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新入生歓迎会 3

 カルナ先生の放った拡声の魔法から、パーンっ! とタイムアタック開始の合図が鳴った。


「クエスト開始だ! 行くぞぉぉ!」

《クエー!》


 雄叫びを上げる生徒達に応え、ダチョウの群れが砂埃(すなぼこり)を巻き上げながら一斉に駆け出した。


「僕達も行くよ、カレンは振り落とされない様にダークスピリットの力を借りて」

「うん、お願いダークスピリット!」


《御意!》


 カレンが精霊石に魔力を込めると、ダークスピリットが暗黒の翼となって現れた。そのままピーちゃんの白い背中に乗り込み、しっかりと体毛を掴む。


 みんな動く気配は無いし、悪いけど先手は打たせてもらうよ。


 ピーちゃんの飛行魔法は、音速で飛べるだけじゃなく、別の特殊な魔法を組み合わせてある。


 他のダチョウに負けじと闘争本能を掻き立て、ピーちゃんが飛行魔法を発動した。


《グェー!!

  初級魔法(オリジナル)・『ノンストップ・マッハ(音速の暴走)』》


 シュバーン!! と、地上に巨大な竜巻を発生させ、勢い良く空へと舞い上がった。


 嵐に巻き込まれた生徒達が四方八方に吹き飛び、ゴロゴロと砂漠を転がっていく。


「何で竜巻が発生したんだ!? 逃げろ! 吹き飛ばされるぞ!」

「全員で防御の魔法を張るんだ! 急げ!」


 巨大な竜巻を取り囲む様に、上級生が防御魔法を展開して行く。


 無駄だよ、この魔法は全方位から炸裂する竜巻の魔法だ。発動してからどうこう出来る物じゃない。


「風がシールドの隙間を抜けてくるぞ! ここは危険だ!」

「こんなの、防御魔法で防げるわけない……」


 体を浮遊させるだけの飛行魔法では、絶対に音速まで辿り着く事は出来ない。僕がピーちゃんの飛行魔法に組み込んだのは、大気竜の上昇気流の攻撃魔法だ。


 足元で塵旋風(じんせんぷう)を炸裂させ、膨大な推進力を得る。これにより、音速の世界に突入する事が出来る。


 ※


 飛び立ってから一瞬で音速に到達し、マッハ2の轟音が砂漠に轟いていた。


《ゴオオオオ!!》


 音速で流れる景色の遥か前方に、大きな四角錐型の遺跡を捉えた。


 砂色の巨石で構築された、巨大なピラミッド型の遺跡が見える。あれが太陽の遺跡か?


「遺跡が見えてきた! ピーちゃん、もう減速して良いよ!」

「早すぎだよ、通り過ぎちゃうよー!」


《グォー! グォ? グオオ???》


 遺跡を目前にしても加速は止まらず、大きな白い翼から音速の風が吹き荒れ続ける。


 ピーちゃんの様子がおかしい、なんで減速しないんだ?


 あ……そういえば『速度制限(ブレーキ)』って、魔法陣に組み込んだっけ?


「……駄目っぽいね。カレン! 飛び降りるよ!」

「あわわ、仕方ないねー、ばいばいピーちゃん!」


《グェェ!?》


 高度200mの高さからカレンを抱えて飛び降り、マッハ2の音速で飛び去って行くピーちゃんを見送った。


《クエーー!》


 滑空しながらピラミッド型の遺跡を見下ろすと、数人の上級生が遺跡の周りを見周っていた。


 ズドンっと遺跡の前に降り立つと、記録係りの上級生が『時間測定機(ストップウォッチ)』の魔導具を持って駆け寄って来た。


「おーい! お前達、なんて速さだよ! ドラゴンに乗って飛んで来たのか!?」

「え? 普通にダチョウに乗って飛んできましたけど?」


「ダチョウって飛ぶの!?」


「測定器を見て! 歴代の区間最速記録が更新されたよ!」


 先輩達が測定器を見て騒いでる、好タイムだったみたいだな!


 でも、今は遺跡攻略を優先しよう。


 ピラミッドは、古代に砂漠地帯で暮らしていた一族が建てた構造物だ。高さ凡そ150m、加工された巨大な石を、四角錐状に積み上げて作られている。


 天界へと続く階段を思わせるその形状は、亡くなった王を埋葬し、その魂を天へと導く為だと聞いた事がある。


「カレン降りて、遺跡の入口を探そう」

「ゴール! ピーちゃん大丈夫かな?」


 遺跡の下部、胸の高さまである巨石に手を沿わせながら進むと、中央付近にピラミッド内部へと続く階段があった。


 カレンと共に、遺跡の正面階段を駆け上がり、すぐに足を止めた。


 扉が無い……どこから入るんだ? 一面に石壁が広がってる。


「扉がどこにも無い、ここが入口じゃないのかな?」

「なんでー、他に入口なんてないよ?」


 何も無い砂色の壁を調べていると、誰かの階段を登る靴の音が、ゆっくりと近づいて来た。


「記録更新おめでとう、その遺跡の扉は11時にならないと出現しないわよ」


 後ろを振り返ると、長いピンクのツインテールを優雅に手で払いながら、ピクシー会長が階段を登って来た。


 やばい……こんな所で会長に会うなんて。噴水の件を謝っとかないと!


「あの……ピクシー会長! この間は失礼しました」


 慌てて頭を下げるも、ピクシー会長は特に気にした様子も見せずに返して来た。


「いえ、先に手を出したのはジェイ君よ、貴方が謝る事では無いわ。それより遺跡の入口が無くて困ってるんでしょう?」


「はい、ピクシー会長は知ってるんですよね? どこから中に入れば良いんですか?」


 僕の問いかけに、会長は不敵に微笑み、試す様に口を開いた。


「これは探索の授業なんだから、自分で調べてみたら?」


 確かにそうか……簡単に教えてしまったら授業にならない。


 さっき会長は、11時になると扉が開くと言っていた。


 まだ1時間以上もあるな、ここで止まったらピーちゃんの犠牲が無駄になる……今すぐ扉を開く方法を考えないとな。



 一一一一一一一一


 区間・最速記録 『転移の祭壇~太陽の遺跡 30km』


【1位 】ドミニク・ハイヤード 〔記録:38秒〕

    カレン・宮野     〔同着〕


『移動方法』:ダチョウによる飛行。


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