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竜の手と異世界の乙女騎士  作者: もこ平
5/10

月下の誓い

絵の中には、深紅の騎士服に身を包んだ四人の乙女がいた。

剣を手に、名状しがたき怪物に力を合わせて立ち向かっている。

激闘の末、彼女たちはついに怪物を滅ぼしたのだ。


(救国の英雄ってわけだな……)


辿り着いた最後の壁画は――


「月下の誓い……」


流星の四乙女たちは、それぞれに掲げた剣の先を合わせ、姉妹の誓いを立てている。

その姿は、夜空に輝く二つの月に照らされている。

誓いの言葉も、碑文として残されている。


我ら四人

生まれし時は違えども、死ぬ時は同じ

星の乙女の誇りにかけて

闇を滅ぼし、愛を護らん


彼女たちの手によって、ネクロノミコンを持つ狂気の魔道士も、書物ごと空間に開いた穴に封印されたのだった。


(めでたしめでたし、ってわけか……)


ふと見ると、絵の中には、四乙女とは別の人物もいることに気付く。

若い男が、少し離れた所で誓いを見守っているのだ。

白銀の鎧に身を包んだ――


(騎士、なのか?)


あるいは、四乙女の従者のような人物なのかもしれない。

それにしても、この男、どこかで見たことがあるような――


「……!!!」


気付いて、驚愕に打たれる。

見覚えがあるはずだ。この男、他でもない俺自身に似ているのだから。

世をすねた挙げ句、あきらめと自嘲に染まった暗いまなざし。

信じられないことに、左手に俺と同じ黒い手袋までしている。


(こんなことが――)


はたして、あるものだろうか?

異世界に飛ばされ、神殿に導かれ、そこに描かれた壁画に自分自身を見つけるなんて――


「――あるわけないよな」


そうだ、きっと夢に違いないのだ。

軽く目を閉じて深呼吸。

まぶたを開く。


「……」


辺りに何ひとつ変化はない。

元いた世界に戻っているわけではないし、絵の中にいる鎧の男も、やっぱり俺自身と瓜二つだ。


「何でこんな……」


答えを教えてくれそうなものはどこにもない。

聖堂の最深部には、ごく小さな広間があるばかり。

円卓と呼ぶにはあまりに貧弱な丸テーブルと、木製の粗末な椅子が四脚。

ちょうど、山小屋の一室のようだ。

何か特別な場所なのだろうか?

まあ、そんなことはどうだっていい。

ここを拠点にすれば、雨風をしのぐことはできる。

何日暮らしていけるのかは分からないが、当面の水や食料を探さなければ――

そこまで考えたところで、


「あ……!」


自分の浅はかさに気付く。

森の中で後をつけてきた小さきものたちに、ソフトキャンディをあげるんじゃなかった。あれだって、貴重な食料になったかもしれないのに……


「くそっ……!」


後悔しても遅い。

せめてもの腹いせに、右手で自分の額をぺちんと叩く。

その時、広間の奥から、水の流れる音が微かに聞こえてくるのに気付いた。

壁の側に、誰かがブーツを脱ぎ捨てているのも。

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