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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
編集中 仕様上削除出来ないので、ifルート的な章です。
78/158

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 まずは安くて上質な素材の確保、お金が無いなら安い素材を良い素材に変えるまでだ。


「魔法商店に大きな鍋ってあるかな?」


 腰の高さに手をやり、大体の大きさを伝える。


「んん、大きな鍋……多分、お店の倉庫にならある……」


 素材改良と言えば『合成』の魔法だ、まずは鍋の確保から始めよう。


 決闘の果てに倒れたトムさんは放置して、2人で倉庫へ向かう。

 店内に入って2階の階段を登り、紫の絨毯の通路を進む。案内された店裏の倉庫、兼、在庫置き場に、ホコリを被った大きな土鍋が、家具に埋もれて頭を出していた。


 あったあった、合成に使うには丁度良いサイズの土鍋だ。鍋の前に置かれていた家具を両手でしっかりと持ち、邪魔にならない所へ移動していく。


「何で家具がこんなにあるの? 店内で売ってる様子は無かったし、元々は家具屋だったとか?」


 僕がそう尋ねると、放置されていた家具を寂しそうに見つめながら、ウーリッドは語り始めた。


「元々、うちの売り上げの(ほとん)どが、ママの作った家具だった……」

「そうだったんだ? でも店内に家具は数点しか置いてなかったよ?」


 箒以外に目立っていた物と言えば、入口にあった魔導ローブくらいだ。机や椅子は、目立たない所に休憩用として2、3点置かれていた程度だ。


「もう家具を作れる人が居ない……高級志向のパパに嫌気がさしてママは出て行った……」


 話を聞くと、この魔法商店は元々は家具屋で、ウーリッドのお母さんが経営していたらしい。

 トムさんと結婚し、お店を魔法商店にリフォームした後。数年間経営を続けるも、こだわりの強いトムさんと意見が分かれ別居。

 その結果、売れない箒しか作れなくなった魔法商店は、赤字経営になったと……可哀想に、ここだけの話、さっきトムさんをぶっ飛ばしておいて良かった。


 家具を丁寧に移動し、土鍋ごと工場へと転移した。


 ※


「このままだと合成鍋としては使えないから、宝玉を取り付けて改造しないとね」


 収納の狭間から花竜の鉱石を取り出して、掌でキャッチした。


「この鉱石を研磨して宝玉に変えて欲しいんだ」

「こんな貴重な鉱石を何に使うの……?」


「見てのお楽しみだよー」


 鉱石の状態だった花竜の心臓を、工場でウーリッドに研磨して貰い、宝玉に変えて土鍋に埋め込んだ。これで準備は完了だ、あとは安い木を持って来てっと〜。

 

 合成に火は使わないけど、魔法による水の沸騰で熱を起こすので、人のいない安全なスペースを使う。

 設置した鍋に、浄化の魔法を掛けた聖水を入れ、加熱の魔法で一気に沸騰させる。これで大体の準備は整ったな。


 それから数分後、裏庭で寝ていたトムさんが目を覚ました。


 工場の前のベンチに腰掛け、ゴミ置場で貰った4弦楽器のウクレレをポロンポロンと奏でる。


 トムさんの視線が刺さる。今、僕の目の前では、数分前に沸騰させた土鍋がグツグツと煮えたぎり、湯気を出している。勿論、作っているのは杖の素材だ。


「こんなので本当に木目が再現されるのか? 今時、鍋ってお前、魔女みたいな奴だな。はっはー!」


 トムさんは腹を抱えて笑いながら、僕の肩をバンバンと叩いてくる。さっきまで決闘して倒れてたとは思えない、うーん、腹立つな!


「ほっといて下さいよ、誰の為に素材を作ってると思ってるんですか」

「ね……!!」


 聖水を入れた鍋に木材を突っ込み、宝玉に刻まれた『保護』の魔法が浸透する事で、天空の木と同じ木目を作り出す事が狙いだ。

 わざわざ貴重な花竜の宝玉を使ったのは、宝玉には複数の魔法を刻む事が出来るし、花竜は土属性なので、木材強化に適しているからだ。


「そろそろ、木が飛び出して来ますよ、離れて下さい」


 予想通り、ピカッと閃光を放ち、鍋からカランコロンと木の棒が飛び出して来た。


 トムさんが転がった木の棒を拾い上げて、クルクルと回して木目を確認し、ブツブツと何か呟きながら震えている。


「これは……まさしく天空の木の木目だ! うぉぉ! 本当に安い木からこの木目が出るなんて! すげぇ」

「パパ、うるさい……」


 どうやら、成功したみたいだな。今回、合成に使った木は『生命の木』だ。

 これは、エリシアス地帯によく生えている木で、一般家庭の家具等に良く使われている、低コスト素材だ。魔法商店には、家具の素材だけは格安の仕入先があるらしく、この木を選んだ。

 この木の特徴は、生命力が高く、長持ちする事にあり、天空の木1%に対し、99%の生命の木で、この素材を作り出せる。


「早速、杖を作ってみよう。宝玉には合成と思考形成の魔法も刻んであるから、木をかき混ぜながら杖の形をイメージするだけで良いよ」

「やってみる……!」


 トムさんの作る魔導具は、全体の材料費の80%近くを占めている割に、売り上げは全体の1%しか無い。この素材を使えば大幅に売り上げは改善される筈だ。


 ウーリッドがかき混ぜた鍋が光を放ち、杖が飛び出して来た。


一一一一一一一一一一一


『名前』:ライフウッド・スタ(生命の杖)ッフ


『素材・種類』:生命の木、合成杖


『属性』:土


『杖ランク』:A


『攻撃力』:C

【打撃の威力】


『魔力変換効率』:1200%

【付与魔法発動時の魔力の上昇率】


『消費魔力軽減率』:30%

【魔法発動時の消費魔力の軽減率】


『製作者・ブランド』:ウーリッド・レガシー A

【魔導具作成、適性者のみ表示】


『ステータスカード称号』:合成の杖 :生命の杖


 一一一一一一一一一一一


 完成だ、まぁまぁの性能だな。見た目は杖というより、葉っぱのついた、自然にある木の枝って感じだ。トムさんに杖を手渡し、性能を見てもらう。


「ほら、完成しましたよ。杖を見て下さい」


「凄え、安物の木がこの性能の杖に変わったって言うのか……? じゃあ、俺が今まで作っていたのは一体何だったんだ……」


「ただの棒ですね!」とは言えず、膝をついて座り込み、思考停止したトムさんに語りかける。


「どうですか? もう高級な木にこだわるのはやめて、普通に商売して下さいね」

「ああ……お前の勝ちだ、ウーリッドの事は頼んだぞ」


 あれ、まだその話続いてたの?


「よろしくお願いします……ポッ」


 もう駄目だ、この親子のペースに飲まれたらろくな事にならない! さっさと家に帰ろう……


 それから、鍋の使い方をみんなにレクチャーし、量産可能な事を確認した。

 トムさんには、パパと呼ぶように強制されたけど全力で拒否し、杖を2万G以下の、安値で売る事を約束してから魔法商店を後にした。


「じゃあまた、養成学校でね」

「うん、また……!!」


 帰り際に、ニコニコのビクターさんにまた遊びに来いと誘われた、どうやら大気竜の素材で財布が潤ったみたいだな。

 あれ? そう言えば僕だけ天空の木の報酬貰ってないぞ!? あの魔法商店には、まだまだお世話になりそうだな。


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