現代魔法と得意属性4 〜ギーシュside
僕の首元に剣を突き付け、威嚇してくるバカ達が居た。
「おいギーシュ、またドミニクに絡んでるのかよ。決闘して負けたくせにみっともねえな」
「そうだそうだー! ドミニクに絡むなー」
「ギーシュ君。良い加減にした方が良いんじゃないかなっ……?」
ちっ! レオルの奴、すっかりドミニクの舎弟に成り下がりやがって。それに、リーシャちゃんまで僕の悪口を……!
「き、騎士気取りは引っ込んでろ! ここは冒険者の学校なんだぞ!」
地団駄を踏みながら図星を突いてやると、レオルは唖然とした顔を見せた。
実際の話、剣を背負ったまま校舎を歩く変人は、忍者先生を除けばこいつくらいなもんだ。
狙いはお前じゃないんだよ……さぁ、出て来いドミニク!
「良いよレオル。ギーシュは僕と勝負がしたいみたいだね」
レオルの肩を掴んで制止させ、奴が僕の前までゆっくりと歩いてきた。
「ははっ、やっとやる気になったか」
「まだ懲りてないみたいだね、お坊っちゃまくん」
こいつは良い子ちゃんだからな。適当に挑発してやればすぐに乗ってくる。
忘れもしない……実技の授業があったあの日。
校舎裏の森で、僕はドミニクと召喚魔法による決闘を行った。
僕の使い魔にはシルバーウルフが1頭いる。パパに魔獣ショップで買って貰った血統書付きの凶暴な狼だ。
シルバーウルフの戦闘能力は、ショップで売っている魔獣の中でも上位に位置している。
貧乏人が僕より高い魔獣を買える理由も無く、どうせ小型犬でも召喚するのだろうと思っていた……だが、思いもよらない所から邪魔が入った。
何処からともなく現れた獣人の女が、いきなり決闘に割り込んで来てケルベロスを召喚し、挙句に僕のシルバーウルフまで奪ってしまった。
圧倒的な体格を持つ凶暴なケルベロスと、シルバーウルフに襲われた僕は決闘に負け、リーシャちゃんにもフラれ、惨めな思いをする事となってしまった……。
卑怯な奴だぜ……まさか、僕との決闘を恐れるあまりに、獣人の女を金で雇ってたなんてな。
あの時、奴が使っていた転移魔法もどうせトリックか何かだ。隠蔽の魔法で姿を眩まし、転移して来たかの様に見せかけたって所だな。
つまりだ、結論から言うとドミニクは弱い。
あいつは上手くトリックを使い、自分が強い様に見せかけているだけなんだ……攻撃魔法による真っ向勝負を仕掛けていれば、勝っていたのは僕だった筈だ!
「受けて立つよギーシュ。その代わり、怪我しても文句いうなよ」
訓練用の杖を手に持ったドミニクが、珍しく真剣な表情で迫ってきた。
「ギーシュ殿は、委員長決めに納得がいってないでござるな? であれば、この勝負に勝った方をこのクラスの委員長に任命するという事でどうでござるか?」
「別に僕は委員長とかどうでも良いんですけどね……追影先生は止めないんですか?」
「我はその必要が無いと判断したでござる。それに、この学校に決闘禁止のルールはないでござるよ。にん!」
忍者先生も乗り気のようだ。残念だが、今更やめようなんて甘い話だ。この学校には決闘好きな連中が多いらしい、みんなも良い感じに盛り上がって来たぜ。
「またギーシュとドミニクが決闘か!」
「懲りねえなぁ……カルナ先生に勝った相手に勝てるわけないだろ」
「あいつがレオルと戦ってる所を見てないのか? 杖が音速でだなー……いや、何でもない」
けっ、言ってろ。お前らは奴のマジックにハマって、勘違いさせられてるんだよ。
ここでドミニクをコテンパンにして、みんなの目を覚まさせてやる。
「ルールは簡単だ。どちらの『捕縛』の魔法が優れているか追影先生に判定して貰う。勿論、あの氷付けのターゲットを壊したら負けだ。敵を捕まえる『捕縛』の魔法で競い合おうぜ」
「いいよ、僕も捕縛の魔法は得意な方なんだ」
澄まし顔で余裕を見せているが、この勝負は僕が圧倒的に有利だって事に奴はまだ気付いていない。
あの木の的は、ブリザードの魔法によって氷漬けとなってしまっている。
つまり、的を捕縛する為には、覆っている氷を溶かしてから木を露わにする必要がある。
僕の得意属性の魔法、『火の捕縛』は氷を溶かし、尚且つ中の木を縛り上げる事が可能だ。奴の得意属性は知らないが、どうせろくなもんじゃないだろう。
ぐへへっ、鼻からこの勝負は僕に軍配が上がると決まっているんだよ。
追影先生が謎の笛を吹き、それを合図に勝負は始まった。
《プオォォォ》
「まずは僕からだ! ドミニク! お前は指を加えてみてやがれ」
氷漬けのターゲットは5つ、僕は複数詠唱は使えないが、このぽっちゃりボディに蓄積された『魔力量』は伊達じゃない!
標的を3つに絞り、魔法陣を描いていく。
「現代魔法・『火の捕縛』‼︎」
掌から飛び出した火の縄を上手くコントロールして氷の柱に巻きつけ、そのまま魔力を送り込んでやるとジワジワと氷が溶け始めた。
「溶けてるぞ! みたかー! ははっ!」
続けて魔法陣を描いていき、狙いを定めた3つの的の氷を溶かし終えると、一気に捕縛の魔法で引っ張り上げ、地面から引き抜いた木の的を3つ纏めて縛り上げた。
「どうだ! 僕の勝ちだ! ははっ」
「ギーシュの癖にやるな……これはどっちが勝つか解らなくなってきたぞ」
「認めたくないが、ギーシュにしては凄いな……」
みんな僕に尊敬の眼差しを向けている。こんな芸当が出来るのは、この学校でも僕くらいのものだぜ。
忍者先生からも拍手の音が聞こえきた。
「見事でござるな。ぬぅ、これは少しドミニク殿に不利な勝負でござったか……」
相変わらずドミニクの奴は、訓練用の杖をまじまじと観察しながら幼馴染と雑談している。
さて、次は奴の番だ……僕に負けて、どんな言い訳をするか見ものだぜ。




