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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
編集中 仕様上削除出来ないので、ifルート的な章です。
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 暖かい陽の光が山に戻り、濡れた制服を乾かして行く。

 すっかり雲が消え去り、さっきまで池があった窪地から空を見上げると、彼方まで見渡せる青色が広がっていた。


「ドミニク君、もう怪我は無い……?」

「大した事無いよ、僕よりウーリッドの怪我の方が心配だよ」


 窪地に半分埋まった岩を、椅子の代わりにして、僕達は2人して休憩を取らされていた。


 大気竜を討伐した後、ウーリッドは飛行隊の手によって無事に助けられた。その間、てっきり僕が大気竜に倒された物だと勘違いしていたらしく。再会してからずっと挙動がおかしい。


「嘘は駄目……頬が擦り剥けてる……!」


 僕の頬についた米粒みたいな擦り傷を、掌で抑えて回復(ヒール)の魔法を掛けてくる。


「も、もう怪我はしてないから! 照れくさいからやめて!」

「うんん、動いちゃ駄目……!」


 強引に腕を引っ張られたので、しぶしぶ観念する。うーん、人見知りだと思ってたけど、これじゃカレンと大差ないぞ??


 暫くして、いつもの調子に戻ったのか、岩から垂らした細い両足をパタパタと揺らし、照れ臭そうな顔で笑っていた。


 ※


「もう限界だわぁー」

「シュルトの兄貴ぃ、重いっすよー」


「我慢しろ! それが金になるんだ」


 ふと、騒がしい声が聞こえ、シュルトさんと、その舎弟のホビーとリッチさんが、無事に伐採を終えて戻って来た。

 持ち運べるサイズにカットされた木を、ロープで纏めて背中に掛けて運んでいる。


 話を聞くと、シュルト飛行隊が、地図を頼りに歩いて来た山道の伐採ポイントには、ビクターさんが建てた休憩用のベンチと、伐採道具が保管してあるらしい。


 そして、天空の木を探し回り、散々歩き回った僕達は疲れ損だったみたいだ。

 トムさんがこだわっていた天空の木の木目は、この山に生える大樹が、高度10000mの過酷な環境に耐え抜く為に身に付けた『保護』の魔法陣が、木目となって現れた物だった。


「って事は、この辺りに生えてる木、全てが天空の木だったって事だね」

「適当に伐採してれば良かった……」


 ビクターさんはと言うと、干からびた池に沈んでいた数体の大気竜の死骸を漁り、ガッツポーズを決めていた。


「大気竜の鉱石だ! これで減給されても問題無いぞ! ウーリッド、トムさんには黙っとけよ!」


「ラジャー……!」


 ウーリッドもガッツポーズで返した、やっぱり、あの魔法商店には何か金銭的な問題がある様だ。


 それにしても、まさか、水の中に大気竜の巣があったとはね。よく体を見てみると、胴体にヒレの様な長い羽根が2本畳まれている。あの巨体を隠すには水辺が適しているし、泳ぎも得意な竜族だったのかも知れない。


「せっかくだし、僕達も大気竜を素材として分解しようか」

「あの大気竜はドミニク君が倒したの……?」


「ううん、多分、寿命か仲間割れじゃないかな?」


 僕の稲妻を受けた大気竜は、チリも残さず消滅した、あの死骸は、初めから池底に沈んでいた物だ。


『鉱石採取』の適性を持っていたウーリッドに、大気竜の解体を手伝ってもらう事にした。

 竜族は命を失うと、体の一部が宝石に変わる不思議な特性がある。この大気竜の爪も鱗も、キラキラと宝石の輝きを魅せていた。


「よいしょっと、重いなぁ」


 埋まっていた、10m級の大気竜の尻尾を引っ張り、巨体をズルズルと土の中から引きずり出す。

 隣で大気竜を漁っていたビクターさんとウーリッドが、口をあんぐりと開き、凄い顔でこっちを見ている。


「お、お前本当に人間なのか!?」

「ね……」


「それ、どういう意味ですか……」


 青色の瞳に鱗、空の青を思わせる大気竜の体は、どの竜族よりも聡明で綺麗だ。頭部には白く鋭い毛が生えているけど、これも完全に宝石に変わっていた。


「もう鉱石化が終わってるね、解体しよう」

「大気竜の鉱石なんて、お金に換算出来ないレア中のレア……」


 敬意を払いながら、魔法で大気竜を解体する。


 宝石化した爪と鱗、魔法の宝玉と化した心臓、そして杖の土台になる骨と皮、食べられそうな肉は、魔法商店の工場の料理人に、きちんと切り分けて貰おう。冷凍保管室に突っ込めば長持ちするし。


 そうして、全ての素材を回収した。魔獣は人を食い、人は魔獣を殺し素材とする。昔から冒険者と魔獣という物はそういった関係にある。


 3人で汗だくになりながら、何とか作業を終え、地面に座り込んだ。


「ふぅー、お疲れ様! ありがとう、こんなに早く終わるなんてウーリッドのお陰だね」

「ううん、私も貴重な経験が出来た……」


 それから一仕事終えたシュルト飛行隊とも合流し、全員で焚き火を囲んで携帯食のパンを食べ、無事にクエストを完了した。


 終わってみれば大した事無かったな! 相変わらず、ウーリッドは腕にしがみついたままニコニコしている。


「じゃあ本題に入るか!」

「そうだな、おい、ギルドのガキ!」


「え! な、何ですか?」


 ビクターさん達に取り囲まれて、反省会が始まった。


「ドミニク。正直に話すんだ。闇の中で何があった? 大気竜はどこに消えたんだ?」


 すっかり怪我が癒えた僕達に、さっきの出来事を、真剣な眼差しで問い詰めて来るビクターさん達。唯一、ウーリッドだけが僕を庇ってくれる。


「ドミニク君は疲れてる、今は休ませてあげて……!」

「ううん、良いんだ。隠しててもしょうがないし。転移魔法で魔法商店に戻ってから話します」


 全員の驚いた声が、綺麗にハモる。


「「え……転移魔法???」」


 硬直したみんなを横目に、魔法商店へと繋がる転移の魔法陣を描いて行く。


「な、何をふざけてるんだ? これは大問題なんだぞ、過去に討伐例の無い最強のドラゴォォおお???」


 ビクターさんの話しを遮り、目の前に転移の狭間を出現させた。


「じゃあ、魔法商店に帰りましょうか! あれ??」

「うぅ、駄目だ、思考が追いつかない、頭痛がして来た……」


 突然、頭痛に襲われたビクターさんに手を貸し、転移の狭間を潜った。こうして、長かった伐採クエストは、やっとの事終わりを告げた。


 シュルト飛行隊は、転移の狭間に怖気付き、箒に乗って帰る事にした様だ。


「お、俺はあんな怪しい狭間なんかに、絶対に入らねえぞ!」

「兄貴、びびってんすか?」

「今世に未練があるんすか?」


 また魔法商店か何処かで会うだろ、見た目通りの面白い人達だったな。


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