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現代魔法と得意属性2

「ドミニク殿。一体、何を隠しているでござるか?」


 僕の目を真っ直ぐ見ながら、追影先生が問いかけてくる。


 額当てとマスクに隠れて目元しか見えないけど、堅実さらしきものが先生から伝わってきた。


 この人を信用しても良いんだよな……?


「えっと……僕の得意属性は雷でした」


「なっ⁉︎ 雷属性でござるか‼︎」


 大げさなリアクションを取った追影先生に、教室中の注目が集まった。

 属性くらいでそんなに驚かなくても……また目立ってるし。


「雷属性なんて聞いた事ないよ……光属性の間違いじゃないの?」


「ハ、ハッタリだ! また僕より目立って女子に好かれようとしやがって」


 みんな似た様な反応だ。やっぱり、属性値は黙っていた方が良さそうだ。


 熱心に現代魔法の書を読んでいたレオルが、遠くの席から声を掛けてきた。

 

「先生ー。ドミニクが持ってる雷属性って珍しいんですか?」


「うむ、雷属性は非常に珍しい属性でござる。光属性の上級魔法に『稲妻(ライトニング)』の魔法が位置付けされている事から、光属性の上位属性とも考えられているでござるよ」


 ライトニングが光属性の上級魔法? 全く別物の魔法なんだけど……。


 そんな馬鹿なと疑いつつ、現代魔法の書をめくってみる。


 確かに、『ライトニング』の魔法が光属性のページに分類されてるな。かなり規模を落として弱体化されてるし……しかも、雷属性の魔法については一切書かれていない。


 この本の著者は誰なんだ? 学校用の教本のようだけど……それとも、現代魔法の理論ではそうなのかな?


 率直な疑問を先生へと投げかけてみた。


「どうしてこの本には、雷属性の魔法が載ってないんですか? たまたま僕が珍しい属性を持っていただけで、他にも雷属性を持っている人は居るんですよね?」


「雷属性の魔法は、全てを焼き尽くす死の魔法でござるからな。光速で放たれる稲妻は回避不能な上に、殺傷力も非常に高い。殺しに特化した魔法は教科書には載っていないでござるよ」


 なるほど、魔獣から素材を回収する冒険者にとって、敵を跡形も無く葬り去るような魔法は好まれないんだな。

 頷く僕へ、追影先生は申し訳無さげに言葉を続けた。


「それと、ドミニク殿の他に雷属性を持っているものも居るにはいるでござるが……『人』ではないでござる」


 へ……人じゃない⁇


「冒険者達の間では有名な話でござるよ。雷属性を唯一保有していたとされる『魔獣』は、エリシアス・ライトニングドラゴンと呼ばれる竜族だけでござる」


 ……なんと、僕の体には竜族と同じ属性が流れてるらしい。そんな話、聞きたくなかった……。


「もしかして、ドミニク君って魔族なんじゃないの?」


「怪しいと思ってたんだよ! 人間にケルベロスが操れるわけない!」


 クラスのみんなも予想通りの反応を見せ、あれやこれやと噂し始めた。


 委員長の次は魔族扱いか……心当たりはないけど、魔神の使い魔がいるので否定し辛い。


「にん! 誤解してはならぬ! 人間の肺に毒耐性が現れるのを知っているでござるな? 魔獣に似た能力を持って生まれる人間もいるでござる。ちなみに、ライトニングドラゴンの稲妻は、一瞬で人間を黒焦げにしていたと恐れられているでござる」


「「ひぃぃぃ」」


 一応はフォローしてくれたみたいだ。余計な補足説明が無ければ完璧だったのに……。

 僕の席から、みんなの机が遠ざかった気がする。微動だにしなかったリーシャだけは僕の味方だ。


「では、属性も分かった所で、次は初級魔法の実演を行おうと思う。今から訓練場に移動するでござる。教室で魔法を使うと危険でござるからな!」


 実演か、やっと授業らしくなってきたな。


 席を立って教室から出て行こうとする生徒達の間を縫って、カレンがこっちにやってきた。


「ドミニクー。魔法の訓練だって、楽しみだねー」


「うん。カレンの得意属性は何だったの?」


 ゴソゴソとポケットを漁り、ステータスカードを取り出したカレン。いつもの如く、何故か誇らしげだ。


「私は無属性の0.00%だったよー」


「そっか……」


 ある意味カレンも凄かった。


一一一一


 広場のすぐ隣にある訓練場に、Aクラス28名でぞろぞろと集まっていた。

 足場には芝生が敷かれ、丁度、僕達の首くらいの高さの木の棒が何本か立てられている。


 カレンが、木の棒に貼られた見覚えのあるシールを発見して首を傾げた。


「これって、実技の時に使ってたシールだよねー。何で棒に貼ってるの?」


 実技の授業で肩に貼ってたシールだな。


「そのシールには『衝撃吸収』の魔法陣が描かれてるからね。木の棒が受けるダメージを吸収させてるんじゃないのかな」


 養成学校の訓練場にしては少しチープだな。室内とまでは言わないけど、せめて屋根くらいあっても良さそうだけど。

 いや、制服のまま砂漠でダチョウレースを行う学校に何を期待しているんだ僕は……芝生があるだけマシじゃんか。


 訓練場に隣接された魔法の研究室から、追影先生が実演用の魔導具を運んでくる。

 いつもの忍装束に加え、ヒラヒラとした黒の短めのローブを羽織い、腰の布に小型の杖が刺さっていた。


「先生が杖を持ってるなんて……違和感が拭えない……」


「魔導忍者だ!」


「忍者魔法師だ!」


 さすがだ。杖を持ってるだけで変な異名が増えていく。


「にん。我は魔法陣を描くのがあまり得意でない故……困ったものでござる」


 本人は隠してるつもりかも知れないけど、カレンの故郷、『忍の国』の出身者である追影先生は、一族の特性により、魔法陣を描かなくても魔法が使える。

 あの杖もローブも、僕らに合わせて用意してくれたものだろう。


 リーシャが、訓練用の杖を持って何か言いたそうだ。


「追影先生も魔法の授業を担当してるんだねっ。てっきり、カルナ先生かイルベル教頭が教えてくれるのかと思ってたよっ」


「カルナ先生はともかく、イルベル教頭も魔法が得意なの? 僕もよく知らないんだけど」


 イルベル教頭は、いつもルーシス校長の隣で腕を組んで立ってるイメージしかない。あと眼鏡が怖い。

 カレンが自信満々で話に割り込んできた。


「イルベル教頭って言ったら、ルーシス校長のSランクパーティにいた賢者的な魔法師だよー。ちなみに、ルーシス校長と同い年なんだってー」


「「同い年⁉︎」」


 珍しく、リーシャと声がハモる。

 あの二人が並んでいると、親子と間違えてもおかしくないくらいに見えるけど。


「とても、あの校長と同い年には見えないね」


「魔法の力で、あんな風に若さを保ってるのかなっ?」


 同時にカレンが賢い事にもビックリした……。

 片手で眼鏡を抑えながら、イルベル教頭に関する知識を流暢にペラペラと喋っている。


 報道に関係する雑務処理の称号を持っているカレンは、普通の人よりも情報収集能力が高いそうだ。


 確か、ギルド受付嬢のユリアさんもそうだったよな? 将来が心配だ……。

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