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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
第2章 仕様上削除不可の ifルートおなっております。
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 調合室に向かう途中、魔獣研究室の庭にニワトリ君を離すと、元気にコケコケと鳴きながら飛んで行った。


「飛びましたよ、すっかり元気になった様ですね」

「愛嬌のある鳥だよね、手を振ってるみたいにみえるなー」


 柵の向こうから僕達の方へ、ご機嫌にパタパタと羽を振っていた。


 柵の隣に繋がれていたグリフォンの前を、警戒しながら進んで行く。グリフォンは目を瞑ったまま銅像の様に微動だにせず、僕達が通り過ぎるのを待っていた。

 あまり、人に懐きそうには見えないけど、魔法が使える程の知能はあるらしい。


 池沿いに歩いていると、水辺からスイスイと綺麗な鯉が泳いでいるのが見えた。


「あんな魚までいるんだー、ちょっと癒されない?」

「そうですか? あの鯉には、ピラニアの遺伝子が組み込まれてますよ」


「へぇ……」


 王宮調合師は、専用の研究室に缶詰め状態にされるのかと思っていた。でも池もあるし、建物の外観をみる限りは別荘的な感じもする。


 あれが研究室だ。(くす)んだ赤レンガの土台に、上半分は木で作られたL型の一軒家が、林に背を向けてポツンと建っていた。

 でかいな、保管室のある僕の家と比べてもまだ大きい位だ。庭に横長の花壇があったけど、ハーブは植えられて無かった、管理はされてないらしい。


「妙に静かだね、職員は居ないの?」

「基本的に職員はいません、王宮の称号を持つ者がアルバイトを雇う権利があり、その費用も国から負担されます」


 レヴィアから銀の鍵を貰い、入口の扉を開いた。


 内部は少し暗く古臭い感じだけど、飾られたランプがオシャレで、窓から池が見える雰囲気のある家だ。

 ウェソン教授は、乾燥ハーブを瓶に入れて保管していた様だ、棚に幾つかの珍しいハーブが残っていた。


「お洒落な家だね、本当にここを自由に使っても良いの?」

「勿論、称号がある間はドミニクの所有物となります、食事代から娯楽代まで全て請求できますよ」


「凄い待遇だね、研究だけしてれば遊んで暮らせるじゃん」


 あの教授が、称号を手離したがらなかったわけだ、費用の大方は娯楽に消費してたんだろう。


 どうせ研究するのであれば、転移の祭壇を作って、ここと薬草研究会の部室を繋ぐか。部室には調合器も保管室も無いしな。


「ちょっと、転移魔法で人を連れてくるから待ってて」

「また転移系の魔法ですか? 私にもやり方を教えてください!」


「はいはい、今度ね」


 グイグイとローブを引っ張ってくる。レヴィアは魔法の事となると探究心を抑えられないみたいだ。転移魔法のコツを教える約束をして、祭壇を作れそうな人を呼びに向かう。


 ※


「あー、ドミニク! 何でまた新しい女を連れてやがる。パパは許さんぞ!」

「トムさん、さてはドミニクに伐採クエストの報酬、払ってないでしょう?」


 レヴィアがめんど臭そうな目で2人を見ている。気持ちは解る、僕も頼めるなら他の人が良かった。


「ドミニク、誰ですかこの変な人たちは?」

「エリシアスの魔法商店の人達だよ、変っていうか……ああ、背の高い方、ビクターさんは良い人だよ」


 連れて来たのは魔法商店、店長のトムさんと従業員のビクターさんだ。だって、天空の木の伐採クエストの報酬をまだ貰って無かったし。


 流石に家の中に祭壇を作るのはどうかと思ったので、外に作る事にした。


「トムさん、ここに祭壇を立てて欲しいんですよ、建築、得意ですよね?」

「お手の物だが、金はあるのか?」


 急に商人の顔になったトムさんの前に、懐からG(ゴールド)の入った布袋をジャランと取り出す。


「100万Gでどうですか?」


「やるぞビクター!」

「おう!!」


 庭の丁度、Lの字の窪んだ所に、木製の祭壇を立てて貰う。ここに転移魔法を刻んだ石板を祀り、養成学校にある様な転移の祭壇を作り出す。

 ここと部室と僕の家を繋いで、部屋の管理はルミネスに任せるか。


 お金は伐採クエストの報酬から80万G、エドワード王子に貰った内の20万G、魔法商店から50万Gで家具を仕入れ、合わせて150万Gの出費となった。


 それから転移魔法で、あっという間に家具を入れ替え、ルミネスを召喚して家の掃除を任せる。


「ドミニク様、また新たな奴隷を増やしたのですか?」

「奴隷じゃ無くてお友達ね。それより、この家の管理をルミネスに任せたいんだけど」


「かしこまりました、新たなアジトです!」


 棚をハタキでパタパタと叩くルミネスを、深刻な顔でレヴィアが見つめていた。もしかしたら魔神は不味かったかな……? 騎士の敵っぽいし。


「ええと、あの猫耳メイド服は、ドミニクの趣味ですか?」

「え、そこ!? まぁ嫌いではないね……」


「なるほど……私も着てみますか」


 せっせと部屋を掃除するルミネスを、2人で無言で見つめる……思わぬ誤解をされてしまった気がするぞ。


 良し、後は転移魔法を刻む石板を取りに行くか。


 古代魔法は、普通の魔法石に刻むと魔力に耐え切れず石が破裂してしまう。なので、古代の石板にしか刻む事が出来ない。


 ※


 転移魔法で太陽の遺跡までやって来た。ターゲットは、歓迎会の時にいた石板ゴーレムだ。あれを素材にするのが手っ取り早い。


 ルミネスとレヴィアを祭壇の前で待機させ、受付のケロリアさんにクエストを貰いに行く。相変わらずのカエルローブで、カウンター台に頬杖をついていた。


「あら、歓迎会の時の子だ! ドミニク君だっけ? 今日は授業はお休み?」

「お久しぶりですね、僕だけお休みなんです。ゴーレムが一杯出るクエストを貰えますか?」


「はいはいっと! ゴーレムなら2層目から沢山出ますよ」


 ケロリアさんにお礼を言い、クエストを貰って祭壇まで戻る、事前に探索クエストを受けておくと、ギルドに報酬の一部を渡す事でお金が貰える。


「おかえりなさいませ! 早速愚かなゴーレムを駆逐しに行きましょう」


 ゴーレム退治と聞き、レヴィアが疑問の表情を浮かべた。


「魔法の効かないゴーレムを、どうやって倒すんですか?」


「ルミネスもいるし、適当に殴れば倒せるよ」


 何言ってんだこいつ、と言いたげなレヴィアを連れて遺跡内部へとワープした。


 ※


 砂漠の部屋へと転移された、すぐに隠蔽の魔法でみんなの姿を隠す。


 レヴィアが透明化した両掌や脚を、不思議そうに見つめている。


「何ですかこの魔法? 全身がスケスケです……」

「光学迷彩だよ、レヴィアは使えないの?」


「普通は使えませんよ……ドミニクは特殊な魔法が得意なのですね」


 入り口のゴーレムを無視して、クエスト情報の通りに砂の通路を進む。あっという間に目的地の2層目に入ると、一際でかい砂の部屋に辿り着いた。中に黄色の石板がゴロゴロと転がる。


「じゃー行くよー」

「ちょ、ちょっと! 本当に素手のまま乗り込む気ですか? 危険過ぎます!」


「では、ドミニク様、作戦の通りで!」


 おっけーと、ルミネスと目で合図し、室内に侵入すると、複数の石板がブォォと奇妙な音を立てひっついて行く。

 そうはさせない! 左右に旋回し、一気にそれぞれの担当するゴーレム(素材)へと駆け出す。


 レヴィアが後ろから、何かの魔法陣を描いていた。


「危険です、私が援護します!!」


 さっき、ルミネスと立てた『ゴーレムひっつく前に倒そう作戦』で、部屋中を走り回りながら、ガンガンと石板を砕いていく。

 名前の通り、シンプルに石板がひっつく前に殴る、蹴るの作戦だ。


 あっという間に、部屋中が素材、もとい石板だらけになった。良し、収納の魔法でしまうか。


「あれ? 何やってるのレヴィア?」


 何故か、レヴィアは魔法陣の前に両手をかざし、呆然と立ち尽くしていた。


「いや、あの、援護射撃をですね……」


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