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雪山探索 2

 雪山の(ふもと)の雪原にある、ギルドのキャンプ地へと転移魔法でワープした。


 見渡す限りの銀世界の中、寒さに耐える様に木々が茂り、開けた場所に冒険者ギルドのテントが幾つか張られている。


 生活用品とアイテム販売のテントもあるな。ルミネスは猫耳を震わせて体に積もった雪を払い、雪原を駆け回って遊び始めた。


「わーい、雪ですよ! いつ来ても綺麗な所ですね」

「キャンプ地は外より少しだけ暖かいね、風邪引かない様にね……」


 キャンプ地にあるテントの骨組みには、『暖房』の魔法石が取り付けてある。そこから熱気が生み出されるので、外部より少しだけ気温が高い。


 ザクザクと雪を踏んで進み、並んだテントの中からギルドの受付を探す。


「見つけた! ギルドの印だ。ルミネスってば、遊んでないで早く行くよ」

「にゃ!? す、すいません! 行ってみましょう」


 垂れ下がった雪除けのカバーを手で押し上げ、隙間から半分体を出して中を覗き込む。ルミネスも僕の背後からピョコッと顔を覗かせた。


「奥の机に誰か居るね」

「あの人寝てませんか?」


 内部はそこそこ広く暖かい、部屋の隅には書類を入れる棚があり、受付のテーブルには40代くらいの男性職員が俯いて座っていた。ガッチリとした体格で背は低く、耳まで隠れる防寒用の帽子を深く被っている為、顔は良く見えない。


 入口から、机に俯いてるおじさんに声をかける。


「すいません、雪山の洞窟に入りたいんですけどー」


「ん? いらっしゃいー……ちっ!」


 テントのカバーから顔を覗かせる僕達を見たおじさんは、明らかに嫌そうな顔で舌打ちを鳴らした。


「おい小僧、あそこはAランクパーティしか入れない高難易度の洞窟だぞ! イタズラはやめろ」


「許可証はありますよ、ほら見て下さい」


 おじさんの前まで歩いて行き、そのまま受付のテーブルに許可証を突き出した。


 僕達はAランクパーティの荷物持ち人員となっているから問題無い筈だ。


「ふむ……こんな小僧達を荷物持ちに推薦したのか、まだ14才だろ? ユリアも落ちぶれたもんだな。お前らが参加するパーティは『黒剣(こっけん)(しるべ)』だ。外の広場の方で待ってろ、来たら案内してやる」


 なんだこの人、許可証を見ても納得した様子は無く、そっぽを向いたままユリアさんの悪口を言う始末だ。


「解りました、もう用はありません! 行こうルミネス」

「はい、愚かな人間の相手など、時間の無駄でしたね」


 うん? 僕も人間なんだけどね!


 雪原に戻り、フワフワと雪が降る中を待ちぼうけしていると、魔獣の威嚇する声が聞こえて来た。


《キシュー!》《シャー!》


 森の方を見ると、30cmくらいの透明な妖精が宙に浮いている。図鑑に載っていた雪の妖精・スノーフェアリーだ。


 図鑑の絵と違って野性的というか、牙がむき出しで鋭いな。


「見てルミネス、あれが雪の妖精なの?」

「イメージと違いますか? 名前は妖精ですが魔獣ですからね。クリスタルを採取したら別のモンスターを探して見ましょうか」


「そうだね、あんまり可愛くないし」


 ルミネスの『暖房』の魔法で暖を取りながら、広場のベンチに座って黒剣の導を待つ。


「遅いですね……頭に雪が積もって来ましたよ」

「向こうから誰かくるよ? あの人達じゃ無いかな?」


 テントの方から強そうな5人組のパーティが、広場へと向かって歩いて来た。


 先頭を歩くリーダーらしき男は、何故か大きな両手剣を鞘に収めず、剥き出しのまま自慢するかの様に抱えていた。


 あれは黒曜石の剣だな……それで黒剣の導か!


 リーダーらしき男が、僕達の座っているベンチの前に大剣を突き刺し、空いた両手を腰に添え話しかけて来た。


「初めまして俺はリーダーのグレアだ。君が荷物持ちのドミニクか? こいつがサブリーダーのシープで、後ろでふてくされてる奴が俺の弟子のリリアンだ、鉱石採取ランクBで君達と同じ14歳だぞ」


 やっぱりこの人達か、すぐに僕達も立ち上がり挨拶を交わす。


「はい、僕がドミニクで、こっちはルミネスです。

 今日はクリスタル採取の為に、荷物持ちとして同行させて貰います。よろしくお願いします!」


 明るい茶色の短髪で、鋼の鎧に緑のマント、自信満々な眼、そして黒剣を持つこの男がリーダーのグレア。


 毛先を揃えた白い前髪が特徴的で、ポケーッとした眠い目、魔導ローブの男がシープ。


 そして僕と同じ14歳で、青い長髪を三つ編みにした目つきの悪い弟子のリリアン。


 この3人が黒剣の導で、後ろのごつい鎧を着た2人はギルドの傭兵か。


「シープさんと、リリアンもよろしくお願いします」

「よろしく……眠い」


 眠気に目を擦るシープさんと握手を交わすと、右腕に寒気が走った。


 これは……呪いの反応か? どうなってるんだ?


 僕の挨拶が気に入らなかったのか、リリアンは機嫌が悪そうに握手を拒んだ。


「ふんっ、せっかくグレア師匠に稽古をつけて貰う筈だったのに、荷物持ち精々頑張ってね」


 悪態を吐くリリアンに、怒ったルミネスが雪玉を投げて威嚇している。


「小娘が! ドミニク様になんて口を!」

「いいよ、ほっときなよルミネス」


 険悪なムードを察したグレアさんが、気を使って場を和ませに来てくれた。


「うちのリリアンが無礼を済まなかったな。気を取り直して出発しよう! そこに台車があるから頼んだぞ」

「いえ、ありがとうございます! 荷物運びなら任せて下さい!」


 色々と問題のありそうなパーティだけど、贅沢を言っても仕方ない。雪山へと向けて出発し、他の冒険者達のヒソヒソ話を横目にキャンプ地を通り抜ける。


「おい、あれ黒剣のグレアか? シープもいるぞ」

「『黒剣の導』だな、最近は雪山の方には来てなかったみたいだからな、へへっ今日の雪山は荒れるぞ」


 みんなこっちを見て噂してる……2人は有名な冒険者みたいだな。


 キャンプ地を抜け切ると、用意されていた荷物運び用の台車があった。


「これが台車か、僕が引くからルミネスは休んでて良いよ」

「そんな訳には行きません! 私もお手伝いします!」


 丁度台車のハンドルの幅に、小柄なルミネスと僕がピッタリと収まった。荷台を背に2人で台車を引きながら雪山の洞窟へと歩き出した。


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