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雪山探索 4

 洞窟内に入り、青白く反射する氷の床を進む。


 あれからグレアさんの自慢話は止まらなくなり、洞窟に入る頃には全身雪まみれになっていた。


「壁が光ってるよ、洞窟にしては綺麗な所だね」

「はい、これなら問題無く進めそうです」


 洞窟内部は、光の魔力を放つ氷に覆われていて明るい。台車を引く足場は滑らず、舗装された道の様に歩く事が出来る。


 僕達の引く台車には、グレアさんの話を信じ切った傭兵2人の剣と盾、鎧、私物数点が乗せられていた。


 前を歩くグレアさんに、クリスタルの情報を尋ねてみる。


「クリスタルはどの辺りで採取出来るんですか?」

「地下2層目の途中に採取場所があるんだ。俺がいつも使ってる攻略ルートを行けば、魔獣とは遭遇しないから安心しろ」


 意外な返事が返って来た、口だけに思えて攻略ルートはちゃんと練ってるみたいだ。


「さすがベテラン冒険者ですね!」

「まーな! 君もいずれ、俺みたいにレッドドラゴンと渡り合える冒険者になれるさ。なんてな! 無理か、はははっ!」


 よく喋る人だなー、ってまた下手な事言ってリリアンを刺激する訳にはいかない、採取の件もあるし。


 話によると、この雪山を含む洞窟は迷路になっている事が多い。ベテラン冒険者は隠れた素材の在り処を知っていたり、安全ルートで魔獣との戦闘も避けられる。同行すれば効率は大幅に上がるらしい。


 すいすいと、迷う事なく氷の通路を進んで行く。


 グレアさんの言っていた通り、1層目の途中で1度、魔獣と遭遇したきりで、2層目に入ってからは魔獣が現れる事は無かった。


 ちなみに、1層目に現れたのは氷属性のバッファローだった。

 全身氷の鎧を纏ったバッファローが、通路の正面から突進して来たけど。ルミネスが、グレアさん達の背後から衝撃の魔力弾を打ち込み、一瞬で粉々にしてしまった。


 気持ちは解る……グレアさんの自慢話には僕も付き合いきれないぞ!


 暫く通路を進むと、一際大きな部屋の前でグレアさん達の足が止まった。


「そろそろ休憩するか、この部屋はモンスターも出ない休憩所だからゆっくり休んでくれ。荷物は俺とシープで見てるから、ドミニク君もさぁさぁ部屋の中へ」

「見張ってるから大丈夫だよ……」


「ありがとうございます、グレアさん、シープさん」


 見張りの2人を残し、大きな部屋の中へ入る。


 氷に包まれた正方形の部屋は、天井が高く、呼吸が少しだけ軽くなった気がする。部屋の中央に雪を掻き分け休憩スペースを作り、『暖房』の魔法で暖をとる。


「暖かいね、採取場所は近くかな?」

「どうでしょう……ドミニク様、何か感じませんか?」


 ルミネスが僕の首元に顔を近づけ、真剣な顔で囁いた。


「あれを見てください……」


 指差す先には、氷の白い花が咲いていた。


「雪花か……おかしいと思ったんだ」

「どうやら罠の様ですね」


『雪花』は薬品と混ぜてゲル状にすると、『0度』以下を維持する性質があるので、保冷剤として一般家庭でも良く使われている。


 しかし、雪花は魔獣の餌でもある。急いで部屋を見渡すと、辺り一面に綺麗な白い花が咲いていた。


 パパッと右手で『検索』の魔法陣を描き、部屋全体に検索の光を飛ばす。


「この反応は……何か雪の中に潜んでる」


 部屋に積もっていた雪が、ボコボコと盛り上がり、至る所から『アイスワイバーン(氷の翼竜)』が飛び出して来た。


「出て来たよ! 翼竜の巣だったのか」

「ドラゴンの劣等種ですか、愚かな……」


 細く長い首と体に、氷属性の青色の鱗、角トカゲに翼が生えた様なドラゴンだ。体長は1mと小柄だけど、かなりの数だな。


《ギャオ》《ギャオ!》


 アイスワイバーンの群れが天井を飛び交い、リリアンと傭兵達は恐怖の余り立ちすくんでいた。


「グレア師匠! モンスターが現れましたよ!? どうなってるんですか!?」

「ひいぃ、グレアさん助けて下さい!」

「なんて数だ……食われちまうよ!」


 可哀想に、弟子を見捨てたみたいだね。


 脱出手段を探していると、いつの間にか大きな岩で入口を塞がれていた。


 全部あの人達の計画通りか、部屋の外からシープさんの魔力波を感じる……眠りの魔法を放つ気だな。


「上手くいったな馬鹿な奴らだ、ここは『モンスタートラップ部屋』だ! シープ、眠りの魔法を放ったらいつもの手順で脱出するぞ」

「うん、眠れ……『眠りの揺籠(ゆりかご)』」


 黒い呪いの魔力と共に、入口を塞ぐ岩の隙間から催眠の霧が流れ込んで来た。


「そんな……助けて! グレア師匠!」

「騙されたんだ! くそっ! 俺達の武器も全部台車の中だぞ」

「そんな事言ってる場合じゃねーよ!」


 強力な催眠魔法だ、これで眠らせて記憶を消すつもりみたいだね。最初から疑ってはいたけど、高ランクの冒険者どころか盗賊だったなんて……


 ルミネスは呪いの霧に動じず、落ち着いた様子で僕に指示を仰いでいる。


「眠りの魔法ですね、どうします?」

「うーん……『本気複数詠唱(フルチェインキャスト)』」


 部屋中にアイスワイバーンと大体同じ数の、30個の天空魔法陣を展開した。


「とりあえず、全部吹き飛ばそうかな」

「あっ……(ヤバい、ドミニク様少し怒ってるな)」


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