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新入生歓迎会 5

 太陽エネルギーにより、遺跡の入口に仕掛けられていた隠蔽(いんぺい)の魔法が解け、大きな鉄製の扉が出現していた。


「どうやら正解だっだみたいだね、中に入るよ」

「サクッと終わらせて、早くピーちゃんを助けに行こー」


 ※


 遺跡内部は大理石で作られていて、砂まみれの外観からは想像も付かないほど綺麗だった。

 ロビーの中央に置かれたファラオの墓を中心に、冒険者用の商店やギルドの受付が円形に配置されている。


「怖っ、お墓がある……て言うか、何でギルドの受付があるの?」

「この遺跡がギルドの管理下にあるからだよ」


 遺跡に来た事の無いカレンは、不思議そうにロビーを見渡していた。


 ギルドの管理下にある遺跡では、広間をギルドのロビーに改装し、そこで調査隊が生活している。雪山の洞窟の様に、生活スペースを作れない所では、近くにキャンプ地を建てている事が多い。


 遺跡の入って直ぐの所で、ピクシー会長が僕達を待っていた。


「ピクシー会長、扉の仕組みは解き明かしましたよ」


「ええ、貴方ならお手の物でしょう? 今日は養成学校で遺跡を貸し切ってるから、気兼ねなくクエストを受けられるわ」


 ピクシー会長に案内され、ピカピカの大理石の通路を進む。確かに今日は一般の冒険者は居ないみたいだ。


 何かに興味を示したカレンが、僕の脇腹を肘でつついて来る。


「見てドミニク、カエルだ! ねえカエル!」

「カエルがどうしたの?」


 歩きながら前方に目を凝らすと、受付カウンターの向こうに、カエルっぽいローブを着た女性職員が見えた。


 確かにカエルだ! と言いたくなる、頭まで被るタイプのカエルローブだ。ユリアさんと同い年くらいに見えるけど、ギルドの受付は基本、変な人が多いな。


 受付の女性は僕達に気付き、満面の笑みで手を振っている。見た目通りの愛想の良い人だ。


「あららピクシーちゃん、まだ11時になってないのに、どうして扉が開いたの?」

「こんにちはケロリアさん。不思議ですね……それはさて置き、この2人の分のクエストを貰えますか?」


 会長の横に並び、続いて僕達も挨拶する。


「初めまして、Aクラスのドミニクです」

「同じくカレンです」


 ケロリアさんは机の下に片手を入れ、ゴソゴソと書類を探りながら話を続ける。


「へぇー、Aクラスなんて2人共優秀なんだねー。はい、クエスト用紙だよ」


 名前までケロケロしてるな、役割的には受付のユリアさんと一緒みたいだ。


 一一一一一一一一一


【養成学校特別・タイムアタッククエスト】


『受注者』:ドミニク・ハイヤード

     :カレン・宮野

     :ピクシー・ウォーロック


『魔獣情報』:キング・オブ・ファラオ

      :スフィンクス


『遺産情報』:ファラオの仮面 :ファラオの杖


【遺跡クリアタイム】一一一一


【入手アイテム】一一一一


【総合ランク】一一一一

 

 一一一一一一一一一


「このクエストは養成学校用に作った物だから、ギルドの報酬は出ないけどね。遺跡についてはクエスト用紙の裏に説明が書いてあるから読んで見てね」


 言われた通りに、クエスト用紙の裏面を確認してみる。


 書かれているのは、冒険者の基礎知識だな。


 遺跡は地下構造になっていて、洞窟と同じ様に貴重な素材や、宝を探索する事が出来る。


『洞窟』は自然により作り出された物だけど、『遺跡』は古代人が残した、現代の魔法の技術では再現できない人口建造物だ。


 遺跡地下は限りなく広く、魔獣を生み出す『生命の宝玉』が幾つも設置されている。そこから生み出された魔獣は、遺跡の魔力を吸って成長し、遺跡内でその一生を終える。


 遺跡の存在理由については諸説あるけど、遺跡は現代で言う所の家畜のシステムに近い物である、と僕は考えている。


「遺跡の地下に入るには、広間の奥にある転移の祭壇を使ってねー」


 ケロリアさんの説明を聞きつつも、カレンはクエスト用紙に夢中だ。


「遺産情報にファラオの仮面だってー、欲しいなー」


 物欲しげなカレンに、ピクシー会長が得意げに応えた。


「欲しいも何も、その仮面を探索するのが、今回のクエストの目的よ。

 閉会式で全員揃ってファラオの仮面を被る、それが歓迎会の恒例なのよ」


 なんだその恒例?? 想像すると気味が悪いぞ……


 一通り遺跡についての説明が終わり、転移の祭壇まで移動した。


 祭壇は養成学校にあった物と同じ、古代模様の石板が(まつ)られていた。


「2人とも気を張って行くわよ。これからが本当のタイムアタッククエストよ!」


「おー!」

「わーい!」


 気迫に満ち溢れた会長と共に、転移の祭壇に触れる。


 一瞬で視界が反転し、闇に包まれた。


 ※


 視界が戻ると、石壁に囲まれた、50m四方の砂漠の部屋へと転移していた。


 広いな……遺跡地下に潜ったと言うより、別の空間に転移したみたいだ。


「天井が無い、それに太陽が見えるよ」

「本当だ! ここって遺跡の中じゃ無いの? 外に出れるのかな?」


 試しにカレンが真上の太陽に向かって石を投げると、見えない壁に弾かれ落下して来た。


「戻ってきた! おもしろーい」

「カレン、遊んで無いで先に進むよ」


 歩き始めた僕達を、ピクシー会長が手で遮った。


「待ちなさい。2人とも向こうを見て見なさい」


 会長の指差した先、部屋の中央辺りに、1mくらいの古代模様の石板が重なる様に転がっていた。


「あの石板がどうかしたんですか?」

「あれはゴーレムよ、近付くと反応して襲ってくるわ」


 変だな……ゴーレムは術者の魔力操作によって動く魔導人形だ、魔獣とは違い洞窟等には存在する事は無い。


「ピクシー会長、あのゴーレムを調べてみたいんですけど、近寄ってみても良いですか?」


「良いけど、魔法耐性の強いゴーレムだから少し危険よ。何かあったら出口の細い通路まで逃げなさい」


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