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王宮調合室4

花粉に負けず頑張りましょう!

ゴロゴロゴロ! っと2人仲良く、踏み慣れた我が家のリビングの床に転移魔法で放りだされる。

「ハッ! ここはどこですか!」

やっぱり、レヴィアも一緒に転移されちゃったのか……。

うちの内装には似合わない騎士の鎧を(まと)った少女が、挙動不審に部屋を見回している。

もう言い逃れできないし、転移系統の魔法が使えるって話すしかないか。

「ここはエリシアスにある僕の家だよ……さっきのは転移魔法で、レヴィアは巻き込まれてここに転移されたんだよ」

「今のが古代人が生み出した転移魔法なのですか……? ほんの数秒で空間を転移してきたのですか……し、信じられません! ドミニクさん! 私に転移魔法を教えてください!」

「えぇ?? ちょっと! 痛いってレヴィア!」

腰の辺りに硬い鎧の胸部がガツガツと当たり、しかも、必死に制服のネクタイを引っ張ってくる

王宮魔法師としては、魔法のこととなると探究心を抑えられないみたいだな……。

そんなことを吞気(のんき)に考えていると、不意にリビングの扉がガラガラッと開く。

「にゃー……ドミニク様ぁ。お帰りになられていたのですか?」

メイド服姿のルミネスが現れ、寝ぼけ眼をゴシゴシと(こす)っている。

げっ! ルミネスだ! レヴィアを見られたら不味いぞ……。

いきなり女の子を家に連れ込んだりして、しかも相手は騎士だし魔神の敵っぽいよな……。

レヴィアが腰を(つか)んだまま振り返り、戸惑いの眼を向けてくる。

「……ええと、あの猫耳メイド服はドミニクの趣味ですか?」

「そ、そこ!? ま、まぁ嫌いではないね……」

斜め上の質問をして、納得した顔で(うなず)くレヴィア。

ついにルミネスも、うちに現れた不審者の存在に気づいたようだ

「にゃ!? そ、その小娘は! 貴様! ドミニク様の奴隷ならばメイド服を着るのだ!!」

「奴隷!? 誰ですか貴方は!? きゃぁ!」

一触即発の空気かと思いきや……スタタタっと、自分の部屋からメイド服を取ってきて、レヴィアの鎧を力づくで脱がせようとする。

「にゃぁ! 早く着替えるのだ! ドミニク様の機嫌を損ねてしまのだ!」

「えぇ! 自分で着替えるのでやめてくださいよぉ!」

こ、この2人……僕ってそんなにメイド服が好きそうな顔してるのか⁇ 


その後、落ち着きを取り戻したレヴィアに、ルミネスが僕の使い魔で記憶を失った『魔神』だと説明しておいた。

意外にもレヴィアは、僕の予想に反して「へぇー」っと薄い反応であった。神聖なる騎士と邪悪な魔神の間には、特に敵対関係はないようだ。

もしくは、彼女が魔法の話題にしか興味がないだけか。

2人を連れて王宮調合室へと転移する。

「ドミニク様。ここは新たなアジトですか? 私の部屋はありますか?」

「むむ……この服も意外と悪くないです」

研究室をそわそわと嬉しそうに駆け回るルミネス。

レヴィアは、慣れないメイド服に着替えて恥ずかしそうにしているが、少し満足気だ。ちなみに、背丈やサイズはルミネスと同じだった。

「ルミネスの部屋はないけど、自由に使っていいよ。それより、部屋の片づけを頼みたいんだけど」

「にゃ! かしこまりました!」

敬礼すると、せっせと部屋の片づけを始めるルミネス。元気に2階への階段を上っていく。

浄化の魔法で綺麗(きれい)にはなったけど、壊れた家具や穴の空いてしまっている床はそのままだ。

「さて、案内もまだ残ってるだろうけど、もう少しだけ時間をもらってもいいかな?」

「私は構いませんよ。騎士団のお仕事は午後からお休みになっていますので」

調合の研究をするのにアイリスの存在は欠かせない。転移の祭壇を作って、薬草学部の部室とここを(つな)ごう。

そのために必要な人材を集めてくるか。


再び転移魔法でエリシアスへと飛び、祭壇を作れそうな人材を連れてきた。

売店の店番で暇そうにしていた、魔導具部のウーリッドとトム先生の親子だ。

「事情は今説明した通りなんだけど、トム先生とウーリッドにもこの家のリフォームを手伝って欲しいんだ」

「リフォームつったってなぁ。学生の身分で家をもらうのは教育上いかがなものか」

「パパ。ドミニク君は特別……!」

あまり乗り気じゃないみたいだけど、トム先生には天空山での借しもあるし手伝ってくれるだろう。

流石(さすが)に家の中に祭壇を作ると邪魔になるし、花壇の隣りに作ってもらうか。

「ここに祭壇を建てて欲しいんですよ。それと、家具作りなんかも得意ですよね?」

「祭壇は養成学校にあるやつでいいのか? 家具作りも問題ないが、無料じゃ引き受けられないぞ!」

急に商人の顔になったトム先生。

「お金は全て国が負担してくれるので問題ありません。作業費込みで100万Gくらいでどうですか?」

「やるぞ、ウーリッド!」

「うん……!!」

即答でオッケーが出た。

相場はいまいち分からないけど、小さな祭壇を1つ作るには多いくらいだろう。中に置く転移の石板はこっちで用意するわけだし。

祭壇の中に転移魔法を刻んだ『石板』を(まつ)れば、『転移の祭壇』の完成だ。

ここと薬草学部と僕の家を(つな)いで、部屋の管理はルミネスに任せるか。そうすれば、学校と家から王都の研究室を自由に移動できるぞ。

さて、今のうちにエリシアスの遺跡から、サクッと石板を取ってくるか。

『古代魔法』は普通の魔法石に刻むと、魔力に耐え切れず魔法石が破裂してしまう恐れがある。宝玉か、古代の石板に刻むのが無難だ。

エリシアスに転移しようとしたとき、研究室の片づけをしていたレヴィアとルミネスが外の様子を見にやってきた。

「にゃー、ドミニクさまー」

「ひ、人が増えています……また転移魔法で連れてきたのですか?」

そうだなー、せっかくだから2人も連れて、転移魔法を刻む『石板』を取りにいくか。

「うん。養成学校の売店の人たちだよ。それより2人とも、ちょっとゴーレム退治を手伝ってもらえないかな?」

「「え?」」

2人ともキョトンとした顔をしていた。

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