表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/158

自己紹介

 入学式は、クラス分け試験の時と同じ会場で行われていた。


 僕が待機している壇上の舞台裏まで、拡声の魔法による司会進行の声が聞こえて来る、この声はカルナ先生かな。


 式には新入生の保護者も参加してるけど、僕とカレンの両親の姿は無かった。


 僕の両親は、知る人ぞ知る考古学者だ。自然界に残された古代遺跡の探索を行い、集めた遺産から古代に関する調査を進めているらしい。


 カレンの父親は、忍びの国の出身だ。元々はあっちの国に引っ越す予定だったのを、当日になってカレンは嫌だと泣き喚き、見送りに行った僕にしがみ付いて離れなかった。

 結局、無理を言ってこの街に残ったカレンは、両親とは少しだけ険悪な状態なのかも知れない。


《次は新入生代表の挨拶です!》


 おっと、もう僕の番か! こういうの苦手なんだよなー。


 舞台裏からカーテンを抜けて、大きな舞台に歩み出る。


 シンッとした空気の中、壇上に立ち、深々と頭を下げると、みんなの視線が集まって来るのを感じた。


 ……真っ白になりそうな頭を落ち着かせ、深呼吸し、制服のポケットから用意してあったスピーチの紙を取り出した。


「えー、では! 天空を駆けるドラゴンの訪れと共に、僕達、普通の冒険者の卵は、無事に一般的な養成学校の平凡な1年として、迎えられる事と成りました、つきましては一一一一」



 ※



 開始前に一悶着あったけど、なんとか入学式は無事に終わった。


 自分のクラスに移動し、私語のない教室を1番後ろの席から見渡す。


 Aクラス28名、見知った顔はカレン、リーシャ、レオル、見なかった事にしたいけどギーシュを入れて4名だ。


 クラス分け試験の結果、上位からA、B、Cの3つのクラスに分けられ、ここは最も優秀な生徒が集まったAクラスだ。


 他の生徒とは話すタイミングが無かったし、これから友達になれると良いなぁ。そして担任は、僕のサポートをしてくれると約束したあの先生だ。


「にん! 我が担任の追影でござる。これから1年よろしく頼むでござる! まずは全員の自己紹介からだ」


 教壇に陽気な忍者が現れると、生徒達は不満げに机にうな垂れた。


「まじかよー、カルナ先生が良かったのにー」

「ハズレじゃんー、追影先生かよぉ」

「ドーリス先生? 誰それ?」


 教員の1番人気は、男子のお色気票を集めたカルナ先生だった。ドーリス先生は忘れられてるな……


 露骨な不満の声に、さすがの追影先生もショックを受けたのか、だらしなく額当てが傾いていた。


「は、早く自己紹介するでござる! まずは主席のドミニク殿!」


 僕が1番最初か……第1印象は肝心だ、しっかり自己紹介しないと!


「初めまして、僕はドミニク・ハイヤード。趣味は調合で、一応ステータス称号は学者です。よろしくね」


 何事も無かったかの様に、スマートに椅子に座り、全神経を研ぎ澄まして、僕への評判に聞き耳をたてる。


「首席のドミニク君だ。実技も筆記も1番だって、かっこいいよねー」

「学者で将来有望な上に、見た目も優しそうだしねー」


 ……中々、悪くない評判だ。同じく女子達の内緒話を聞いていた男子達が、ガタガタ!っと机を揺らして一斉に立ち上がった。


「待てよ! 女子ども騙されるな!」

「森にケルベロスを放ったのはあいつだぞ、中身は絶対ドSだ!」


 よ、余計な事を……ある意味ド『S』なのは間違って無いけど!


 自己紹介は続き、人見知りのカレンは硬い表情のまま、なんとか自己紹介を終え、みんなの声に耳を傾けていた。


 次はリーシャの番か。


 リーシャがスッと立ち上がっただけで、その美貌に男子生徒の注目が集まる。


「私はリーシャだよ、えっとー、特技は料理かな! よろしくねっ」


 はにかみ、ニコッと笑うと、男子の雄叫びが上がった。


「うぉおおお! リーシャちゃぁん!!」

「可愛いよぉ! なんだあの天使は!」

「好きだぁぁぁ!! 料理食べてぇぇ」


 リーシャの人気は半端なかった、ふわふわの金髪に星の様な青い眼、それに加え天使の笑顔、誰が見ても可愛いからね!


 ギーシュはいつもの調子で自慢話で空回り、澄ましたレオルはガチガチに緊張していたのか、何言ってるのか全然聞き取れなかった。


 やっと全員終わったな。追影先生は話が苦手な生徒をフォローしたりと、やっぱり気の利く忍者だった。


「今日はここまででござる! せっかく同じクラスの仲間になるんだ、しっかりと交流を深めるでござるよ。では、部活見学してから帰宅するでござるー」


 顔合わせが終わり、生徒達が教室から出て行き始めると、一目散に、リーシャとレオルが僕の席へ向かって来た。


「よぉドミニク、部活見学に行こうぜ、道場破りだ!」

「ドミニク君! 料理部に興味は無いかなっ? ここの食堂ってすっごく美味しいらしいよっ!」


「わかったよレオル、リーシャ、痛いから離せって! 言っとくけど僕は薬草研究会に入るからね」


 いつの間にか後ろに居たカレンが、哀れむ顔で僕を見ていた。


「薬草研究会、地味ね……」

「ほっとけ!」


 部活見学に向かう生徒達の中、お坊っちゃま君が椅子の上に立ち、にやけた顔でパンパン! と手を叩き始めた。


「はいみんな注目ー! 僕は『占い部』に入るんだ。プラネックス家の次男である僕に、占って欲しい女の子!」


 みんなギーシュの性格を察しているのか、誰も相手にする人はいな無かった。


「おい、誰か止めてやれよ」

「部室から2度と出てこないでね」


 ※


 カレンはリーシャと一緒に料理部へ、僕はレオルに付き合って適当に部活見学に行く事にした。


 騒がしい教室を後にし、階段を降りて校舎から出る。


「レオル、まずは広場の案内ボードを見に行こう」

「ああ。なぁドミニク、向こうから変な音がしないか?」


 レオルの向いた先、校内にある部活用の工業地帯の方からカァン!と爽快な金属音が耳に入って来た。


「確かに、金属を叩く音が聞こえるね」

「多分、鍛冶部か何かだな。面白そうだし見に行くか!」


 音のする方へ歩いて行くと、工業地帯にある鍛冶部らしき工場の入り口から、新入生の呼び込みをする上級生の姿が見えた。


「鍛治部だよ! 君も最強の剣を作って見ないか?」

「新入生歓迎です、見に来て下さーい、実際に武器を作る体験も出来ますよー」


 実際に鍛冶を体験できるのか、最強の剣か……面白そうだし僕も作ってみようかな!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ