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新薬販売 ルイスside

「まさか廃部寸前の研究会に、主席と次席が入部してくるだなんて……これこそ奇跡だわ!」


 期待に背中を押され、早足に廊下を歩く。

 ドミニク君とアイリスちゃんの2人が妖精言語部に向かっている間、私は廃部取り消しの交渉をする為に校長室へと向かっていた。


「失礼します! 薬草研究会顧問のルイスです。入部希望の書類を持って来ましたので確認をお願いします」


 扉を開けると、真正面の机からルーシス校長がこちらを眺めていた。その背後、いつもの立ち位置にイルベル教頭が居た。


 校長は頬杖をついてるだけ、イルベル教頭に至っては本を読んでいた。

 いつもあの定位置に居るわね……この2人本当に仕事してるのかしら? まっ、そんな事、絶対聞けないけども。


「ふむ……思ったより早かったのぅ、見せてくれ」


 ルーシス校長はすんなりと入部届けに目を通し、何かを確信した表情で後ろにいたイルベル教頭に頷いた。


「やっぱり? 私の予想通りドミニク君とアイリスちゃんかな。廃部寸前の研究会に2人の天才が同時に入るだなんて……今年の薬草研究会は運に恵まれているね」


 何で知ってるのかしら? まぁいいわ。首席と次席が部に入ったんだから、薬草研究会を簡単に廃部にするわけにはいかないわよね。

 そう安心しつつ、本題を切り出してみる。


「あの……それで、廃部の話なんですけど……新入生が、しかも天才の2人がうちの研究会で薬草と調合の技術を学びたいと申し出ているんです。教育機関として、少年少女の学びたいと言う気待ちを大事にするべきではないでしょうか?」


「その件じゃが……3日後に王都で開催される『学会』に我々も参加する事になった。そこで、薬草研究会には新薬のレシピを練って貰いたい。学会が上手くいけば廃部は撤回じゃ」


 へ……学会? ナニソレ。


「えぇ⁉︎ そんな話、聞いてませんよ……実績を残せば廃部は取り消しだって前に言って他じゃないですかぁ。簡単に新薬のレシピが出来たら苦労しませんよぉ……」


 うぅ、天才2人が入ったのを良い事に、部活存続のハードルが上げるつもりね……やり方が汚いわ……人の事は言えないけども。


 イルベル教頭が学会の知らせの紙を持ち、私の顔の前に突き付けな。


「知っての通り、学会とは様々な研究の成果を発表し合う場だ。調合部門は『エリクサー』の開発に力を入れている。ルイス先生も知っていると思うがエリクサーには、1滴だけで『100万G』の価値があるんだ。彼等なら調合の為のレシピ作りに少しは貢献できるかも知れない」


 簡単に言ってくれるわね。エリクサーなんて出来るわけないじゃない……私が何年、エリクサーの研究に費やして来たと思ってるのよ。

 何人もの研究者がエリクサーを完成させる為に、危険地帯に行って命を落として来た。もう既存のハーブは殆ど調合され尽くしていて、新たな新薬を作るなんてのは無謀なのよ。

 怒鳴ってやりたい気持を抑え、冷静に口を開いた。


「分かりました、一応、2人に相談してみますけども……期待はしないで待っていて下さい。エリクサーは、偉大なる調合師達が命を懸けて研究してきた神聖薬です。そんなに甘くありません」


 2人の反論を待たずに、早足で校長室を後にした。


「ルイス先生、怒っていたね」


「ふむ……ああ見えて奴は研究熱心な所があるからのぅ……少し維持が悪かったか……」


 ふぅ、こんな気持ちじゃドミニク君達に当たり散らしてしまいそうだわ……今日はもう家に帰ろう。学会まで日が無いけど、どうせエリクサー何て完成するわけ無いんだし。

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