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鉄と蒸気と生きる意味(仮)  作者: Jelly Fish Satellite
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頑張ったご褒美は大抵微妙な法則

 

 吉崎は今日も上にジャージを羽織り、デニムパンツにサンダルを引っ掛けた、ボンクラスタイルであぜ道を歩いていた。


 仕事を辞め、日々少ない貯金を崩す生活。幸い幾らか発展した地方の田舎都市であったため、何とか生きていられた。


 今日も今日とて職探しでは無く、タバコを買いにプラプラと出掛けてきた所だ。


(ホクホクだねぇ、いやぁホクホクだやぁ)


 が、そんな将来真っ暗闇な人間には見えないくらいに、ウキウキとした笑顔を貼り付けていた。


 タバコ屋の婆さまに薦められたスクラッチで、5万当てたのだ、今日は何か贅沢をしようと笑顔になっていた。


(寿司…いや、ここは贅沢に宅配ピザ…いやいや、節約してちょっとした贅沢を毎日?悩ましい…な…?)


 ふと1人の女子高生に目が止まる。

 覚束ない足取りでフラフラと歩いている、少女の顔は熱でもあるのか真っ赤だし、マスクをしているし風邪だろうか。

 そもそも今は真っ昼間だ、まともな学生ならお勉強中だろう。


(風邪で早退したのかな?辛そうだなぁ…どれ)


 ふと思い出したのは、財布に大切に仕舞い込んだ5万円。

 どうせ泡銭だ、役立たずの自分が無駄に使うより、誰か人の為に使おうじゃ無いか。

 薬を買ってきてやるか、いやいやそれは親がするだろう、ここはタクシーを呼んで送ってやろうか。


 そんな風に思案しながら声を掛けるタイミングを計っていた吉崎の目に、向こうから来るトラックが映り込んだ。


 フラフラと蛇行するトラック。

 運ちゃんまで風邪か?と見てみれば居眠りか、頭を下げて全く前を見ていない。

信号が変わったが、当然見えていないのだろう、減速する様子は無い。


 吉崎は焦る。

 少女は意識が朦朧としているのだろう、トラックに気付いた素振りを見せずそのまま横断歩道に踏み込んでいる。


 無意識だった。


 無我夢中だった。


 なぜ足が前に出たのかも分からなかった。

 こんな自分でも、いざと言う時は動けるんだ。

 そんな呑気な事を考えながら、身体は勝手に少女に駆け寄って行ったが、間に合わない。

 自分の力では子供ならまだしも、高校生程の体格の人間を抱えて逃げるなど出来そうな猶予は無かった。


(ばあちゃん、秀平は今日、ヒーローになります…アディオス世界!)


 吉崎は生きる希望など端から持っていなかった。

 やりたい事も、なりたい自分も無かった。

 ただ、それでも認めて欲しいと言う気持ちだけは、人並みにはあったらしい。

 きっと、だから動けたのかもしれない。


「ヘイ少女!親孝行しろよっ!!」


 女子高生を突き飛ばして歩道に押し戻し、親指を突き立てて今生最高の笑顔で言い放つ。


(俺、今めっちゃヒーローじゃん!!)


 ドグッ!という鈍い音、少女の悲鳴。

 衝撃に目覚めた運転手が慌てたのだろう、トラックは田んぼに転がって行った。

 そこまで見届けた所でプツリと意識が途切れた。

 1人のろくでなしは最後に、人を助けて人生に幕を下ろした。


 ―――――――――――――――――――――――――――


 そして


 気が付くと広葉樹の鬱蒼と繁る森の中に、ぽつねんと佇んでいた。

 周囲に人の気配は無く、ただアホらしく立っている。

 自分の状態を認識した吉崎は、羞恥に顔を両手で覆い蹲る。


 死に際にグッドラックとかしちゃって

「親孝行しろよ!」とか言っちゃって

 カッコ付けたのに何とも居た堪れない気持ちになっていた。

人生初小説、初投稿につき見苦しい点が多々出てくるかと思いますが良ければ読んでやってください。

投稿ペースはかなりゆっくりになる予定ですので、まとめて読みたい方はあと2〜3年待っててください。

R15ついてますが、あくまで保険的な掲示なのでそんなにエログロ描写はないはずです。

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