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銀の銃弾と血潮の姫  作者: シン
接続章 かわいいかわいいぷりんせす
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かわいいかわいいぷりんせす

間章 兼 接続章です。


ショートストーリーとも言います。


「お! おはよう、プリンセス」

「プリンセスって呼ぶな」


 俺の挨拶に、ナタリーは不貞腐れた顔と不機嫌な声だけを返してきた。

 そのことに、俺は大袈裟に嘆いてみせる。


「雅少佐~。ナタリーが挨拶もしてくれない~」

「みゃーちゃん、そんな奴の相手することないぞ。つーかするな」


 俺とナタリーに絡まれた雅少佐は、苦笑いだけを返してきた。……こっちは本格的に寂しい。

 一旦意識をリセットして、やり直す。


「おはよう、雅少佐」

「はい。おはようございます、天霧中佐」


 今度はにっこり挨拶してくれる。癒される。


「やっぱり日本の女性は奥ゆかしくて優美だな、お姫様?」

「ねじ切るぞ」


 何をだろう。怖くて聞けない。

 と、そこに隊長がやって来た。見るからに不機嫌そうだ。そうでないときの方が珍しいような顔をしているが。


「ツバサ、ちょっといいか」

「はい、なんでしょう」

「ついてきてくれ」


 隊長は踵を返して部屋を出て行く。

 それを見て、ナタリーがさっきの反撃とばかりに調子に乗り出す。


「何やらかしたんだよツバサ~。呼び出しとか、アタシでもないぞ? ざまあないな!」


 急に生き生きしやがって。心当たりなんかないっていうのに。


 この間の任務で車の上を跳びながら移動したこととか、気付かれなかったと思うし。緊急事態だったから見逃してもらうつもりで言い訳も用意しているし。ナタリーも一緒だったし。……ナタリーが一緒のときは大抵俺の責任になるが。


 てくてくと隊長の後を追いかけていくと、隊長は非常階段の扉を開けたあたりで立ち止まった。顎で促される。素直に外に出た。


「これを見てくれ」


 渡されたのは、数枚の資料。顔写真もついていて、人物のデータのようだ。


「これは……」

「ああ。どうやらウチの組織はそうとう頭が悪いらしい」

「その感想はどうかと思いますが、たしかに。倫理観はないんでしょうね」


 胸糞の悪くなるような計画・実験。隊長も不機嫌になるというものだった。俺のせいでは断じてなかったことは、明言しておこう。


「どうして、俺だけに?」

「西林少佐は既に知っている。私が指示して、調べさせた。そのうえで、今はまだ黙ってもらっている」

「なるほど。さすがですね、雅少佐」


 おそらく上層部のデータベースに勝手にアクセスしている。はっきり言って組織の技術力では相手にならないレベルの天才なのだ。


「ナタリーにはクリティカルな問題だからな。タイミングを見計らっているところだ」

「そんなに繊細な性質ではないと思いますが……」


 とはいえ、オリオン隊の中では俺が一番ナタリーとの付き合いは短い。知らないことの方が多いくらいだし、実際は繊細な女の子なのかもしれない。……たとえ自分を『犬にマーキングされる電信柱』に例えるタイプの女の子だとしても。


「とにかく、そういう計画が動いているということだけでも、覚えておいてくれ」

「わかりました」


 嫌な話だが、放置はできない。

 特にウチは、ナタリーがいる以上、無視できない事柄だ。いずれ関わっていくことになるだろう。今から気が重い。



 オリオン隊にあてがわれた部屋に戻ると、ナタリーが雅少佐にひらひらの服を着せられていた。


「わあ……! やっぱり似合うと思ったんです! さすがプリンセスですね!」

「みゃーちゃん、もう脱いでいい……? アタシこういうの似合わないんだって……」

「何を言いますか! とってもかわいいです似合っています! あ、写真いいですか? 個人で鑑賞するようにするんで!」

「そろそろツバサが戻ってくるかもしれないだろ……! もう着替えるからな!」

「すまん、手遅れだ」

「ほらもう手遅れに、って手遅れ?」


 きょとん、とした後に、ナタリーはゆっくりと、それはもうゆっくりと振り返った。


 俺はビッとサムズアップすると、笑顔を作って言ってやった。


「似合ってるぞ。かわいいかわいいプリンセス!」

「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」



 ナタリーの絶叫は、他の部隊から苦情が届くくらいうるさかった。



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