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妖精

 稲妻の大規模魔法により、エリシアス雪山の洞窟に大穴が開けられた事件は、即時に各地冒険者ギルドに知れ渡った。

 それに伴い養成学校校長、Sランクのルーシスが、雪山キャンプの責任者、ケヴィンの元を訪れていた。


「久しぶりだな、ケヴィン」

「ようルーシス、あの大穴を見たかよ? シャレになってねえな」


「目撃証言によると、稲妻の大規模魔法が放たれた様じゃが、恐らく人間の仕業では無いな。調査の方はどうなっておる?」


 洞窟を跡形も無く吹き飛ばす魔法など、ドラゴン族の魔法を含めても、過去に前例の無い物だった。


「ああ、爆発時に洞窟内に居た奴らを、片っ端から部下に調査させてる所だ」


 丁度タイミング良く、洞窟の入場許可証を持ったケヴィンの部下がテント内へとやって来た。


「ケヴィンさん、入場許可証の調査が終わりました! 特に怪しいのが黒剣の導のパーティです。先程、3名とも捕らえられた様ですが」

「黒剣の導だと? 荷物持ちのガキを紹介したパーティか。ん? なぁ誰だっけこのハイヤードって奴は……どこかで聞いた名だな」


 思いもよらぬ生徒の名が飛び出し、ルーシスに奇妙な予感が過ぎる。


「ワシの聞き間違いか……まさかドミニク・ハイヤードの事を言っておるのか?」

「なんだルーシス、お前の所の生徒か?」


「うむ。入学試験を実技、筆記共に首席で合格した天才だぞ。何故こんな所に来ておったのだ……」

「あのガキが? 冒険者ランクはEだったぞ」


「やはり、ただの生徒では無いようじゃな……」


 ※


 ふぅ、危ない所だった! 早くルミネスを探さないと。


 キャンプ地から洞窟付近まで、冒険者やギルドの偵察部隊で溢れ返り、大騒ぎとなっていた。


 冷たい吹雪の中を飛行魔法で飛び、上空から森に目を凝らすと、偵察部隊から身を隠す様に森を移動するルミネスを発見した。


 高速で木々の隙間を抜けて滑空し、地上へと降りる。


「ルミネスー! 怪我は無いかいー?」


 飛んで来る僕に気付き、ルミネスは大きく手を振って応えてくれた。


「ドミニク様ー! お帰りなさい。奴等ならボコボコにしてギルドに引き渡しましたよ!」


「頼りになるね、無事で良かったよ」


 使い魔である彼女と僕は、魔力により繋がっている。そこから判断するにルミネスの実力は、知能の有る大型のドラゴンを遥かに凌駕する物だ。


 でも、今回の相手はAランクの冒険者だ。少しだけルミネスの事を心配していたけど、余計なお世話だったみたいだな。


「無事にクリスタルは入手出来た様ですね」


「うん、後は召喚獣だけなんだけど、自分で合成して作る事にしたから。雪原に居たスノーフェアリーを捕まえてから家に帰ろう」


「なるほど、スノーフェアリーを合成の魔法で強化されるのですね。では参りましょう!」


 ※


 雪原でスノーフェアリーを1匹だけ転移の狭間へと誘い込み、暖かい我が家のリビングへと戻った。


 室内をフワフワと浮遊するスノーフェアリー。見た目は幻想的で透き通った妖精みたいだけど、やっぱり野性的な獰猛さを感じるな。


《キシャー!》


 近付くなと言わんばかりに、透明な体から2本の白い牙が飛び出して来た。


「威嚇してるね、知能が足りてないのかな?」

「どうでしょう? 言葉が解らないだけで賢い生物の可能性もありますよ」


 確かに……いきなりこんな所に連れて来られたら警戒して当然か。


「とりあえず、スノーフェアリーの心を読んで見よう。古代魔法の書に『読心』の魔法があった筈だ」

「そんな簡単に古代魔法が使えるんですか? 何でもありですね……」


 リビングの本棚からいかにもな『古代魔法の書』を取り出し、パラパラとめくる。


 古代魔法の書はそんなに珍しくない、図書館に行けば2、3冊は普通に棚に置かれている。ただ、その内容は全て古代文字で書かれていて、普通の人には読む事が出来ないらしい。


 理由は解らないけど、僕は古代文字を簡単に理解でき、古代魔法も使う事が出来る。


 なんでだろーっと、あったあった。


 書物のページをめくっていると、人間と二足歩行の魔獣が仲良く手を繋いでいる絵が書いてあった。


「えーと、ふむふむ、なるほどね……我が問いに心で応えよ。

 古代魔法・『読心(リード・シンク)』」


《キシャー! キ……》


 威嚇していたフェアリーから牙が収まり、大人しくなった。


 魔力を持つ生物は、常に体から微弱の『魔力波』を放出している。魔獣はこの魔力波を頼りに、仲間や敵を判断している。


 読心の魔法により、僕とスノーフェアリーの持つ魔力波を、同じ生物の物に近付けた。


 これで感情が少しだけ読み取れる様になったけど、正確な物じゃ無いので勘を頼りに判断するしか無い。


 フェアリーの声に耳を傾ける。


《コンニチハ、ワタシはフェアリー、漆黒のトモダチ、ナリタイ》


「あれ? 結構普通に話しかけて来てるね、漆黒の友達になりたいんだってさルミネス」

「なんで漆黒なんですか、威嚇してる様にしか聞こえませんが……」


《キシャー!!》


 ルミネスが恐る恐るフェアリーへと左手を伸ばすと、2本の鋭い牙でフェアリーが思いっきり噛み付いた。

《ガブッ!》


「いったーぃ!!」


 不意打ちの痛みに叫び、猫耳の毛を逆だてるルミネス。フェアリーは心なしか余裕の表情に見える。


《カカッタナ、ゴミメ》


「あ、ルミネスやっぱりヤバイ! 何かゴミとか言ってるっぽい」

「ゴミ!? ドミニク様、早く合成してこの愚かな妖精を悔い改めさせましょう!」


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