表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界マネーゲーム  作者: アンドウ安藤
5/6

5話 装備効果

「キシャァァァ」


俺はスモールフォレストラットという全然スモールでない緑色をしたネズミの突進をギリギリで回避する。


「すばしっこいなッ!」


俺に向かって突撃を繰り返すラットに回避と同時にバットを振り下ろすが攻撃はなかなか当たらない。だがこちらの回避もなんとか間に合っているので、どちらも決定打に欠けていた。


戦闘が始まって数分経った。


俺はなるべく力を温存するように動いていたが、ラットはそろそろ疲れが出始めたのか突進するときの溜めが長くなっている。


このまま行けばもう少し粘れば倒せるなと思ったところで、ラットが俺から大きく距離を取り、助走を付け今までで最大の速度で向かってくる。


体力がなくなってきたことを恐れたのか、痺れを切らしたのか、ラットはこれで決めるとばかりに口を大きく開け、牙とも言える程鋭い前歯を見せつけながら俺の首を狙って飛び掛かかる。


この前歯で噛まれたらただでは済まないだろう。だが俺はこれを待っていた。


この数分の攻防でラットの軌道を読んでいた俺は半歩程体を横にずらして、ラットが通るだろう直線に沿わせてバットを振るう。


空中のラットは自分の利点であった機敏性を失っているので俺が振るったバットを回避することは出来ない。


ガキンッ。


固い物同士がぶつかる音が辺りに響く。バットとラットの歯がぶつかった音だ。


チッと俺は舌打ちをする。


確かにバットを命中させることは出来たが歯に当たったということは致命傷は与えられていない。


衝撃で手が痺れているが、それを押してバットを握り直す。幸いなことにバットにはへこみがあるものの曲がったりしていないのでまだ使える。


対するラットは唯一の武器である前歯が折れており、痛みで怯んでいるのか動きは止まっていた。


その隙を見逃す程俺は馬鹿じゃない。


一気にラットに近づいてバットを地面と水平にして横に振り抜く。一瞬遅れてラットは飛び退こうとするが僅かに俺の方が速い。バットがラットの後ろ脚の一本を捉えた。


ゴキッという音と共に、骨を折る感触がバット越しに伝わる。


ラットは唯一の武器と、俊敏性を奪われた状態だ。まだ生命力は残っているようだが、こうなってしまうと後はこっちのものだ。


さっきまでの立場、攻守が逆転した。


そこからはラットを倒すのにそれほど時間を要すことはなかった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「とりあえず20万溜まったか」


最初のゴブリンとの戦闘から1時間程経過し、さらにゴブリンを2体と、今倒したスモールフォレストラットの2万で所持金が21万となった。


「途中戦闘を挟んでるけど、美里との距離はあんまり縮まってないなぁ。なんか移動速度を上げられる物があればいいんだが」


といっても、森の中なので乗り物系はNGだ。まあ、そもそも20万で買える物は無いんだが。


買い物アプリで20万円の範囲で買える物を漁るがなかなか目ぼしい物が見つからない。


先程、食料となる木の実イモンゴ(長芋の食感とリンゴの見た目から俺が命名した)を発見したから、いざという時の食料分の金額を残す必要がなくなったので所持金を残さず使うことが出来るのがでかい。


まあ、魔物との遭遇率も真っ直ぐ進んでいるだけでこれだけあるんだから、食料分を稼ぐのはそれほど難しくないと思うが。


買い物アプリで何か良い物が無いか探し続けているが見つからず、まだ見てないのは衣類のカテゴリだけだ。


速く走れるようなそんなスーパーシューズでも無いかなと確認したところで、あることに気づく。


「これはホント現実とゲームがごっちゃになってるな」


俺が見たのは20万する皮の靴だ。スニーカーとかは10万前後の価格になっているのだが、これはその約2倍もする。


見た目的にはサラリーマンが履くような革靴って感じじゃなく、資料館とかに展示されているような、どこか民族的な見た目の靴で、初めから買うつもりもなく、誤ってその靴の商品説明を開いてしまったのだがそれが功を奏した。


=============

【名称】皮の靴


【価格】20万円


【装備効果】敏捷+2


【説明】

動物の皮から作られた靴。特別な加工も施されてなく効果も低い。

=============




今持っている、金属バットやリュックサックには装備効果なんて項目は無かった。その時は金に余裕も無かったし、時間も無かったので他の武器とかを一つ一つ見る余裕がなかったからこれに気づけなかった。


ちょっと損した気分になったが、初日の内に気づくことが出来たということで良しとしとく。


この敏捷+2というのがどれくらいの効果を発揮するのかは分からないが、他に買える範囲で良さそうなものは無いので皮の靴を購入する。


直後、何も無い空間から今購入した皮の靴が出現する。


ゲーム開始前もそうだったのだが、このアプリで物を購入すると空間から突如購入した物が現われる仕組みになっている。最初は驚いたが一度経験した後であれば驚くことも無く、届いた皮の靴を手に取る。


「うーん、説明にあった通りただの革製の靴だな」


何の皮を使っているのかは分からないが、見た目が見慣れていない以外に変わったところは無い。


これで本当に効果が発揮されるのか半信半疑だったが、とりあえず履いてみることにする。慣れていない靴なのでちょっと履くのに手こずったが、問題なく履けた。


効果に気を取られて履いてから気付いたのだが、足のサイズとかを測っていないのに、靴は丁度俺の足にピッタリと収まっている。


その場でジャンプや足踏みしてみても靴擦れもなく、爪先もきつくない。履き心地はさっきまで履いてたスニーカーよりも良さそうだ。


これだけでも良い物を買ったという気分になるが、肝心な装備効果がどれほどのものか確認しなければならない。


なるべく広い空間を探して森の中を歩き、木と木の間が直線で10m程の距離がある場所を見つけた。


「ここで、確かめてみるか」


まずは、今まで履いていたスニーカーから確かめ、次に皮の靴で確かめる。


10m程しかないのでタイムなんて図る必要も無いが、効果ははっきりと感じた。どちらの靴でも時間で言うと一瞬のことだが、皮の靴の方が体に受ける風の圧や、地面を蹴ったときの反発が明らかに増していた。


短距離走なんてここ最近は測ることなんて無かったので元々がどれくらいだったかは分からないが、一般的な成人男性ぐらいだったとしても、皮の靴を履いて走った時の速度は短距離選手ぐらいは出ていたのではないだろうか。


何でこの皮の靴にこんな能力があるか分からないが、異世界的な要素が働いているのかもしれないと一人で納得しておく。


所持金が残り1万となってしまったが、結果に満足する。今は買えないが他にも効果が付いているの道具が無いか探すと、以外と直ぐに見つかった。というよりも効果があるかどうかは大体20万ぐらいで別れるようだ。


ただのナイフでも安いものでは3万で買える物もあれば、30万で買える物もあり、30万の方には切れ味+1といった効果が付いているといった具合だ。


他にもジャケットに衝撃吸収が付いていたり、体力増強の効果がある指輪なんかもあったが、総じて効果付きの物品は高額な物ばかりだ。50万越えは当たり前のようにあり、100万越えの物も数多くの種類が存在している。


試しに1000万越えの剣を見てみると効果が盛り沢山で、+の値も俺の皮の靴の数倍以上と破格の性能だ。


後九日でこんな物を買えるようになるのか多少心配になるが、ゲームに参加した以上はやるしかないと自分を励まし、皮の靴の検証も兼ねて森の中を走って移動を開始した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ