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魔神と養成学校

 校舎裏でのケルベロス騒動について、ルミネスから一通りの事情を聴き終えた。


 養成学校への謝罪、魔力欠乏症、そしてケルベロス……。

 この山積みになっていく問題を纏めて打破するには、ルーシス校長に謝罪して協力を仰ぐ他なかった。


 ケルベロスに占領されてしまった家を転移魔法で脱出し、誤解を解くべく養成学校に向けて歩き出した。


「とりあえず、商店街に寄って菓子折りでも買っていこう。手ぶらで行くよりも印象が良くなるからね」


「にゃぁ……人間とはややこしい生き物なのですね」


 時刻は丁度お昼を過ぎた辺りで、今朝よりも気温は少し下がっていた。

 訓練場の氷は溶けたかな? 火のエレメンタルの流れも落ち着きついて来てるな。


 ルミネスを連れていつもの通学路に入り、商店街にあるオシャレな菓子屋さんに入った。店内には色鮮やかなフルーツとお菓子が並んでいる。


 壁に掛けられた時計を見てみると、午前の授業は終わって、もうとっくに部活の時間になっていた。帰宅部の生徒もいるし、僕達が外に居ても別におかしくはない。


「ルーシス校長が好きなお菓子ってなんだろう? 甘い物は食べないよな……どう思うルミネス?」


「バナナとかで良いんじゃないですか?」


 駄目だろ……ルミネスの頭の中で『校長=ゴリラ』の方程式が完成しているようだ。

 考えてもいい案が出ないので、仕方なく店員さんにオススメを聞いてみる。


「このお店でオススメの菓子折りってありませんか?」


「菓子折りなら、こちらのバナナがオススメですよ」


 結局、バナナか……。


 愛想の良い女性店員さんがオススメしてくれたのは、四角い高級な箱に入ったフルーツ入りモナカだった。月の形のデザインが綺麗で高級感が溢れている。


 バナナの菓子折りって普通なのか? いや、エリシアスでの常識を僕が知らなかっただけか。

 うーん、どうやら校長の事で、色々とナイーブになり過ぎてるのかも知れない。


「じゃあ、これでお願いします」


「毎度で〜す」


 1200Gで買った菓子折りの袋を持ち、再び養成学校へと歩き出した。


 ※


「美味い……美味すぎる! このお菓子はなんじゃ……中に入っているフルーツの味が堪らんぞぉ!」


「商店街で買ってきました。えーっと、使用されているフルーツはバナナですね」


 不吉な予感は良い方向に転び、ルーシス校長は上機嫌に謝罪の菓子折りにかぶりついていた。その隣で、眉間にシワを寄せたイルベル教頭が、僕を冷たい目で見ている。


 ルミネスはと言うと、校長室の外で待機して貰っている。

 ルミネスはルミネスなりに良くやってくれたと思うので、怒られるのは僕だけで十分だろう。


「今回の事件について、私は重く考えている。ドミニク君には複数の使い魔を森に放置してしまった理由と、私の眼鏡が壊れてしまった理由についての反省文を、原稿用紙300枚で提出する罰を科そうと思う」


 ……イルベル教頭の眼鏡が無い。あの時、爆破の衝撃で壊れちゃったみたいだな……まぁ、教員爆破が反省文でチャラになるなら有り難い話か。


「イルベル教頭、こやつも悪気があった訳ではあるまい……その辺りにしてやってくれ。それよりも、この傷について説明してはくれぬか?」


 そう言いながらルーシス校長が武道家の服をはだけさせると、引っ掻かれた様な背中の傷が露わになった。


 森で戦った時に、リフレクションライトニングが直撃した所か……ほんの少しだけど腫れてるな。


「あの魔法はなんじゃ? このワシの魔法耐性を貫き、肉体に傷を負わせた魔法に興味があるのじゃ」


 魔法耐性の崩し方について聞いてるのかな? それなら簡単だ。


「ええっと……稲妻の魔法は光速で敵に被弾するので、そこに魔法耐性を削り取る物理的な力が生まれるんですよ。今回はたまたまそうなっただけですけどね」


「ぬぅぅ⁇」


 何だこの反応……。

 イルベル教頭がおでこを抑えながら、大きなため息をついた。


「はぁーー……間違っては無いんだ。確かにそれが魔法耐性を崩す正しい理論なんだが、それをさも当然の様に話す君の態度は非常に悩ましいね……」


 えぇ……魔法耐性を崩せなきゃ、どうやって石板のゴーレムを倒すんだ? 殴って倒す手もあると言えばあるけど。


 ルーシス校長が椅子に座りなおし、いつもの頬杖のポーズで再び口を開いた。


「さて、そろそろ本題に入るのじゃ……ケルベロスの暮せる場所については、養成学校の魔獣小屋を提供しようと思う。あそこには広い牧場もあるしのぅ」


 小屋? そう言えば、委員長の仕事に魔獣小屋のダチョウの世話ってのがあったような……。


「もう1つはお主の使い魔、ルミネスの魔力欠乏症を治療する方法は無いかと言う事じゃったな?」


「はい、ルミネスは長い間、宝玉に封印されていたらしく、現代の魔力に適応できてないみたいなんです。何か魔力を適応させる良い方法はないですか?」


 魔神に関する資料をパラパラとめくりながら、イルベル教頭が答えた。


「……調べてみたが今の所は無い。しかし、ルミネス君が宝玉に封印されていたと言う話を聞くに、あの子が魔神の類である可能性は高い。我々の管理下に置いた方が治療法も早く見つかると思うんだが、どうだい?」


 管理下……? どう言う意味だ。


「うむ、決定じゃな……」


 養成学校のトップ2が納得した様子で頷き合い、僕に向かって高らかに宣言した。


「本日を持って、ドミニク・ハイヤードの使い魔、ルミネスの養成学校入学を許可する‼︎」


 は? はぁぁ⁉︎

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