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異世界マネーゲーム  作者: アンドウ安藤
1/6

1話

初投稿です。


良かったら読んでってください。

「いいか結人、この世で大切なものは金なんかじゃない、人と人との繋がりが大切なんだ。一人で何でも出来ると思うな、困ったら誰かを頼れ、そして困っている人がいたら助けろ。そうすれば何でも上手くいくもんだ」


俺が小さい頃から父さんによく言われていた言葉だ。


父さんは一代で年商100億以上を稼ぎ出す貿易会社を築いた人物で、家に居ることはほとんど無いが、偶に時間が出来た時は家族で夕飯を食べたり、俺が小学校の頃はゲームの相手をしてくれたりもした。家族のことを大切にしてくれている俺の自慢の父さんだ。


だから、父さんの会社で副社長を務めるこの男に今言われたことが到底信じられずにいた。


「だから、君のお父さんである社長が会社の資金を着服し逃亡したと言っているんだ」


「嘘だ!あの父さんがそんなことをする訳が無い。金よりも家族や周りの人を大切にするあの父さんが」


小さいころから俺に何度も人との繋がりを大切にするよう教えてくれていた父さんが、そんな周りを裏切るようなことをするとは到底思えない。父さんを犯人だと決めつけて言うこの男に怒りを込めて大声で反論した。


そんな俺に対して、考える素振りをしながら副社長がまた信じられないことを言う。


「君みたいな学生に言うものではないが、社内でも前々から噂になっていてね。社長が秘書の女性に入れ込んでいると。事実社長と一緒にその秘書も居なくなって連絡も取れなくなっている。社長にとっては家族やこの会社よりもその女が大切だったということだろう」


「あり得るわけ無い。あの父さんが、父さんが」


「証拠も色々見つかっていてね。社長に脅されてここ数年の経費を改竄させられたという者まで現われた。社長がやったということに間違いないだろう」


「そうだ、その女が父さんを騙して無理矢理」


「かもしれないが、社長がやったということは変わらない。実際に会社の金が無くなっているのだから。そして失った分の損失はどこかから取り戻さないといけない訳だが、こちらが言いたいことは分かるね」


この男が言わんとしていることは直ぐに理解した。


母さんが亡くなって久しく家族は俺と父さんの二人だけ。であれば父さんの代わりは俺しかいない。


父さんを信じているからこそ、俺ははっきりと答える。


「分かりました。俺が何としても金を払います」


そう答えた瞬間、副社長の口角が上がり笑みを浮かべたように見えたが、気のせいだったのか、次の瞬間には元の表情に戻っていた。


「君のお父さんが築いた会社だ、なるべく負担は少なくしよう。ではこちらで弁護士を手配するから、今後についてはその弁護士話すと良いだろう」


副社長は携帯を取り出すと誰かへと連絡を取り始めた。恐らくは今言った弁護士なのだろう。


電話を終えると副社長は外に控えていた人を呼び、俺を別室へ案内するように指示をする。


「では弁護士を呼んだから、後はその弁護士に相談してくれ。社長については事が事だからこちらで秘密裏に捜索をしている。何か分かったらこちらからまた連絡しよう」


そう言うと副社長は別の要件があるからと部屋から出ていった。


部屋を出ていく際の足取りが若干軽く見えたのも気のせいだったのだろうか。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「10億かぁ」


副社長に呼ばれた弁護士と話を終え、俺は父さんの会社を後にしていた。


正直、いきなり法律がどうこうとか言われても全く理解出来なかったが、その金額の大きさだけが頭に残っていた。


確かに家は父さんが社長をやっているということで、一般の家庭と比べると裕福な方だが、よく言う金持ちと比べると質素な方だ。普通の一軒家に暮らしているし、俺が中学に上がると同時にお手伝いさんも雇わなくなった。


じゃあ何に金を使っているのかというと、昔父さんから聞いた話だと、被災地に寄付をしたりといった慈善活動に使っていると言っていた。


俺も現状の生活に不満は無かったので父さんの活動について文句を言うはずもなく応援をしていた。そういう訳で家には直ぐに用意できる金なんて無かった。


父さんの行方を俺の方でも探さないとと思うし、金も稼いでいかないといけない。近くにあったベンチに座りながらこれからのことを考え耽っていると、声を掛けてくる女の声が聞こえた。


「そこのお兄さん、お金のことでお困りじゃないですか」


俯いていた顔を上げると俺の目の前にいつの間にか知らない女の子が立っていた。その子は俺よりも何歳か年下の高校生ぐらいに見え、髪はプラチナブロンドというのだったか綺麗な薄い金髪で、今まで見たことが無いくらいのまさしく美少女だ。


その容姿に思わず見とれてしまうが、慌てて回りを確認する。だが近くには俺しかおらず、言われた内容も正しく俺が考えていたことだったので俺に話しかけてきたということは直ぐに分かった。


そんな見ず知らずの女の子が何故俺の考えが分かるのか、そして突然話しかけられたことに警戒心が生まれる。


「な、何ですか?」


「そんなに警戒しないでください。怪しい者ではありませんから、と言われても直ぐに信用出来ませんよね。まずは自己紹介を。私はティアスと申します」


人の好さそうな笑みを浮かべながらティアスと名乗る女の子は話を続ける。


「そうですね、私について分かりやすく言うと、あなた達人間にとって神様や創造主ともいうべき存在ですかね」


「は?」


「正確にはその中の一人なんですが。証拠にあなたのことは分かりますよ、来栖結人さん。あなたのお父さんである来栖聖さんが自身で創設した会社の資金を着服して逃亡中とされていますね。そして北川聖さんが着服した10億円をあなたが支払う羽目になっている」


ここまで正確に知っている人は父さんの会社内でもあまりいないため、このティアスという存在が一層怪しく思えた。もしかしたら父さんと一緒に居なくなったという秘書の関係者なのかとも考えられる。


「まだ信じられませんよね。ではあちらをご覧ください」


そう言ってティアスが指さした方を見ると、空中で鳩が不自然に固まっている。


「今この空間は時間の流れが止まっていて、私とあなた以外はみんな動くことはおろか、こうして私とあなたが話していることは認識出来ておりません。それにこんなことも出来ますよ」


すると今度はティアスの右手の平から、マジックかのように炎が吹き出し、左手から生み出した水球でその炎を消してしまった。それに向こうに見える時計の針もさっきから動いておらず、さっきから車が通る音や風の吹く音すらも聞こえない。本当に彼女が時間を止められる存在なのだろう。


「やっと信じる気になってくれましたね。では本題に入らせて―――」


「待ってくれ!もし本当に神様だって言うんだったら父さんがどこに居るか教えてくれ」


「もう、話を遮らないでください。それに私達はこの世界であなた達人間を直接助けることは出来ません。チャンスを与えるだけです」


「チャンス?」


「そうです。先ほどの続きとなりますが、今回こうしてお話している本題として、お金でお困りのあなたに、お金を全額返済できるあるゲームへ招待しに来たのです」


「ゲームてどんな?」


「詳しい内容については参加する方が集まりましたら説明がありますが、簡単に言うとこの世界とは別の世界で魔物等と戦って勝ち抜けば賞金が貰えるといったものです。あなたの努力次第では今回の返済金額を上回るお金を得ることも出来ますし、あなたの望みを叶えることが出来るかもしれません。もちろん命の危険も伴うため参加を拒否することも出来ますが拒否した場合は今お話ししていることは忘れて頂きます」


内容を聞いた限りでは俺にとって渡りに船だ。


「どうですか、このまま一生を返済で過ごしながらお父さんを探すか、それとも命がけで望みを叶えるか」


父さんの行方の手がかりも無いし、俺の答えは決まっていた。


「その内容が本当だって言うなら、俺はそのゲーム参加する」


「分かりました。ではこちらに集合時刻と集合場所が記載されておりますので後程確認してください」


俺の答えに満足したのか、ティアスは微笑みを浮かべながら封筒を俺に手渡した。


「それと、今回のお話については他の誰かに話さないようお願いします。話した時点で参加資格を失いますので」


「そうだ、何か持って行く物ってあるか?食料とか、武器になりそうなものとか」


「いえ、すべてこちらで用意した物を使って頂くため、持ち込みは出来ないようになっております」


他に質問した方が良いことを考えるが特に思いつかないので、これで大丈夫であることを伝えると、女の子は


「では私はこれで失礼します。検討を期待しいてますね」


フッとティアスの姿が突然消えるとそれと同時に時間が戻ったのか、止まっていた鳩も飛び去り、辺りの喧噪も聞こえるようになった。


一人になって落ち着いて考えるとさっきの話が嘘のように思えるが、俺の手には渡された封筒がある。封を切って中身を確認すると1枚の紙が入っており、そこには明日の午前0時ということと、自宅から近い場所に印がつけられた地図が描かれていた。


ここならばまだ時間的にも余裕がある。そう思い俺は一旦家に帰ることにした。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




午前0時の5分前、俺は指定された場所に到着した。


家には父さんがもし帰ってきた時の事を考えて書置きだけ残してある。母さんが亡くなっているため心配する人が少ないのは幸いだ。


そう思いながら、ティアスから渡された封筒を手に持ち時間になるのを待つ。


すると向こうから一台の車がこちらに向かって来るのが見えた。指定された場所はこの時間帯ではほぼほぼ人通りもなく車も通らないため、現われた車に乗って一旦移動するのだと分かった。


そう思っていたのだが、車が近づいて来るがスピードを落とす気配がない。そしてそれは俺の数m前でも変わらず走っているスピードそのままで近づいて来る。


何かの間違いだと思い逃げ出そうとするがもう遅い。


車はさらにスピードを上げ、走りだそうとする俺に激突する。体中に激痛が走り直後俺の意識は光に吞まれた。


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