士の格好をしたゴブリンが必死の形相で領兵隊の隊長に捲し立てている。

 他のゴブリンは今も不安そうに閉じられた門の向こうをチラチラと気にしている。


「ふむ…なるほど、オーガに追われて…よし、理由は分かった、それでオーガの数と距離はどれほどだ?」


 追ってくるオーガの対応に当たる為だろう。

 領兵隊長がゴブリン戦士に尋ねる。

 と言うか後ろ姿だと鎧で見えないが領兵隊長は女性なのか。

 中々に凛々しい声だ、きっと美人に違いない。


「人間助ケル?我々助ケル?」


「ご領主様より事情があるならば保護せよと命を受けている、安心して欲しい」


 が、ゴブリン戦士は落ち着いて話すどころでは無いのだろう。自分達を助けてくれるかを懇願する様な顔で聞いている。

 …分かりづらいが、多分、懇願する様な顔の筈だ…きっと。


 隊長はゴブリンを落ち着かせる為に軽くなだめてからまた同じ質問を繰り返す。


「それで、オーガの数と距離は分かるか?」


「沢山居ル…我々ノ半分ニ近イ!我々ノ半日ウシロダ!」


 それを聴いていた周囲の人間に動揺が走る。


「オーガが数十だと?災害級じゃないか!」


「そんな…俺たちだけでなんの準備もなく勝てる相手じゃないぞ…」


「俺たちのパーティーはこの街に立ち寄っただけなんだぞ!こんな死ぬかもしれない戦いに巻き込まれるなんて聞いてねえぞ!」


 特に鋼鉄級以下の冒険者達の動揺が著しい。

 そんなに強いのだろうか…この騒動が済んだらどこかでモンスターについて調べた方が良いかもしれない。

 常識的な意味で。


「静まれ!領兵隊!衛兵と連携して街の周囲を警戒に当たれ!二番隊は私に同行して城に戻って領主様の護衛に付く!」


「…それから、冒険者達は一度ギルドへ戻りギルド支部長の指示に従ってくれ!」


 領兵隊長が一喝して動揺する皆を鎮める。

 手早く指示をすると一度言葉を切り一同を見渡す。


「時間は余りなさそうだ…各員、直ぐに行動に移ってくれ!解散!」


 隊長の指示に従い全員が動き出す。

 キタミも店に残して来たニヴルファル達に合流してギルドへ向かう


『狼王 ニヴルファル』

【SSS】の隠し従者。

狼牙族最後の生き残りで、隠し時限クエストである「悪魔族による狼牙族集落襲撃を阻止」をクリアする事で仲間になる。


個人イベントの進行により二つ名が変わる。

生き残り→最後の狼牙族→狼王


赤茶色のウェーブがかった髪質で肩まで伸びた長髪を後ろで束ねている。

実直で主人に対して非常に忠実だが、たまに忠誠心が暴走してしまう時がある。

その素早さと力強さは正に群れの王に相応しい。

主人には主人たる強さと態度を求める。

裏切りを非常に嫌う。

大剣を使い獣に似た動きで、踊り舞う様な特殊な剣術を得意とする。


ランク:3

HP :1,141

MP :120

ST :160

VIG:35

ATU:15

END:40

VIT:20

STR:27

DEX:25

INT:10

FAT:8

LUK:9


187cm

76kg

89歳(人間の24歳程)

髪:赤茶色 瞳:イエローゴールド

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