表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
第2章 仕様上削除不可の ifルートおなっております。
98/158

if

「有能な人材を見つけました!

 上級魔法・『飛行(フライ)』」


 ドミニクと別れた後、レヴィアは飛行魔法で林を抜け、2階の窓からメイド室にお邪魔していた。


「メイド長、私に合うメイド服を貸して下さい!」

「急にどうしたのレヴィアちゃん!?」


「説明してる暇はありません!! ついでに猫耳も!」

「猫耳??」


 ババっと着替え、息つく間もなく飛行魔法を使い、訓練場にいる騎士団の元へ飛び立った。


 ※


 グリフォン聖騎士団、鷹の印の鎧をトレードマークに、魔獣の脅威から国を守る、聖なる団体だ。

 魔法が得意な神聖獣、グリフォンに騎乗し、地上と空を支配していた。その中には当然、冒険者に勝る一騎当千の猛者達がいる。


 芝生の上に集団で列を組み、訓練中の団員達が剣を振っていた。その脇で、椅子に座っていた顔面毛むくじゃらの年配の男の元へ、レヴィアが飛行魔法で空から舞い降りた。


「ウルゴ団長! お話があります!」

「レヴィアか、エドワード王子の要件は済んだのか?」


 騎士団長、人狼のウルゴ、人間離れしたスピードとパワーで、長剣をナイフの様に軽々と振り回す、分厚い黒と銀の体毛を纏った2mの巨体を持つ獣人だ。

 過去に、部隊を率いたレッドドラゴン討伐戦の末、生きて帰って来た不死身の人狼。騎士団には身体能力に優れたエルフや獣人が多い、団長のウルゴもその1人だった。


 そんな猛者も、今まで見た事の無いレヴィアの妙な格好とその表情に、動揺を隠せずにいた。


「ほ、ほぅ、それで何の用なんだ? 見た感じ、騎士団を脱退したいのか……?」

「いえ、会って貰いたい少年がいるのです。新たな王宮調合師に選ばれたドミニクという少年です。ゴーレムを素手で倒す腕力と、特殊な魔法を使いこなす器用さを兼ね備えています、是非、うちの騎士団にと思いまして……」


「レヴィアがそこまで褒めるとは珍しいな……えー、ゴホンッ! それより、その猫耳とメイド服は何だ?」


 レヴィアは、メイド長に借りた青色のモダンなメイド服に、猫耳と尻尾を付けた奇妙なスタイルで、もじもじとスカートの裾を摘んでいる。


「い、いえ、その彼は、こう言うのが好きらしく、交渉に使えるかなと……」


「な、なんだと!? その少年には、そういった感じの趣味があるのか……」


 何故、少年はレヴィアにメイド服を着させたのか? 猫耳まで付けて、一体、何の研究を行うつもりなんだ? と、不信感に拳を握り締めるウルゴ。


 騎士団の女性は男勝りだ、しかし、16歳と言う若さで騎士団に入ったレヴィアは、大人しく聞き分けが良い。騎士団長のウルゴにとっては、娘の様な存在であった。


「そうか、解った……その少年の所へ案内してくれ」

「あ、ありがとうございます! 団長もきっと気に入ってくれる筈ですよ、ふふっ」


 ウルゴが指笛をピィー! っと吹くと、背中に(くら)と手綱を付けた、1頭の大きなグリフォンが軽快に歩いてきた。


 グリフォンは高貴な神聖獣だ、人間を対等かそれ以下の存在と捉え、幼い頃から愛情を込めて懸命に育て上げても、決して人に懐く事はない。

 騎士団では、1人の騎士に1頭のグリフォンが与えられ生涯を共にするが、その気難しさから、途中で育成を放棄する騎士も少なくなかった。


「よしよし、こっちへ来るんだ、ロドリゲス!」


 相棒のロドリゲスに、ウルゴがバナナを1本差し出すと、鷹のくちばしでモシャモシャとバナナを食べ、満足した様子で地面に座り込んだ。


 その光景を見ていた騎士達が、ザワザワと騒ぎ出す。


「すげえ、バナナ1本でグリフォンを手懐けたぞ……」

「さすが団長だ。普通の奴なら噛み殺されてる所だぜ」

「まさか決闘へ行くのか!? 団長が燃えてるぞ!」


 レヴィアと共にロドリゲスの背中へ乗り込み、豪快に手綱を引き、グリフォンと共にグオオ! と雄叫びを上げた。


「さて、レヴィア! 案内してくれ、その少年の所にな!!」

「はい! ウルゴ団長!」



 ※



「いやー、めちゃくちゃ懐いてるねえー、不思議だねえー」

「そうなんですか? 僕って結構、犬とかに好かれやすいんですよねー」


 あれから暇になった僕は、レヴィアに言われた通り、魔獣研究室へと向かった。

 庭から中へ入ろうとしたら、庭先に居たグリフォン君が、くぅーんと、甘えた子犬の様に頭を擦り寄せて来たので、地面にひっくり返して顎を撫でている。


「他のグリフォン達も集まって来たねえー、神聖獣は魔力に敏感だからねえー」


 この人は王宮魔獣研究師のファルコンさんだ、白衣を着て話す顔には、ペンギンみたいな小さなクチバシが付いている。背は低く、割とずんぐりむっくりな体型だ。


 最初見た時はビックリしたけど、話を聞いて納得した。ファルコンさんは鳥の獣人らしく、顔が少し獣っぽい、年齢は聞いてないけど、多分、結構なおじさんだ。


「へー、よしよし、ごろごろ」


 結局、3頭のグリフォンの相手をする事になり、適当に野菜や果物をあげて見たら、美味そうに食べていた。見かけによらずベジタリアンなんだとか。


「ところで、僕も何か乗れる魔獣を貰えたりしませんか?」

「欲しいのー? 君なら自分でキメラを作った方が早いんじゃない? 合成の魔法使えるんでしょ」


「使える事は使えるんですけど、キメラについてあまり詳しくないので、何かオススメの魔獣とか居ませんか?」


 仕方ないなーと、ゆるい感じで研究室に案内された。

 天井に魔法陣を摸したシャンデリアが付いてる事以外は、調合室と部屋の作りはそう変わりない。使う魔法が合成か調合かの違いだからな、部屋のど真ん中に、鍋の変わりに透明な大きな器が置かれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ