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鍛冶部 2

「あのフレバー先輩、どうして鍛錬の時に『物質変化』の魔法しか使わないんですか?」


 僕の問いかけに、レオルもフレバー先輩も不審な顔で返して来た。


「何言ってんだドミニク? 使わないんじゃなくて、使えないんだよ」

「レオルの言う通りだぞ、魔法を2つ同時に使うなんて出来る訳ないだろ」


 いや、出来るでしょ! そう言えばこの2人、どっちも魔法適正が低かったな……


  2種類以上の魔法を同時に使うには、複数の魔法陣を混ぜて1つの形にした、オリジナルの魔法陣を作るだけだ。そんなに難しくない。


「だったら、僕のやり方で試して見ても良いですか?」

「ほう、アレンジしようとして失敗するのは素人に良くあるパターンだ。どうするつもりなんだ?」


 先輩の使っていた鉄のハンマーを手に取り、作業台へと向かい説明を始めた。


「まずは使う素材ですが、鋼の強度はオリハルコンに比べるとかなり脆く、魔力の耐性も低いです。なのでハンマーで叩く前に、鋼を強化する2つの補助魔法を掛けます」


「バカバカしい! 2つも同時に補助魔法をかけるなんて不可能だぞ」


 素人は口を出すな、と言わんばかりに先輩は僕を睨みつけている。


「本当に出来るのか? オリハルコンなんて見た事すらないけどな」


 レオルも半信半疑だな……まぁいいや、続けよう。


 材質をオリハルコンの強度に近付け、変色、加工まで自動で行う『オリハルコン・マテリアル』


 魔法付与の効果を上昇させる『マジックアブソーブ・ライジング』


 この2つの補助魔法(オリジナル)を鋼にかける。


 左手で補助魔法(オリジナル)の魔法陣を描くと、鋼の上に重なって浮かぶ1層の魔法陣が現れた。


 そのままハンマーで魔法陣を叩き込むと、カーン! と爽快な音が工場に響き、オリハルコン・マテリアルの魔法が発動した。


 作業台に置かれた鋼が、僕の思考通りの剣へと形を変えて行く。


「どうなってるんだ……? 勝手に剣の形が出来上がって行くぞ……」

「ドミニク……お前何したんだ?」


「まぁ、見てなって」


 2人は何が起こっているのか解らずに、変形する鋼をじっと見つめている。


 良っし、出来たな!


 柄から剣先まで宝石の様な黒で、十字型の細身の剣が完成した。剣のイメージは雪山の盗賊、グレアさんの持っていた『黒曜石の剣』を片手用に小さくした物だ。


「あとは魔法付与だけですね」


 黒剣を手に取り、左手で適当な接近戦闘向けの魔法陣を焼き付ける。


「あまり鍛冶っぽくないな、本当に完成したのか?」


 レオルは相変わらず腕を組み、疑いの眼差しを僕へ向けている。


「1回しか叩いてない……全然ダメだな。剣は職人の魂なんだ、魂を鋼に何度も叩き込むんだよ! どうせ失敗だろうが、ちょっと見せてみろ」


 フレバー先輩は乱暴に作業台から黒剣を掴み取り、ステータスカードをかざした。


 一一一一一一一一一一一


『名前』:ハイヤード・ソードリンク・グラディウス


『素材・種類』:鋼、魔法剣


『属性』:無属性


『ソードランク』:SS


『攻撃力』:S

【斬撃の威力】


『魔力変換効率』:700%

【付与魔法発動時の魔力の上昇率】


『魔法付与』:切断 S

【物理的な切断効果の上昇】


      :自動防御 S

【剣による自動防御率の上昇】


      :反射攻撃 S

【剣による自動反撃の上昇】


      :ソードリンク SSS

【2刀流時、同じ性能を片方の剣にコピー出来る】


『製作者・ブランド』:不明

【鍛治適性者のみ表示】


『ステータスカード称号』:魔剣 :切断剣 :ソードリンク


 一一一一一一一一一一一


「ふむふむ、どれどれ? ソードランク『SS』か……魔剣じゃねコレ!?」


 何故か魔剣だと騒ぎ始め、憧れの眼差しで黒剣を眺めるフレバー先輩。


「欲っしいなぁ……マジで魔剣だよコレ」


 適当に魔法付与した剣が魔剣の訳ないだろー、ん? もしかして欲しいのかな?


「大袈裟ですねー、上手く出来てました? 必要なら先輩にあげますよ」

「これ貰って良いの? 魔剣だよ?? やったー! 部室にかーざろっと」


 変貌した先輩の肩を強く揺さぶり、レオルが叫んだ。


「フレバー先輩!? 魂はどうしたんですか!?」


 あーあ、先輩がはしゃいで剣を振り回しちゃったせいで、工場の連中がゾロゾロと集まって来た。


「見てみろよ! あの1年が魔剣を作ったってよ」

「部長に認められるほどの腕か……俺にも鍛冶を教えて下さい!」


 なんだこの状況……フレバー先輩は黒剣に夢中だしなぁ。


「仕方ないなぁ。しっかりして下さいよフレバー先輩! ちょっとみんなここに座って下さい! 今から鍛冶の基礎講座を開きます!!」


 ※ 


 それから出来上がった魔剣? を気に入られ、みんなに鍛冶講座を開く事になった。


「だーかーらー、違いますって! ここで魔法陣を普通に20個くらい同時に展開して一」

「「出来るかよ!!」」


「これが本物の鍛冶なのか? 色々間違ってないか? 俺の鋼、なんかフライパンみたいになっちゃったぞ」


 その後、顧問の追影先生が部室に戻って来て、部室に飾られていた先生の宝刀が、僕の魔剣へと取り替えられた。結局、工場の連中は魔法適正が低く、僕の講座は無駄に終わってしまったけど。


 そう言えば、レオルの鋼はフライパンに変化した様だ、才能が無いんだな!


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