採点
試験後、職員室にて新入生各クラスの担当教員が集まり、筆記テストの採点を行なっていた。
男性教員は追影とドーリスの2名。女性教員はカルナのみだ。
3人とも養成学校を卒業した元生徒であり、高ランクの冒険者達だ。
教員は人柄だけでは無く、超難関の教員試験を突破した者達から選ばれる、文武両道の精鋭の集団だ。
「今年は中々骨のありそうな奴がいるな、追影先生のクラスはどうですか?」
「まだ採点中でござるが、今の所ギーシュ・プラネックス殿が23点で『占い師』の称号に、魔法適性『B』ランクと好成績でござるな」
筆記テストの用紙には、名前の隣に自身の適性才能を記入する欄がある。
適性才能に自信のある生徒はその欄に記入するが、特殊な才能を隠したい場合や適性の無い者もいるので、生徒に配慮し空白のまま提出する事も出来る。
採点の話で盛り上がり始めた追影とドーリスに、カルナも混じる。
「23点ですか? それは好成績ですね! 私の担当した生徒だと……成績はともかく、適性に優れた生徒もいましたよ。この子の用紙を見て下さい」
一一一一一一一一一一一一
『名前』:レオル・アーガイル
『種族』:人間
『性別、年齢』:男 14歳
『身体能力』:接近戦闘 B
『魔法適性』:現代魔法 E
【古代魔法を簡易化させ、劣化させた現代の魔法】
『特殊スキル』 狂戦士化
【数十秒のみ、身体能力を1ランク引き上げる】
『ステータスカード称号』:狂戦士
一一一一一一一一一一一一
「カルナ先生のクラスの生徒ですか? まだ14歳で接近戦闘『B』とは……ん? 狂戦士化だと!? 接近戦闘『A』ランクまで跳ね上がるのか……化け物だな」
高ランクの冒険者、所謂『A』ランクの冒険者であっても適性才能が『A』ランクとは限らない。
冒険者ギルドで受けられるクエストには、ランクが存在する。
『E』ランクの冒険者であれば、1ランク上の『D』ランクのクエストの成功実績を積み重ねて行く事で、冒険者カードのランクは上がって行く。
しみじみとミルクティーを味いながら、若き日の思い出に浸る教員達。
「ドーリス殿、時代は変わって行くでござるよ。
我等の時代は、初めは『C』ランクあれば優秀であったでござるからな」
「懐かしいですね、それが今じゃ当たり前のように『B』ランクですからね、私も負けてられませんよ!」
雑談も収まり、職員室に採点のペンの音が響く。
「次は、ドミニク・ハイヤード殿か……いまいち掴み所のない生徒でござったな、マルバツにんにんと。ブフゥー!!!」
水遁の術の如くミルクティーが吹き出された。
「追影先生! どうして急に忍術を!? ミルクティーが! 机が汚れてますよ」
「先生! 雑巾をどうぞ!!」
カルナが持って来た雑巾を受け取り、汚れた机を綺麗に掃除して行く。
「も、申し訳無いでござる……『学者』の称号。それに反しこの回答は何でござるか……」
『問42、幻獣・八岐大蛇の倒し方を述べよ』
x 『答』首を絞め落とす。
○『正』冒険者ランク『A』の10人以上のパーティで各方向から囲み、捕縛の魔法で動きを封じ、弱点である水属性の上級魔法で徐々に弱らせて行く、討伐には最低2日は必要と言われている。
学者の称号を持つ天才生徒の、問題用紙に書かれた珍回答に疑問を感じる教員達。
「ふざけて書いたんですかね? なんで適性才能を記載しないで提出したのかしら? 学者って事はランク『B』以上の才能があるはずなのに……」
「35点!? モンスター討伐問題以外、全問正解か? まさかこの生徒も学者で適性ランク『A』だったりしてな!」
職員室に、教員3名の笑い声が響いた。
「なんの冗談ですか、ははは!」
「ははは!」
「はははでござる!」
学者の適性『A』ランクと言えば、この世界では賢者と言われる天才中の天才だ、まず間違いなくそんな14歳は存在しない。
※
合成室から出る頃には、時計の針はもう4時を回っていた。
寝室に戻り完成した白い杖と魔法のアイテムを鞄に詰め、ベッドにボフン!っと飛び込んだ。
仰向けになりステータスカードに魔力を通すと、魔法適性を確認する。
「うーん、何回見ても『SSS』ランクだな! はぁ……もう4時か、明日に備えて寝よう、おやすみカレン」
ベッドに横になったまま部屋に灯る魔法の光を消すと、ゆっくりと瞳を閉じる。
眠い……すぐに眠気が襲って来た……