校長と教頭
校舎に入り、静かな職員室の前を通り抜けて2階への階段を登る。
2階の窓から外をチラ見すると、もう広場に生徒達の姿は無かった。陽の差し込む廊下を歩いて行くと、突き当たりの部屋に、校長室と書かれた札が掛けられていた。
ドアノブに手を掛けようとしてやめ、軽く深呼吸する。
あのタイプの先生は苦手なんだよなー。試験の日の後に色々調べて見たけど、この学校の校長はかなりの有名人だ。
元、ギルドの最高責任者であると共に、伝説のSランク冒険者でもあった、ルーシス・ハイヴィス。
各地にある『冒険者ギルド』とは、街で暮らす人々から依頼された魔獣討伐や素材入手のクエストを、冒険者達へ提供する組織だ。
冒険者登録は誰でも出来る。ギルドカードを作ってもらい、初めはEランクからで功績によりランクアップして行く。ルーシスの功績は数多くあり、どれも伝説的な扱いを受けている物ばかりだった。
その中でも僕が目を惹いたのは、植物系の魔法を得意とする『フォレストドラゴン』の討伐記録だ。
別名、花竜とも呼ばれるこのドラゴンは、全身の翠の鱗を、花や草木に擬態させる魔法を使い、獲物を待ち伏せして襲う厄介な魔獣だ。
しかも植物系の魔法には、人間が踏み込めない独自の魔力が込められており、解除したり解析する事が出来ない。僕もまだこの種のドラゴンは2、3匹くらいしか倒した事がないけど、確かに解除の魔法が通用しなかった。
書物によるとルーシス校長は、それを素手のまま解除していたと言うのだから驚きだ。
決心して校長室の扉を開けると、正装を纏ったルーシス校長が真正面の机に向かって座り、その隣には銀髪の女性教員が立っていた。
「失礼します、本日の生徒代表の挨拶を務める、ドミニク・ハイヤードです」
扉を閉じて直ぐに挨拶し、ピッと直立不動で場の雰囲気を探る。
「ふむ、そんなに緊張しなくても大丈夫じゃよ、ワシが校長のルーシスじゃ」
「初めまして、イルベルだ。君が噂のドミニク君か、会えて嬉しいよ」
教頭先生だったのか、長い銀髪に黄色の眼、知的な鉄製の眼鏡の奥から、僕をじっくりと観察している。かなり若く見えるけどルーシス校長と親しそうだし、年齢はそう変わらないのかな? ミステリアスだな。
挨拶を交わし、机の前に置かれた椅子に座る、何やら真剣な空気になってきたな。
少しの沈黙の後、探る様にルーシス校長が口を開いた。
「ところでドミニク君、先日は雪山の洞窟で何をやっておったのじゃ?」
「え!? い、いやー、ちょっとクリスタルを採取しに行ってたんですけど、洞窟が吹き飛んで大変な事になっちゃいましたね。ビックリダナー、ハハハ」
や、やばい……洞窟を吹き飛ばしたのがバレてる!? なんとか誤魔化さないと退学ものだ。
「ふむ、実技試験で竜族の魔法を再現し、筆記試験では、教員にすら解けない難問まで解いて見せた。まさに天才じゃ……しかし適性才能は空白じゃったな? 一体何を隠しておるのじゃ?」
校長に続いて、イルベル教頭の尋問も始まった。
「私も驚いたよ、君が解いた調合問題の『神の雫』いや、神の涙だったかな? 答えの通りに調合したら見事に再現されたよ」
え……僕が天才? 神の涙なんて素材さえあれば簡単に作れる。上手いこと言って穏便に退学に追い込むつもりだな……何とかして逃げないと。
「いえそれほどでも、それにしても今日は良い天気ですね。では入学式も始まってしまうので、僕はこの辺で失礼しますね」
自然に席を立ち、この場から去ろうとした僕をルーシス校長が呼び止めた。
「待つのじゃ! これを見て見なさい」
あれはステータスカードか? 何故かルーシス校長に手渡されたカードを確認する。
全ての適性ランクがAだ。やっぱりこの校長、見た目通りの脳筋スキルばっかりだな!
「どうじゃ? 君が適性才能を隠す理由は良く解る。ワシもイルベル教頭もそうじゃったからな……1年生にしてAランクの適性才能を持つ生徒は、嫉妬や妬みの対象となる」
いやだから、僕SSSランクなんですよ!
とは言えず、仕方なく適当に相槌を打つ……
「ええ……確かにそうですね」
「そこで考えたのじゃが、君の秘密がバレない様に協力者をつけよう。追影先生、出て来るのじゃ」
シュババ!っと影が揺れ、ルーシス校長の隣に一瞬にして忍者が現れた。
「お呼びでござるか、ルーシス殿!」
「話しておいた通りだ、追影先生は隠密スキルを保有する我が校きっての達人じゃからな。担任として彼を守ってもらいたい」
「うむ、生徒は我が子も同然でござる。それに我も教師の端くれ、ドミニク殿の人となりは何と無く解るでござるよ……」
うーん、何て良い忍、いや先生なんだ。て言うかこれ決定事項なのか?
まぁ退学じゃないみたいだし結果オーライか!
こうして僕の担任は養成学校の忍者、追影先生に決まった。この数日間でリーシャにルミネス、ついでにレオルとか色んな友人も増えたし、意外と順調なスタートだな。
※
『名前』:ルーシス・ハイヴィス
『種族』:人間
『性別、年齢』:男 54歳
『身体能力』:接近戦闘 A
『魔法適性』:現代魔法 A
【古代魔法を簡易化させ、劣化させた現代の魔法】
『特殊スキル』:魔力身体強化 A
【魔力をそのまま筋力へと変換できる】
:魔法解除 A
【魔力そのものが魔法解除効果を持つ】
:探索A
【冒険者としての探索の知識の豊富】
『ステータスカード称号』:魔法師 :武神 :冒険者




