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実技試験 2

 多くの生徒が森へと向かう中、校舎裏に残ったのは腕に自信のある少数の生徒だけだった。


 そのうちの1人、ギーシュも数枚のカードを使い占い術を行っていた。


「ギーシュさん! 早くあの野郎をやっちまいましょうよ」

「まぁ待て、僕の占いに寄るとここで乱戦になったら優勝候補の狂戦士・レオルとも戦うことになる」


 魔法適正が高くレオルと同じ優勝候補でもあったギーシュだが、占い術により乱戦を避ける事を選んだ。


「僕達もリーシャちゃんの後を追って森に入るぞ、待っててねリーシャちゃん。ぐへへ……」

「さすがギーシュさん! 笑い方がパネェっす!」



 ※



 森の入り口手前で『光学迷彩』の魔法により消えた2人を見送った。


 もう大丈夫そうだな、僕も動かないと!


 校舎裏を振り返ると、既に戦いは始まっていた。


 校舎裏の石畳の上を高速で移動しながら、無差別に剣を振り回す銀髪の剣士に、他の生徒達は防戦一方となっていた。


 30cm程の小型の杖を片手で構え、高速で向かってくる銀髪の剣士を迎え撃つ生徒達。


「レオルが来たぞ! 囲め!」

「早すぎる! 魔法が当たらないよ!」


 銀髪の剣士は放たれた火の魔法に怯むことなく、体を逸らし難なく躱す。


「その程度の魔法が当たるかよ……俺を舐めるなよ!」


 そのまま間合いを詰め、反撃の剣で襲いかかる。


「くそ! 誰か援護を! ぎゃああ!」


 あーあ、やられちゃったな。喧嘩っ早い奴だね、あの剣士のせいで乱戦になってるし。


 剣士の猛攻に耐えきれず、残っていたメンバーも森へ逃げ出し始めた。


 また1人やられた、って! 今度は僕の方へ銀髪の剣士が走って来た。低姿勢のまま剣を脇に抱えるように下げ隠している。


「4点目だ! そこの優男、なに呆けている? ここは戦場だぞ」

「忠告どーも、僕はドミニクだよ。丁度いいや、新しい杖の調子を試そうかな!」


 多分、下から切り上げてくるな……


 解りやすい攻撃だ、絶対に回避されない自信があるのかな?


 僕も両手でしっかりと杖を握り、待ち構える。


 迷う事なく真っ直ぐに剣士が迫って来る。杖を握り直し、攻撃の届く距離に剣士が踏み込んだタイミングで一気に杖を振り抜いた。


「行くよー、ふん!!」


 力強く振り抜いた杖が音速を超え、ブォン!!と空気の爆発音が校舎裏に響いた。


「ぐぅはぁ!!」


 あっ、やべ!! 適当の一撃(フルスイング)がレオルの顎に入った!


 剣士は人形の様にゴロゴロと地を転がりながら吹き飛び。ズドン!っと校舎裏の壁に激突し大きな穴を開けた。


 ええ!? 何で避けないんだ? っていうか校舎に穴が!?


 校舎裏に空いた穴から、瓦礫を掻き分け砂煙と共に剣士が這い出て来た。


 お、立ち上がったけど、ぐったりして元気がないぞ……大丈夫かな?


 銀髪の剣士が壁に激突したのを見て、心配した生徒達が集まって来た。


「おい、あのドミニクとか言う奴、レオルをぶん殴ったぞ!!」

「レオルは接近戦闘『B』なんだぞ、あんな奴に負けるかよ」


 僕も心配になり、剣士の元へと駆け寄って声を掛ける。


「レオル君だっけ? ごめんね、シールの保護が効いてないのかな? 怪我は大丈夫?」


「…………(何が起きた!? あ、顎が折れてる)」


 力なく震え、無言のままだ……


 先程までの猛攻に怯えていた生徒達も、急にグッタリとした銀髪の剣士を見て心配している。


「辞めて! レオル君はもう戦えないわ!」

「おい止めるな! あの程度で終わる奴じゃない。レオルの目を見てみろ、まだ諦めて無いだろ? あれが騎士って奴だ!」


 確かに……まだやる気みたいだ、タフだなー。


「…………(ちょ! まっ! ええ!? 無茶言うなよ! こっちは顎が折れてんだよ!! )」


 みんなが僕達の戦いを見守る様に、戦場から離れて行った。


 大丈夫そうだな、まだ戦いは終わってない! 試運転も兼ねて魔法を打ち込んでみよう!


 本来なら0秒で発動出来るんだけど、この杖は魔法の発動に0.8秒も掛かる制限付きの杖だ。


 魔法の発動前に『解除(キャンセル)』される可能性もある、気を付けないと。


 杖の黒い宝玉に刻まれた魔法陣が、魔力の光を帯び怪しく光る。空気を圧縮回転! レオルの足元に螺旋を描く空気の圧力を集めて行く。


 この魔法は大気竜が使う上昇気流の魔法を再現した物だ、威力も同程度に抑えてある。


初級魔法(オリジナル)

アトモスフィア(大気)デス(死の)ジャッジメント(審判)』」


 膨大な空気の圧力を、レオルの足元から上空へと向けて爆発させる!


 シュバーン!と爆風が起き、一瞬でレオルを100m程上空に跳ね上げた。


「……(た、たすけてえ!!!)」


 風圧が森の木々を揺らし、木の葉と砂埃が暴風に呑まれ辺りを包み込む。


「風圧で動けねーヤベーよ! レオルが爆発して吹き飛んだぞ! 今の魔法か!?」

「はっ! あんな魔法あるかよ、あれはレオルの狂戦士・飛行態勢(フライモード)が発動したんだ、あいつ死んだな」


 なんで解除しないんだ? まさか僕の魔法なんて屁でもないと、そういう事か!


 上空から落下し、ボトン!!っと力無く地に叩き付けられたレオルは、そのままピクリとも動かなくなった。


 僕も臨戦態勢で待ち構える、どうした?


 あれ……もしかして気絶してる?


「……」


 動く気配は無いな……良し! 何はともあれ倒したみたいだ。


 倒れていたレオルのシールが、パーン!と音を立て弾け飛ぶと、僕の肩に貼ってあったシールが輝き、4の数字が表示された。


 加点されたみたいだ、レオルは3人倒してたからその分かな?


 戦いも終わり辺りを見渡すと、何故か校舎裏から生徒の姿は無くなっていた。


 誰も居なくなってる……みんなどこ行ったんだろ?


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