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薬草研究会 3

 魔法陣は、魔力に含まれる『構成魔力数』の数値と記号で描かれる。


 これは古代魔法の書の、魔法理論のページに良く書かれている、魔法陣に関する初歩の理論だ。


 この数字は、魔法の発動、規模、属性等を表した物で、これを理解していれば、魔法陣を構成する『発動』の数字の部分だけを壊し、より簡単に魔法を解除する事が出来る。


 とは言っても、実際に描く魔法陣は術者の魔法のイメージの形をしているので、見た目だけじゃ構成魔力数を判断する事は出来ない。


 まずは魔法を解析する必要があるな。


「これだったら入学試験の方が簡単ですね!

 初級魔法(オリジナル)・『解析(アナライズ)』」


 空を切って迫ってくる水の竜巻に向けて、解析の光を飛ばすと、一瞬で魔力情報が頭へと流れ込んで来る。


 あの妖精魔法は、水と風に回転の推進力を与える無属性の要素で構成されている。これならなんとか解除出来そうだな。


「この状況で解析だと!? 魔法の使い方すら知らないのかお前!? 笑えるな、ハハッ」


 既に発動してしまった魔法を解除する方法は、1つだけある。


 解析した些細な魔力情報から、構成魔力数を組み立て、ジェイコブ先輩の放った妖精魔法と、全く同じ魔法陣を掌の上に再現する。


 もう時間が無い! 間に合うか……


「さぁ! 答え合わせですよ!

 初級魔法(オリジナル)・『合成』」


 再現した魔法陣を、水の竜巻へ放り投げて合成させる。


「理論上はこれで解除できる筈です! いきますよー!

 初級魔法(オリジナル)・『解除(キャンセル)!!』」


 一気に魔力を送り込むと、合成した魔法陣がパリーン!と崩壊し、水の竜巻が一瞬で消滅した。


 成功だ! 被弾するギリギリだったな……あれ? おかしいぞ。竜巻は消えた筈なのに、空間に魔力が残ってる。少し魔力を送り過ぎたかな?


「ばば、馬鹿な!? き、消えた! なんで発動した魔法が解除されたんだ!?」

「まさか、そんな事不可能よ……」


「ウォーターウインドに魔法陣を合成したんですよ。構成魔力数の全く同じ魔法陣であれば、既に発動した魔法にも合成できます」


 発動済の魔法に魔法陣を合成する事で、構成魔力数を持たせ、解除する。


 これがこの問題の答えだ。魔法理論の基礎だけど、既に発動した魔法から構成魔力数を導き出すのは、結構難しい。


「み、見間違いだ! 発動した魔法を解除出来るわけがないんだ……」

「構成魔力数……まさか古代魔法の理論の事を言っているの?」


 解除の魔法によって砕かれた魔法陣の欠片が、パチパチと弾け、行き場を失った僕の魔力が暴走している。


 あ……魔法陣の欠片が爆発しそう。


「やばい! 2人とも伏せてください!」


 僕が叫ぶと同時に魔法陣の欠片が閃光を放ち、シュバーン!と、芝生を抉る巨大な魔力嵐を巻き起こした。


「きゃああ!」

「うぉぉ!!」


 嵐に巻き込まれた生徒会の2人が、バッチャーン!と勢い良く噴水に突っ込んだ。


「ぶはっ、これはなんのつもりなの!?」

「1年がぁ! 生徒会に楯突くつもりか!?」


 怒ってる!? 2人ともずぶ濡れだしどうしよう……


「……アイリス! 給水タンクに水を入れたら走って逃げるよ!」

「うん! もう生徒会には構ってられないよ!」


 バシャバシャと、噴水から這い出てくる先輩達を放置し、噴水の水溜りから給水タンクに水を入れ、走って逃げる。


 これだけあれば十分だな、早く実績を重ねてうちの部室にも水道を取り付けてもらわないと!


「重いでしょ、僕が持つから貸して!」

「ありがとー、さすが男の子だね、力もち!」


 ※


 給水タンク一杯の水を手に入れ、息を切らしたまま部室へと戻って来た。ルイス先生は居ないな。


「ふぅ、酷い目にあった……」

「噂通りの人達だったね、ドミニク君は生徒会メンバーと前に何かあったの?」


「いや、僕も良く知らないんだ。詳しく話してくれないかな?」


 アイリスに生徒会についての話を聞いてみた。現在、生徒会メンバーはピクシー会長とジェイコブ先輩のみ。2人共、妖精言語部に所属し、生徒会を神と讃える信教者らしい。

 確かに、妖精魔法を使える人達は変わり者が多いと聞いた事がある。妖精と話せる事で、自分を特別な存在だと勘違いしてしまうのかも知れない。


 それにしても、酷い目にあった……また生徒会に絡まれない様に気をつけないとな。


「気を取り直して、調合を再開しよう。まずは水を魔法で聖水に変えるね。

 初級魔法(オリジナル)・『浄化』」


 給水タンクの注ぎ口から浄化の光を照らすと、水の透明度が増してキラキラと室内の光に反射した。


「完璧な浄化の魔法だね……全く汚れが残ってないよ」

「そう? 普通じゃないかな」


 聖水を透かして見つめるアイリスの隣で、再びレッドハーブをすり潰し、調合を開始した。


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