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鍛冶部 1

 養成学校では、校舎の他に武道場や工業地帯など、部活動に必要な設備が用意されている。


 レオルと一緒に鍛冶部の方へ行ってみると、呼び込みをする上級生が声を掛けて来た。


「ようこそ鍛冶部へ! 俺が部長のフレバー・ブラックだ。君も最強の剣を作ってみないか?」


 この人が部長だったのか、ビシッと緑の短髪を立て、男らしい黒い眼、鍛冶用の安全ゴーグルを首に掛けている。


「初めまして、僕はドミニクです。部活の見学に来ました」

「俺はレオルです! 実際に武器を作れるって本当ですか?」


「勿論だ、トンテンカン!ってな感じで、ポポンっと出来るぞ!」


 擬音の多いフレバー先輩に案内され、煉瓦製の工場の入口の扉を開けた。


 土で綺麗に固められた足場の至る所に、金属加工用の魔導具が散乱し、奥には他の見学者と鍛冶の実演を行う上級生が数人いた。


「うわっ、散らかってるなー、レオルが先に歩いてよ」

「おい! 押すなって、工場だからこんなもんだろ……」


 グイグイとレオルの肩を押しながら、踏み場の無い工場を進んで行く。


 鍛冶に使うらしき、膝下の高さの台の前で、フレバー先輩の足が止まった。


「これが金属加工用の台だ。実演の前に、君が背負ってる剣を見せてくれないか?」

「剣をですか? 構いませんが……大事に扱って下さいよ」


 レオルは背負っていた片手用の剣を肩から外し、フレバー先輩へと慎重に手渡した。


「ほう、熟練された良い剣だ、腕のいい鍛冶師が作ったんだな」

「ありがとうございます、その剣は父から貰い受けた物なんです」


 おもむろに、フレバー先輩は制服のポケットからステータスカードを取り出した。


「君達はまだ入学したばかりで知らないだろうけど、ステータスカードには人間の適正を見るだけじゃなく、武器やアイテム、魔獣のステータスを表示する機能があるんだ」


 へえ、便利だな。ステータスカードをかざすだけで剣の性能が解るのか。


 剣には『魔法剣』と『合成剣』がある。


 魔法剣とは、鋼等の無機物の素材を鍛冶で鍛錬し、付与魔法を施した剣の事を言う。

 素材入手が簡単な事から、市場に出回っている物の90%位がこの剣で、魔法付与を行なった術者によってその性能がほぼ決まる。


 合成剣の方は、魔獣の骨や爪などを魔法で合成し、その魔獣の持つ特性や、スキルが現れた剣の事を言う。

 これは素材にした魔獣の質により性能が決まる為、高性能の剣を作るには、強力な魔獣の素材が必要になる。素材入手の点を考えるとかなり非効率だ。


 どちらの剣が良いとは言えないけど、レオルの剣は魔法が付与された『魔法剣』の方だ。


 フレバー先輩がレオルの剣にステータスカードをかざすと、剣とカードが魔力で繋がり、ステータスが浮かんで来た。


 一一一一一一一一一一一


『名前』:アーガイル・ワンハンドソード


『素材・種類』:鋼、魔法剣


『属性』:無属性


『ソードランク』:B


『攻撃力』:B

【斬撃の威力】


『魔力変換効率』:10%

【付与魔法発動時の魔力の上昇率】


『魔法付与』:身体強化 C

【使用者の接近戦闘能力を上昇させる】


      :斬撃速度上昇 B

【斬撃の速度を上昇させる】


『製作者・ブランド』:ジャック・アーガイル B

【鍛治適性者のみ表示】


『ステータスカード称号』:熟練の剣、鋼の剣


 一一一一一一一一一一一


「ほぅ……ソードランクBとは驚いたな。しかも高度な魔法付与が施されている」

「Bランクですか! 父は王族護衛の騎士団に居ましたから、その時に鍛冶を学んだのかもしれません」


「そうだな、次は試しに俺が作ってみるから、とりあえず見ててくれ」


 フレバー先輩は、工場の隅に散乱していた鍛冶の実演に使うらしき鋼と、欠けたハンマーを持って来た。


「まずは左手で鋼を押さえ、現代魔法・『物質変化』を使い、右手でハンマーを打ち込んで鍛錬して行くんだ」


 魔法だけで炉は使わないのかな? フレバー先輩は低い椅子に腰掛け、作業台に乗った鋼を鍛冶用のハンマーで叩き始めた。


《カン!カン!》《カン!カン!》


「トンテンカーン! あとは魔法付与をしてっと! 適当に作った物だが完成だ、レオルの剣と比べてみろ」


 一一一一一一一一一一一


『名前』:ショートソード


『素材・種類』:鋼、魔法剣


『属性』:無属性


『ソードランク』:E


『攻撃力』:E

【斬撃の威力】


『魔力変換効率』:0.2%

【付与魔法発動時の魔力の上昇率】


『魔法付与』:硬質化 E

【剣の硬さを上昇させる】


『製作者・ブランド』:フレバー・ブラック B

【鍛治適性者のみ表示】


『ステータスカード称号』:剣


 一一一一一一一一一一一


 受け取った剣を見て、苦笑いする僕とレオル。


 見た目は確かに剣っぽいけど、歪な形をしていてとても剣とは呼べない。


「これで本当に完成なんですか?」

「ドミニク、俺にも見せてくれ……しょ、しょぼいな」


 レオルからついつい本音が漏れてしまった、残念そうにフレバー先輩に剣を返す。


「まあ適当にやれば普通はこんなもんさ、調子が悪い時はフライパンとかバケツが完成する事もあるし。それに俺は魔法付与がまともにできないしな。

 じゃあ早速だがレオルとドミニク、次はお前らが体験してみろ」


 ただ剣をハンマーで叩くだけなら、別の魔法を付与して鋼を強化した方が、もっと良い剣が出来ると思うんだけど。


 これが本当に鍛冶なのかな……?


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