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ステータスカード

「では今から筆記試験を行う、引率の教員に従って各教室に移動するのじゃ!」


 鋭い眼光でプレッシャーを掛けていたルーシス校長が壇上から去り、緊張の糸が解けた生徒達が再び雑談を始めた。


 すごい気迫だったな。これから筆記試験かー、緊張して来た! でも調合や薬草の問題には自信があるんだよね、生産問題どんとこいだ!


 みんなが席を立ち始めると、申し訳無さそうに生徒の列を掻き分けながら、小走りでカレンがやって来た。

 人混みの緊張を誤魔化す為か、いつにも増して僕の腕を強く抱き締めて来る。


「ドミニクー、うう……ドキドキするよ心配だよー」

「よしよし、能力を計るだけだから大丈夫だよ、落とされたりしないって」


 会場に居た教員の指示によりグループに別れ、教室へと移動を開始した。


 お! あの癖っ毛の金髪はリーシャだ、スタイルも良いし目立ってるなー。話しかけてみようかな? いやでも、いきなりは不審者だよね……焦っちゃ駄目だ!


 自問自答しつつ、校舎への通路を進みながらリーシャを眺めていると、僕の隣を歩く男子生徒と目があった。


 金髪のピッチリ7:3ヘアー、癖の強い茶色の眼、高価そうな指輪を沢山指にはめた、お金持ちっぽい生徒だ。


 パンパンに肥えていて、今にも制服のボタンが弾け飛びそうだ! んん? この男の子もリーシャを見てるのかな? もしかしたら友達第1号になれるかも、話しかけて見よう。


「あ、あの! 僕ドミニク、初めまして!」

「ちっ! 女連れかよ、あんまり調子にのるなよ!」


 お坊っちゃま君は腕を組んだまま舌打ちをし、悪態を吐き捨ててそっぽを向いてしまった。


 なんで……カレンが腕に絡まってるせいで周りに悪印象を振りまいてる様だ。


 今の僕とお坊っちゃま君とのやりとりに腹を立てたカレンが、わざと周りに聞こえる程の大きな声で話しかけて来た。


「ねえドミニク! なに今の豚?」

「こらやめなさい!!」


 聞こえちゃうだろ!


 一悶着あったけど、無事に2階にある教室に着き、自分の番号の席に座る。


 眩しいくらい陽当たりの良い教室には、30人分の木製の勉強机があり、僕はまた後ろの席でカレンは前の方の離れた席だった。


 不安そうに椅子に片手を掛け、後ろを向いて手を振る彼女に苦笑いで返す。


 私語も無く静まり返った教室で座ったまま待っていると、ガラガラと教室の引き戸が開かれ、誰かが入って来た。


「こんにちは! でござる!」


 あれが試験担当の教師!? 全身黒い謎の衣装、頭には鉄の額当て……うーんあれだ、忍者っぽいな。


 まさかの忍者登場と言う奇妙な光景に、他の生徒達も動揺を隠せないみたいだ。


「なあ、あれって昔滅びた伝説の一族『忍者』じゃない?」

「んな訳あるか、あんな分かり易い格好の忍者がいるかよ」

「確か忍は自分の正体がバレたら、一族の恥として打ち首らしいよ」


 生徒達から漏れるヒソヒソ話を特に気にした様子も無く、どこからどう見ても忍者な先生が教壇に立って話し始めた。


「初めまして、我が試験を担当する事になった忍! じゃなくて、教師の追影だ。よろしく頼むでござる!」


 ええ!? バラしちゃったよ、打ち首大丈夫かな……よく見たら額当てに『忍』って書いてあるし別に隠す気は無いのか。


 僕の心配をよそに、追影先生は手裏剣型のチョークを取り出し、見事な達筆で黒板に自分の名前を大きく書いた。


 再び生徒達に焦りの声が漏れる。


「あれって忍者が良く投げてる奴だよね!?」

「だから違うって、この学校じゃ手裏剣形のチョークが普通なんだよ」


 追影先生は、パンパンと両手を叩き手に付いたチョークの粉を落とすと、持って来ていた大きな巾着袋から真っ白なプラカードの束を教壇の上に置いた。


 その束から1枚を手に取り、みんなに見える様に掲げた。


「みんな注目! これがステータスカードだ。今から君たちにこのカードを配るから魔力を込めて見てくれ。

 戦闘や生産に使える適性があれば各種能力やスキルが記載されるぞ、人によって様々な能力が表示されるでござる」


 前の各列から後ろにカードを回す様に指示し、追影先生がカードを配っていく。


 前から順番に回って来たカードを受け取り、まじまじと観察する。


 へえ、この白いカードに魔力を込めるだけで、その人が持ってる才能が解るって事か。不思議だな。


「全員に配り終わったな、では魔力を込めてみろ。恐らく最初はランク『D』や『E』と低めの数値が出るが気を落とすなよ」


 掌サイズの白いカードにみんなが一斉に魔力を込め始めた。僕も右手でしっかりとカードを持ち、ゆっくりと魔力を込めて行く。


 カードが魔力に反応して光り出したぞ、何やら文字が浮かんで来た!


一一一一一一一一一一一一


『名前』:ドミニク・ハイヤード

『種族』:人間

『性別、年齢』:男 14歳


『身体能力』:接近戦闘 S


『魔法適性』:現代魔法 S

【古代魔法を簡易化させ、劣化させた現代の魔法】


      :古代魔法 SSS

【失われた古代の魔法、古竜が使っていたとされる世界を滅ぼす力】


『生産適性』:薬草学者 SS

【薬草に関する知識の豊富】


      :合成学者 S

【合成、調合に関する知識の豊富】


『特殊スキル』 :古竜化

【一時的に肉体を古竜に変える事が出来る】


『ステータスカード称号』:魔法師:学者

:古代魔法師:武神:竜人


一一一一一一一一一一一一


 えええ……ナニコレ? なんか僕のステータスカードが壊れてるんですけど!?


 ガンガン! とカードを机の角に叩きつける。


 駄目だ、何回叩いて見ても同じだ……


『SS』?『SSS』? 僕ってドラゴンに変身できるの!? こんなのバレたら不味い事になるぞ……


 唯一の救いが、申し訳無さ程度に下の方に記載されている薬草と合成の知識だけだ。


 ジワっと冷や汗をかき、カードと睨めっこしていた僕を呼び戻す様に、追影先生の声が聞こえて来た。


「みんな終わったか? ではステータスカードの称号を1つ選んで表示し机の上に置いてくれ、それでその人の特性が大体解るからな」


 称号を1つ選ぶって言われてもなぁ、うーん、『学者』で良いか! 他のはヤバそうな称号しかないし!


 カードの称号の欄に表示されている『学者』の文字に触れると、学者の文字が拡大された。ヤケクソ気味に机にポイっとステータスカードを放り投げ、椅子にうな垂れた。


 カレンの奴は大丈夫かな……



 ※



 うう、ふらふらするよー。


 全魔力を使い、何とかステータスカードに魔力を通した。


 私のステータスはこんな物だよねー、振り返りドミニクの様子を見ると、顔を真っ青にして俯いていた。


 ドミニク、どうしちゃったのかな? まあ私も平凡ぼんなステータスなんだけど……


一一一一一一一一一一一一


『名前』:カレン・宮野

『種族』:人間

『性別、年齢』:女 14歳


『身体能力』:接近戦闘 E


『魔法適性』:現代魔法 D

【古代魔法を簡易化させ劣化させた現代の魔法】


『特殊スキル』:幸運 B


『ステータスカード称号』:雑務処理員


一一一一一一一一一一一一


「雑務ってなんだろ……」


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