石板集め1
転移の狭間からエリシアスの遺跡のロビーへと降り立つ。
「今あそこの奴ら、転移の狭間から出てこなかったか?」
「んなわけないだろう。妙なパーティだがな」
突然現れた僕らに、近くを歩いていた冒険者がギョッと二度見していた。
今日は冒険が多いんだな。転移魔法を見られたかも……。
レヴィアとルミネスはメイド服、僕は制服だ。この組み合わせなら、転移魔法に関係なく二度見されても仕方ないよな。
レヴィアはエリシアスの遺跡に来るのは初めてらしい。周りの視線よりも、神秘的な造りのロビーに夢中になっていた。
「ここがエリシアスの『遺跡』ですか。王都の遺跡よりも整備されていますね」
「王都にも遺跡があるの?」
「はい。しかし、ギルドが管理していないので内部の情報が殆どありません、気軽に人が立ち入れる場所ではありませんね」
そうなのか。エリシアスの遺跡は状態も割とよく、各国から研究者が集まのと比べ結構違うね。
さて、今回のターゲットは、養成学校課外授業のときに遺跡で戦った石板の操り人形『ゴーレム』だ。
僕がSSSランク・ファラオの名前の由来になった、キングオブファラオが操る『ゴーレム』は、上質な魔法の石板で作られている。そいつを砕き、ほどよいサイズにして持ち帰る。
「受付を済ましてくるからそこで待っててよ」
ルミネスとレヴィアに祭壇の前で待機してもらい、受付へと向かう。
受付から相変わらずのカエルローブが顔を覗かせている。受付嬢の『ケロリア』さんには先日、オークションで会ったばかりだ。
「やっほ~ドミニク君、近頃よく会うね~。今日は授業はお休み?」
「こんにちは、午後はお休みなんですよ。ゴーレムが一杯出るクエストをもらえますか?」
「はいはいっと! この『ゴーレム退治』のクエストでいいかな? わざわざ退治クエストを受けなくても、遺跡内部にいくらでもいるんだけどね~」
まぁ、そうなんだけどね。事前にクエストを受けておくと、討伐の証をギルドに渡すことで報酬をもらえるし、ちょっとお得になる。
「このクエストを受注させていただきます。ありがとうございました」
「ほほぃ、頑張ってね~」
ケロリアさんからクエストをもらい、再び2人のいる祭壇まで戻る。
「ただいまー、クエストをもらってきたよ。早速、遺跡の中に入ろうか!」
「ちょ、ちょっと待ってください!」祭壇に触れようとした僕の手を、レヴィアが慌てて防いだ。
「先にクエストを見せてください……不用意に遺跡の内部に入るのは危険です」
「そんなに難しいクエストじゃないし心配ないよ」
クエスト用紙を渡すと、レヴィアは食い入るように隅から隅まで目を走らせている。
心配症というか真面目というか……いかにもレヴィアらしい。
「むむ、これはゴーレムを倒すクエストですね……ドミニクは魔法師。ルミネスも近接が得意には見えませんが……魔法の効かないゴーレムをどうやって倒すつもりなんですか?」
「「ん??」」と、僕とルミネスは同時に首を傾げた。
……ゴーレムをどうやって倒すかだって? 質問の意味がよく分からないな。
確かに、ゴーレムの体に使われている石板は魔法耐性が強いけど、特に問題はない。
「魔法の威力は軽減されるけど倒せないってほどじゃないね。でも、ルミネスもいるし、適当に殴っても倒せると思うよ」
「石板のゴーレムを殴って倒す?? ゴーレムは自動人形ですから、操作している術者を探しだして倒すということですか……」
いちいち、ゴーレムを操っているファラオを探しだす何て時間の無駄だ。レヴィアって警戒心が人一倍強いタイプなんだな
「僕は転移魔法が使えるし、ルミネスも飛行魔法が使えるよ。何かあったら飛んで逃げるか転移するよ」
「わかりました、騎士として覚悟を決めるしかないようですね!」
納得したレヴィアを連れて、遺跡内部へとワープした。




