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新薬販売 4 マルコside

「がははっ! 金はあるだけ使えっ!」


 ここは王都にドン!と店舗を構える薬品店、『聖薬の恵』だ。

 店長はこの俺、マルコ。まだ店舗が無かった頃は、足車を使った販売を地道に続けてきたが……今ではこの二階建てのハウス兼、薬品店が俺の自慢の店だ。


 景気の良いダミ声が店内に響かせてやると、愛犬のチワワがキャンキャンと床を駆け回った。


 ちっ、バイトの奴らがサボってやがるな……。

 掃除の手が止まったまま、アルバイトの2人が噂話に花を咲かせていた。


 まったく、最近の若い奴らは本当に使えねぇ。俺の時代はもっとハングリー精神をもって仕事してたもんだ。


「バイトども! ちゃんと掃除しろよー、金は払ってるんだからなぁ! ガハハっ」

《キャンキャン》


「店長、昨日から急に羽振りが良くなったな? 宝くじでも当たったのか」


「ああ、入口に飾ってあったエリクサーのお陰だろ。それより、この店内に散らかった犬の毛を誰が掃除すると思ってんだ……」


 まっ、バイト達が戸惑うのも無理はねえがな。


 回転式のソファーを左右に振りながら、店内を見渡す。

 この店は見た目こそちゃんとした薬品店に見えるがとんでもない裏があった……。

 俺は各地で売られている商品の相場を把握し、エリシアスと王都を行き来しながら金になる商品を集めて来ていた。


 そう……実は、店内に置かれている薬品類、香辛料から果物まで、その全てがエリシアスから買って来た転売品だ。


 ここ王都では、王族やギルドの許可が無い商店による販売や転売行為は重大な違法となる。

 しかしそれは、商店がギルドから『保証を受けていれば』の話だ。


 王都とは違い、エリシアスでは無許可のまま商店を開く事が出来る。

 つまり、ギルドの保証を受けていない商品が大量に売られている……これを王都で売っても何の罪にも問われない。


 少し危険が伴うが、逆の方法もある。

 王都の薬品の相場はエリシアスの半分以下だ。質の良い薬品を王都で安く買い、船で川を上ってエリシアスで高値で転売する。


 これは言ってみりゃグレーゾーンだ。エリシアスの様に馬鹿みたいに広い田舎町では、足車式の移動販売店を使って各地で売り捌けば、例えバレたとしても足がつかないだろう。


 俺には商人としての才能が無かった……愛想の無い顔に品の無い声、そりゃ客も去っていくだろう。だが今の俺は一流の転売屋だ。このエリクサーがあれば俺は大金持ちだ!


「しかし、あのガキども……これだけ大量のエリクサーをどこで手に入れやがったんだ?」


 裏ルートか? 何にせよ汚ねぇ手を使ったに決まってやがる。ぐぬぅ……思い出しただけでも腹が立つ」


「この売れ残りのポーションをどうしろってんだ! ふぅー!」


「店長、ここ禁煙っすよ!」


「煙たいおっさんだな」


 草原地帯の薬品販売勝負にて学生どもに完膚なきまでに叩きのめされた俺は、売れ残ったレッドポーションの在庫処理に胃を痛めていた。


 最初は逆恨みで始めたエリクサーの違法転売だったが、徐々に俺の罪悪感は麻痺していた。エリクサーは研究者達に高値で売れる。お陰で信じられない額の金が手に入った。


「ふぃー、嫌な事が忘れられる最高のワインだ」


 仕事中にも関わらずワインを飲み干し、黄金のファーの付いたコートを羽織ってセレブ気分を味わう。


 この店の内装は元々は、外観の通りの民家風の質素なお店だった。店内の装飾を黄金に変え、高級なチワワと運搬用のダチョウを買い揃えた。

 このエリクサーがあれば俺は無敵だ。金が無限に溢れ出してくるからな。


 そう言えばまだ、今朝の新聞を読んでなかったな。葉巻を咥え、煙突の様に煙を吹き出しながら、新聞を開いた。


「エ、エリクサーのレシピが公開されただと⁉︎ クソ……早く転売しねぇと価値がなくなっちまう!」

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