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迷い猫とケルベロス2 〜ルミネスside

 朝から、浄化の魔法によって毒霧の消えた『無限の霧樹海』へと足を運んでいた。


「にゃーぁ……空気が美味いのだ」

 

 大きく伸びをして息を吸うと、ヒールを掛けられた様な心地良さが体を包む。


「ここはまるで聖域だな」


 空気中に溶け込んだ浄化の光が、あらゆる汚れを落とし、濁った水溜りですら透き通った色に変えていた。


 今頃、ドミニク様は養成学校で授業を受けている頃だろうか?


 宝玉の封印を解いて貰ったあの日から、私はドミニク様の使い魔となった。

 私に与えられた役割は、薬草室の掃除と研究に使うハーブの採取だけ……別にわがままを言いたい訳ではないが、どうせなら、学校までお供させて欲しかったのだ。


「使い魔と主人は一心同体、どこへ行くにも一緒の方が良いに決まっている」


 少し憂鬱な気分で岩に腰掛け、樹海の神聖な空気に浸っていると、3頭の『ポイズンフォックス(毒キツネ)』が私の匂いを辿って戻って来た。


「よーし、そこに整列するのだ!」


 私の指示に従い、キツネ達が行儀良く列を組んでいく。

 花竜の一件以来、何故かこいつらは素直になり、私に懐くようになっていた。


 この樹海を支配していた花竜を倒したからか、あるいは、私の主人がドミニク様だと知って怯えているのか……。何にせよ、前よりはマシになったのだ。


 足下に群がってくる3頭のキツネの頭には、それぞれ異なる種類のレア薬草が生えていた。


 探し出した薬草を食べたようだな。ハーブ種の魔獣は鼻が効くし、機動力も高い。食べた薬草を頭から生やす特性を利用すれば、採取クエストのお供に最適だった。


 やはり、使い魔は役に立つな。

 キツネ達の他にも、私は多種多様な使い魔を召喚魔法で呼び出す事が出来る。


『召喚魔法』は、魔法陣を描くか召喚刻印を刻んだ魔法石を通じて、特定の魔獣を呼び寄せる魔法だ。前提として、『召喚契約刻印』を自分の使い魔に刻んでおく必要がある。


 召喚の際には転移が強制的に行われる為、もしも、魔獣と主人が離れた場所にいた場合、主人からの予期せぬ召喚に頭を悩まされる事となるだろう。


 他にも、私が雪山でワイバーン共に使った『恐怖(テラー)』の魔法のように、精神に干渉して一時的に魔獣を操る方法もある。


「さーて、ハーブも手に入れたし、こいつらを強制送還して家に帰るのだ」


 指先に魔力の光を灯し、送還の魔法陣を描いていく。


「闇夜に消えゆく、漆黒狐の宴が始まり……ぬぅ……詠唱のキレが悪いな。良い詩が降りてこないのだ……」


 長らく封印されていたせいか、魔法の調子が悪い気がする……呪文を唱えるのはやめだ!


 集中し、一気に魔法陣を描いた。


「かえれ! 『ゲットホーム(強制送還)』」


 魔法陣から放たれた光は今にも消えそうで、頼りなさげにキツネ達を包んだ。


 おかしい……やはり、魔力の流れが不安定だな……。

 

「なっ⁉︎ 召喚刻印が消えていく……」


 キツネ達に刻まれていた歪な刻印が、シールの様に剥がれ落ちた。その一瞬の隙を突き、キツネ達が森の中へと逃げていった。


「召喚刻印が消えた途端に逃げ出すとは……ちょっとショックだな……。それより、魔法が上手く発動しなかったのは何故だ? 私の体に何か異変が起きている……」


 思い返せば、幾つか思い当たる節がある。


 召喚陣に私の体が引っ掛かったり、花竜との戦闘でいきなり魔力が消えてしまったり……。


 花竜の件に関しては、ドミニク様との魔力の繋がりが切れてしまったのが原因だが……考えてみればあの時、起死回生のチャンスはあった。

 魔力の供給源が無くなろうとも、即座に空気中の魔力を体内に取り込めば良かったのに、それすらも出来なかった。


「もしかして、私の体が空気中の魔力に適応できていないのか……?」


 だとすれば不味い……最近、召喚した使い魔は全て、刻印が剥がれている可能性がある。


 メイド服のエプロンの紐を結び直し、気合を入れ直して魔力を全身に込めた。


「飛行魔法を発動」


 体が羽のように軽くなり、フワリと体が宙に浮きあがった。


「養成学校の森まで行ってみるか……もしかしたらケルベロス達が残っているかも知れないのだ……とにかく、ドミニク様にバレる前に何とかしなければ!」

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