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養成学校へ

 昨日の冒険者ギルドでの『SSS』ランク事件から一夜明け、今日は養成学校のクラス分け試験の日だ。


 昨日、僕が薬草採取の為に訪れた火山で、たまたま討伐した『赤竜』は、所謂『魔獣』だ。


 自然界に存在する動物の中で、人を襲い餌とする害のある獣の事を『魔獣』と呼ぶ。


 この国では魔獣を倒して素材にしたり、遺跡や自然から宝や素材を見つけ出す『冒険者』が、一般的な人気の職業の1つだ。


 僕達が今日から通う冒険者の養成学校では、その為の知識や技術を学ぶ事が出来る。


 朝から集合住宅の1階にある、カレンの家まで迎えに来ていた。


「スカート短い……私の制服どうかな? 」


 養成学校の制服に着替えたカレンが、スカートを押さえ、クルクルと回りながら恥ずかしそうに尋ねて来た。


 制服は白のシャツに紺のブレザー、冒険者の養成学校だって言うのに、首元には女の子らしい赤のリボンが付いている。男子の制服は青のネクタイだ。


 うーん……雰囲気は地味だけど、カレンは中々の美少女だ。ここは素直に褒めておこう!


「うん、似合ってるよ! 可愛いね」

「可愛い? 私が可愛い!? 嬉しいよー」


 喜びの余り、勢い良く抱きついてきたカレンをグイグイと引っぺがした。


 カレンの家は7畳の1ルームに、キッチンが付いた1人暮らし用の畳の部屋だ。綺麗に整理された棚には雑誌や女の子向けのアクセサリー、化粧品が置かれている。


 彼女もまた僕と同じで、両親の都合により1人暮らしだ。


 ニヤニヤと嬉しそうに、僕の制服のネクタイに手を掛けてくる。


「もう、ドミニクったらネクタイ曲がってるよ、しょうがないなー」

「ありがとう、カレンもう良いよ! 近いから恥ずかしいから!」


 準備も終わり玄関から出ると、早速腕を絡ませて来たカレンとそのまま学校に向けて歩き出した。


 昨日からやたらとベタベタしてくるなぁ、学校でもこんな感じだったら周りの視線に耐えきれないぞ! でもあんまり嬉しそうにされると強く言えない……困ったな。


「クラス分け試験って何するのかな? 冒険者の学校だから魔法とか力比べ?」

「どうかなー、薬草調合とか生産だったら良いな、ポーションならいつも作ってるし」


 試験の話をしながら通学路を進んでいると、道の先に僕達と同じ学生達の姿がちらほらと見え始めた。


 もう養成学校の近くみたいだ、あ! あの金髪の娘可愛いな……


 通学中の美少女に見惚れていると、腕を思いっきりつねられた。


「痛い! 痛いってカレン!」

「どこ見てるの……」


 組んだ腕に力が入り、凄い表情で睨んでくる彼女に謝る。怖い……昔は優しかったのに!


 住宅街から商店街を通り抜けると、養成学校を囲む灰色の塀に突き当たる。ここから門まで塀に沿って進むだけだ。


「あそこだ、正面玄関が見えて来たよ」

「テントの受付に生徒が並んでるみたいだね、私達も早く行こう」


 僕達も生徒達の列に並び、門から遠くに見える大きな校舎を眺めながら順番を待った。


 門からゆったりとした坂になっていて、その先の広場を中心に、灰色の大きな二階建ての校舎が左右に2棟並んでいる。


 全校生徒数、約300人。設備は戦闘から生産まで幅広く揃っており、正に冒険者の為の学校だ。


 次々と前に並んでいた生徒達が受付を済ませ、僕達の番がやって来た。テント内の受付の女性教員へと書類を提出する。


 肩まで掛かる薄紅色の髪、キリッとした緑色の眼、一見真面目そうな印象を受ける人だ。


「おはようございます! 試験を受けに来たんですけど」

「おはようございます、私もです!」


「おはよう、私はここの教員のルイスよ。試験用の書類を出してねー」


 ルイス先生は見た目とは裏腹に、片肘をついたまま気軽と言うか適当な対応で迎えてくれた。


「はいはい、ドミニク君にカレンちゃんね。そこの広場を左に曲がって道なりに進むと、赤い屋根の建物があるからそこが会場よ。中に椅子があるから指定された番号に座ってね」


「ありがとうございます! 行こうカレン」

「うん!」


 名札を貰い広場の先へ進むと、校舎と同じ位の大きさの赤い扇型の屋根の建物があった。


 四角に大きく開いた建物の入口で、混雑した生徒達の後ろ姿が見える。内部はホールになってるのか、綺麗なフローリングの床が反射して鏡みたいだ。


 続いて僕達も中に入り、受付で貰った番号の席を探す。


「僕の席はー……あった!」

「私は前の方の席だから、一旦お別れだね……」


 前の方の席から不安そうにこっちを見るカレンに、手を振り励ましておいた。


 席に着き、ざっと会場内を見渡す。結構な人数だな、今日のクラス分け試験を受ける1年だけでも100人くらいか。


 隣の席に目をやると、毛先がクルクルっとした綺麗な金髪が印象的な美少女がいた。


 さっき通学路で見かけた女の子だ! 少し緊張しているのか俯き気味で小さくなっていた。


 うーん、やっぱり可愛いな! なんて名前だろ……


 名札をこっそりと覗き込む。


『リーシャ』か……ってなにやってんだ僕は! でもこれから友達になる可能性もある訳だ、名前見るくらい普通だよね!


 なかなか試験も始まらず退屈なので、隣の美少女、リーシャを観察していると、ステージ場に謎の武闘派って感じのおじさんが上がって来た。


 肩まで掛かる白いオールバックの髪、太い眉に武人の眼、強面の髭面、白いズボンしか履いておらず、鍛え上げられたむき出しの上半身には無数の傷跡が刻まれていた。


 なんだあの人、何で上半身裸なんだ? トレーニングでも始めるつもりなのかな……


 いきなり壇上に現れた不審者に、新入生達も騒ぎ始めた。


「見ろよ、あれが人類で初めて『S』ランク冒険者になった伝説の校長、ルーシスだ!」

「いや待て! 人間かどうかは怪しいだろ? ゴリラに育てられたって噂だぜ?」


 ゴリラに育てられた!? なんだあの校長、相当やばい奴じゃないか……余り関わりたくないなー。


 壇上の真ん中で仁王立ちになり、太い2本の指先で魔法陣を宙に描き始めた。


 あれは多分、声を大きくする『拡声』の魔法陣だな。

『魔法』は、術者が指先で宙に『魔法陣』を描き、そこに魔力を込める事で発動する。


 校長先生が完成した魔法陣に魔力を込めると、会場中に大きな声が響いた。


「ようこそ養成学校へ!! ワシが校長のルーシスだ!

 3年間で君達を一人前の冒険者に育て上げて見せよう! うちの教育さえ受ければ卒業時には『B』ランク……いや『A』ランクの冒険者になるのも夢ではない! ではクラス分け試験頑張ってくれ!」

 

 凄まじい気合に、一瞬にして騒めいていた生徒達が黙り込んだ。


 椅子から声の振動が伝わってくる、耳鳴りがする程の気迫だ。今の話を聞く限り卒業まで学んで『A』ランクか……


 だとしたら昨日ギルドでお姉さんが僕を『SSS』ランクにするって言ってたのは、やっぱり間違いだっんだな。


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