現代魔法と得意属性1
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現在2章改稿中でございます!
追影先生が手裏剣型のチョークを使い、黒板の真ん中に大きく『冒険者ギルド』と書いた。
「冒険者ギルドとは、凶悪な魔獣に対抗する為に作られた組織でござる。それが現代では形を変え、生産クエストや探索クエストを冒険者に提供する身近な組織へと変わっていったでござる」
先生の言った通り、ギルドで受注できるクエストは素材入手を目的としているものが殆だ。
エリシアスは神聖結界に守られているので、冒険者のイメージとしては魔獣と戦う『討伐』よりも、素材や宝を探す『探索』の方がしっくり来る。
一応、ギルドからクエストを受けなくても探索は行えるけど、よっぽどの穴場でもない限り、ギルドの管理下にある場所の方が危険も少なくて効率が良い。
僕が半壊させてしまった雪山の洞窟の様に、冒険者ランクによって入場制限が設けられている場所もあるしね。
「今もその名残があり、採取クエストよりも、討伐クエストの方が危険が多いとされているでござる。つまり、生産クエストだけこなしていても冒険者ランクは上がらないでござる。高ランクの冒険者になる為には、修行を積んで強くなる必要があるでござるよ」
うーん、極端な話だな。
採取クエストであっても、魔獣に襲われないわけじゃないし、一概に採取クエストが簡単だとは言えないと思うけどね。
現に僕も、ハーブを採取してる最中にレッドドラゴンを倒したわけだし……。
「戦いに偏った話をしてしまったでござるが、この養成学校では戦闘だけに捉われない様々なスキルを学べるでござる。なりたい自分を目指すのもまた冒険者としての生き方でござる」
なりたい自分を目指す、か……。
先生の言葉に感銘を受けた様子のレオルが、剣を抜いて立ち上がり、リーシャが調理鍋を取り出して決意の拳を強く握りしめた。
「なりたい自分だと……! よし、俺は最強の騎士を目指すぞ」
「私は料理人になりたいっ」
このクラスは影響を受けそうな奴が沢山いるから心配だ……。っていうか、追影先生がソレを言うといろんな意味で説得力が凄い。
他の生徒達も納得した様子で、先生の話に耳を傾けていた。
「では、今からみんなに『現代魔法』を教えようと思う。魔力は力の源でござる、これを自在に操れるようにならなければ冒険者としては半人前でござる」
そう言いながら、先生が懐から書物を取り出した。
表紙には、青い魔法陣のイラストが描かれている。
あれは、魔法の書だな。
「では、『現代魔法の書』の1ページ目を開くでござる」
先生に言われた通り、新品の魔法の書の表紙をめくり、最初のページを読んでみる。
魔法の書には、著者の『魔法理論』と『魔法陣』が簡易に描かれている。これはあくまで参考にするだけであって、実際に描く魔法陣は自身の感覚に頼るのが普通だ。
「現代魔法とは不完全な魔法であり、古代の魔法陣の一部を解読して再現し、規模を落とした魔法の事を言うでござる」
不完全な魔法か……僕はそうは思わないな。
現代魔法は規模が小さいものが多いけど、圧倒的に魔法陣が簡単で発動が早い。
更に言えば、『解析』『検索』『解除』などの現代魔法は、同じ光の魔法に細かい応用を効かせて分岐させた魔法だ。
規模が小さい魔法だからこそ、こう言った応用が可能となる。僕が使っている『初級魔法』も、現代魔法をベースに魔法陣を改良し、性能を上げた魔法だしね。
魔法にはランクがあり、その消費魔力量によって初級、中級、上級の3つのランクに分けられている。
人間が産まれた時から持っている『魔力量』は、潜在能力を越えて増やすのが難しく、体が成長しようが魔法を学ぼうがほとんど変化しない。
「……なるほど、魔力量が低いと使える魔法が限られるんだな」
「その通りでござる。残念ながら、魔法は才能による所が大きいでござる……しかし、魔力量が少ない人であっても、効率良く魔法を使う方法を覚えれば良いのでござる」
ついつい独り言が出てしまった……。
ルミネス曰く、僕の魔力量は魔神を凌駕するほどらしいけど、実際はどうなんだろう?
「追影先生。何で現代人には古代魔法が使えないですか?」
生徒の一人が先生へと問いかけた。
初授業で、しかも魔法の話と言うだけあってみんな真剣だな。
僕も色々と調べてみたけど、その原因については、どの魔法の書にも詳しく書かれていなかった。
「その理由については未だ解明されていないござる……古代と現代では『空間魔力』、所謂、空気中に含まれる魔力の質と量が違うからだと言われているでござる」
予想通り、追影先生からはテンプレ通りの言葉が返って来た。
「さて。これから皆の『得意属性』を調べて行くでござる。自分の得意な属性を知れば、戦いや生産スキルの効率を上げる近道になるでござるよ」
『属性』は生物の体内に複数存在し、その中で最も量の多い属性のことを『得意属性』という。
自分の得意属性の魔法を使えば『魔力変換効率』が大幅に上がり、魔法を使った際に空気中の魔力が大量に流れ込んできて燃費が上がる。
この辺りは、古代魔法の理論とほぼ変わりないな。
カレンが手をまっすぐに上げて、先生に質問した。
「先生ー。私、魔力が無いんですけどー」
「勿論、大丈夫でござる。例え魔力量の少ない人間であっても得意属性の魔法であれば、いずれ上手く魔法を使える様になるでござるよ。では早速、ステータスカードを取り出すでござる」
うーん。カレンはダークスピリットの力を借りれば、精霊クラスの魔法くらいなら発動させられるけどね。
先生が懐から取り出したステータスカードを横にフリックすると、カードに表示されている文字が切り替わった。
「この状態でカードに魔力を込めると、属性の量が数値で表示されるでござるよ。1番数値の高いものが得意属性でござる」
なるほど。どうやらステータスカードには属性を調べる効果もあるようだ。まぁ解析の魔法が込められてるわけだし当然か。
僕もカードを取り出してフリックし、試しに魔力を込めてみた。
「表示された! えーっと……」
一一一一一
『属性』雷 90000000%
火 800000%
水 800000%
風 800000%
闇 800000%
光 800000%
一一一一一
僕の得意属性は『雷』なのか。
確かに稲妻系統の魔法は得意だし、微弱な雷くらいなら、ちょっと踏ん張れば全身から自然発生させられるしね。
属性値は『90000000%』か……高いのか低いのかわからないな……。
教室を見渡して、他の生徒達の様子を伺ってみる。
「すげぇ! ギーシュさんの得意属性は『火』だぞ!」
「ぱねぇよ‼︎ 養成学校の火炎の魔法師とはギーシュさんの事だぜ!」
ギーシュのフォルムのどの辺がサラマンダーなんだ? 相変わらず騒がしい奴らだなー。
「グヘヘ! 僕は属性値は火の200%かー! まぁ、僕のパパはあのプラネックスの社長だから当然だなー!」
200%……? 結構低い数値で盛り上がってるけど聞き間違いだよね⁇ まさか僕の数値が高すぎるわけじゃないよな……。
盛り上がるギーシュの取り巻き達に向けて、追影先生が絶望すぎる一言を言い放った。
「ちなみに賢者と呼ばれる魔法士の属性値は『600%』ほどでござる!」
け……賢者で600%だって……? また僕のステータスカードがバグってるようだ……。
青い顔をしている僕を気にしてか、追影先生がさり気なく様子を見に来てくれた。
「……ドミニク殿? 何かあったでござるか?」
追影先生は、僕の魔法適性がAランクだと思ってるからな……秘密を守る手助けをしてくれる約束だったし、頼っても良いのかな……。




