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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
編集中 仕様上削除出来ないので、ifルート的な章です。
84/158

ここまでif

「もう我慢ならん、忌々しい死霊薬を消し去るぞ」

「私も手伝おう」


 学会メンバーが、黒い煙を放つ瓶を取り囲み、浄化の魔法で水に戻していく。


 死霊薬は禁じられた薬品であるにも関わらず、エリシアスにある希少価値の低い毒草から、結構簡単に作る事が出来る。エリクサー版の効果は試してないけど、同じ様に動く屍が生み出されるのかな。


「離せ! 私は騙されただけなんだ! 薬草研究会のガキどもを連れて来るのだ!」


 抵抗する間も無く、騎士達に取り押さえられ、ギャーギャーと喚くウェルソン教授。


「レシピを盗んでおいて、良くあんな事が言えるよね」

「フォローの言葉も見つからないなぁ」


 王都に来てからこれで2人目だ、また汚い大人に出会ってしまったと、そんなジト目で僕達は教授を見つめていた。まぁ、学会の場で禁薬を作った罪は重い、良くて終身刑、最悪極刑かな。


 王子らしき人が、地に伏せられた教授に近づいて行き、失望の目を向けながら声をかけた。


「ウェルソン、学生から盗みを働くとは愚かな男だな……」

「え、エドワード王子……な、何故それを!?」


「全てお見通しだ、こいつを牢獄にぶち込め!」


 合図により、騎士達が教授を引っ張り上げ、部屋の外へ強制連行して行く。やっぱり、あの人がエドワード王子か。


 ジッと、王子の方を見つめていると。突然、僕達の方へクルッと振り返り、怪しく微笑んだ。


「そこの2人、もう出て来て良いぞ! レヴィア、隠蔽の魔法を崩せ!」


「はいです! 行きますです!」


 どこかで見たような赤髪の女の子が杖を振ると、透明化している僕達へ向けてバシャーン!と、水の球体が飛沫(しぶき)を上げながら飛んで来た。


 いつの間に魔法を……? やるね、あれで正解だ。


 光を曲げる光学迷彩の魔法は、解析や探索の魔法を跳ね返す。

 隠蔽を崩すには物体に色を付けるか、あの様に水をかけるのが手っ取り早い。他にも拡声の魔法を使い、対象の足音を大きくするって手もあるけどね。


 冷静に分析していると、全身にバシャーン!と水が浴びせられ、隠蔽の魔法がバチバチと弾け飛んだ。


「……初めまして、エドワード王子。いつから気付いてたんですか?」

「うぅ……びしょ濡れだよ」


 なんとか冷静に言葉を返したけど、内心はかなり焦っていた。不意打ちで放たれた水の魔法と、そこに現れた僕達、どう見たって侵入者だし!


「気付いていたのは、そこに居るレヴィアだ。心配しなくても良い、ルーシス校長から話しは聞いている」


 水魔法を放った魔法師の女の子が、テヘッと申し訳無さそうにこっちを見ていた。


「校長から? って事は、僕達が学会の参加者だって知ってるんですか?」


 コクリと頷くエドワード王子を見て、ホッと胸を撫で下ろした。


 ずぶ濡れの僕達を見つめるエドワード王子の後ろを、ダメ教授がズルズルと白衣を引っ張られ、騎士達に強制連行されて行く。


「あああぁ、学生どもを捕らえろ! 犯人はあいつらなんだぁ」

「犯罪者が虚言を吐くな! 牢獄で反省しろ」


 あーあ、最後の最後まで謝罪は無しか、残念ながら同情の余地は無いね。



 ※



「何て輝きなんだ……これが本物の神聖ポーション」

「神だ……これは神の仕業だ」

「まさにゴッドだ、ゴッドが降臨した」


 僕がたった今再現したエリクサーを、研究者達がしつこい位に褒め称えていた。ゴホンと、咳払いをし、エドワード王子が場を仕切る。


「あー、改めて場を仕切らせて貰う。そこの養成学校の2人が、エリクサーのレシピを発表する予定だったんだが、トラブルがあってな……」


 僕達も学会の席に着き、エドワード王子の話に耳を傾けていた。ダメ教授が居なくなったので、部屋から雑音が消えて落ち着く程静かだ。


 教授の悪巧みは王子に筒抜けだった様で、エリクサーのレシピを盗まれた所に始まり、一部始終をみんなに説明してくれた。

 牢獄行きのウェルソン教授には、重い処罰がかせられるらしい、まぁ王子の顔に泥を塗ったんだ、極刑じゃ無い事をせいぜい祈るしかないね。


「と言うわけだ。さてと、本題に入るか。ウェルソンがいなくなった以上、新たな王宮調合師をこの中から選抜するわけだが」


 何だか嫌な予感がして来たぞ……まさか、エリクサーのレシピを再現した僕を、王宮調合師に任命しようって方向じゃないよね?


「見事にエリクサーのレシピを再現して見せた、彼を王宮調合師に任命しようと思うのだが、異論はあるか?」


 やっぱりそうなるのか……元を辿れば部の存続の為にエリクサーのレシピを開発した訳だし、SSSランクに続き、そんな面倒くさそうな称号はいらない。


「ちょっと待ってください、異論はありますよ、僕まだ学生なんですけど……」


 王子は爽やかに笑い、それが何か? と、言わんばかりの態度だ。


「たまに王宮の調合室に来て、研究の手伝いをしてくれるだけで良いんだ、駄目か?」


「凄いよドミニク君! 王宮調合師になれば薬草学の試験免除になるんだよ」

「それはそうなんだけど……」


 結局、学会参加メンバーの一存の元、僕は王宮調合師の称号を得る事となった。

 これに伴い、薬草、及び調合師の資格で最もランクの高い『1級調合師』の資格が冒険者カードに刻まれた。この資格があれば、もう誰の許可無くとも薬品を製作、販売する事が可能だ。


 そして、肝心のエリクサーの件だけど、案の定、作り方を間違えると死霊薬が出来てしまうと言う事で、議論が成された末、一部の優れた調合師のみが扱える、特級の薬草として認定される事となった。


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