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雪山探索 5

 グレア達は荷物の入った台車ごと、脱出ルートの氷の滑り台に滑り込み、一瞬で洞窟の裏出口から麓へと降りた。


 いつもの様に手を叩き合い、作戦成功に笑みをこぼすグレアとシープ。


「上手くいったな! チョロイ奴らだぜ。ははっ、高価な鎧に剣だ。売ればそこそこの金になるぞ」

「良い金蔓の傭兵がいたね、楽勝だったよ……」


 盗品を物色していると、突如、ズゴオォーン!!と雪空に稲妻の轟音が鳴り響き、とてつもない吹雪がキャンプ地に襲いかかった。


「あ、なんの音だ!? 地震か?」

「吹雪が! グレア見て! 山が変だ……」


 エリシアス雪山、標高5000m、洞窟入り口南側1000m付近に、爆発で抉られた様な巨大な大穴が空いていた。


「なんで雪山に大穴が!? さっきの爆発は何だ?」

「あれは稲妻の魔法だよ……何か異常な事が起こってる」


 グレア達が麓から雪山に空いた大穴を眺めていると、そこから獣人の少女がワイバーン部隊を率いて飛び出して来た。


「嘘だろ……ワイバーンどもがこっちに来てる! シープ、逃げるぞ!」

「うん、あれは荷物運びの連れの女だ、空を飛んでる……」


 ワイバーンと共に飛行魔法で高速で滑空し、グレア達の元へとルミネスが舞い降りた。


「愚かな人間ども、漆黒の闇の底へと誘ってあげましょう (ふっ、決まった……)」

「どうやってあの部屋から抜け出した! あの爆発はお前の仕業か!?」


 取り乱すグレアを見て、不敵に微笑むルミネス。


「ふふっ、あれはドミニク様の魔法ですよ」

「馬鹿な! Eランクのガキにそんなこと出来るわけがないだろ!」


「現実を見なさい、ドミニク様と貴様らとでは次元が違うのです!

 補助魔法・『ワイバーン(翼竜の)デスパレード(死の行進)』」


 サポート魔法により強化されたワイバーンの群れが、グレアとシープの体をガブっと咥え、高速で回転しながら雪空へと舞い上がった。


「離せ! ぎゃああぁぁ!」

「死んじゃぅぅ!!」



 ※



 稲妻の魔法が炸裂し、天井が無くなってしまったモンスタートラップ部屋に、まだバチバチと光が瞬いていた。


本気複数詠唱フルチェイン・キャスト集団殲滅(しゅうだんせんめつ)古代魔法

『ライトニング・エンドオブ・(世界破滅の稲妻)ワールド』」


 ふう、スッキリした! ちょっと穴を開けるつもりだったんだけどなー……ま、いっか!


 アイスワイバーンの群れはルミネスの魔神の魔力にすぐに服従し、露天となった洞窟からグレア達を捕らえに行った。


 シープさんの眠りの霧は『浄化』の魔法で無害に変えたけど、間に合わず眠りに落ちてしまった傭兵2人は、空間転移の狭間に呑み込ませ、キャンプ地に送り返した。


 眠りの霧を少し吸い、もうろうとする意識から回復したリリアンが悲鳴をあげた。


「な、なな何!? なんなの今の魔法! あなたEランクの冒険者じゃなかったの!?」


「え? 僕はEランクの冒険者でただの学生だよ。そんな事よりリリアン。クリスタルの採取場所は解るかな? 出来れば案内して欲しいんだけど」


 ポカンとした様子のリリアンは、急に僕への態度を一変させた。


「あ、はいドミニクさん! クリスタル採取ならこのリリアンにお任せください!(逆らったらやばい事になる!)」


 急に素直になったな、グレアさんの件で罪悪感でも感じてるのかな?


「グレアさんの件だったらもう良いよ、今頃ルミネスに痛い目に合わされてるだろうし」

「え!? 本当ですか! まぁ私もあいつに騙されてたっていうか、言って見れば被害者っていうかー」


 くだらない言い訳を聞き流し、雪が積もり始めた部屋から出る。クリスタルの採取場所はすぐ近くにあった。


「ここです! クリスタルは希少なので、一度採取すると暫くは採れませんよ!」

「この雪の下かな? 待っててね」


 リリアンの指示で、通路隅に積もった雪を掻き分ける。


 キラキラと半透明に光る小粒のクリスタルと、灰色の石の混じった『クリスタルの鉱石』が現れた。


 採取用の『金槌(ハンマー)』と『(タガネ)』を器用に使い、鉱石をクリスタルの部分だけ綺麗に分離させて行く。


 早い、素人目に見てもかなり手際が良いな。


《カンカン!》


「さすが、鉱石採取Bランクなだけあるね」

「小さい頃から採集してましたからね! はいどうぞ!」


 分離したクリスタルを綺麗に磨き上げ、1cm程の小さなクリスタルの魔法石が完成した。


 遂にクリスタルを手に入れたぞ、後は召喚の魔法陣を刻むだけだ。


「ありがとうリリアン、転移魔法でキャンプ地まで送るよ」

「転移魔法ですか!? (マジでなんなのこいつ!?)」


 キャンプ地に戻ろうとした時、天井に空いた大穴から光の魔法で照らされ、ワイバーンに乗ったギルドの偵察部隊が現れた。


「怪我人はいないか!? 助けに来たぞ」

「誰かいるのかー! さっきの爆発は何だ?」


 救護に駆けつけたと思われるギルドの部隊に、リリアンが大きく手を振って応える。


「助けが来た! 大丈夫でーす! 怪我人は居ませーん!」


 もう偵察部隊が来たのか、リリアンには悪いけど先に撤退させてもらおう!


 一瞬で転移の狭間に潜り、洞窟から姿を消した。


 可哀想だけど、爆発現場で採取道具なんか持って突っ立ってたら、すぐに怪しまれて部隊に連行されるよね……


「何だお前怪しいな、爆発があったって言うのに何で呑気に鉱石採取なんてやってるんだ? 力尽くでギルドまで連行する!」

「こいつ黒剣の導のリリアンじゃないか? 盗賊の分際で洞窟爆破とは良い度胸だな。おい治療部隊! 怪我人1人追加だ」


「何ですかこの危ない奴ら!? ってドミニクさんどこ行ったの!? ひぃぃぃ!!」


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