キメラ合成師
誇らしげに7色の翼を羽ばたかせるニワトリ君から、虹の羽を1本抜いて制服の胸元にプスっと刺した。
《コ……コケ……ココォ………》
「ん? あまり顔色がよくないね」
「むむ、この症状は……色彩鳥の魔力波が少々乱れていますね。魔力を吸い過ぎたんですね!」
駄目そうだな。僕の魔力は抜け出たみたいだけど、力み過ぎたニワトリ君は辛そうにしている。
「少し張り切り過ぎたのですね。体毛の色を変えるのにも魔力を消費しますから」
「目がクワッとしてて、見るからに危なっかしかったからなー」
「仕方ないので、神殿まで連れていきましょう。神殿には魔獣に詳しい方もいますので」
ニワトリ君を抱っこしたまま、神殿へと続く階段を登る。天井を見上げると、美しい女神様の彫刻が彫られていた。
『神殿』は人々が祈りを捧げる場所だ。
ここは王宮の施設の中で唯一、民間人も利用可能らしい。
神殿はエリシアスの『遺跡』に似てるけど、管理がしっかりされていて綺麗だ。誰かが浄化の魔法を掛けてこまめに掃除してるみたいだ。
天井へと伸びる大きな柱の横を通り抜けながら、入口に向かって歩いていると、不意に鳥に似たシルエットが視界に映った。
あれは……? 見間違いか? 入口付近に人型の魔獣っぽいのが佇んでるのが見える。
警戒して足を止めた僕を見て、レヴィアがほくそ笑んでいる。
「ふふ! 安心してください。あれは『王宮調教師』のファルコンさんです。主に騎士団の扱うグリフォンなど、キメラの研究を行っています」
「へー。あの獣人さんも『王宮』の称号を持ってるんだ」
「他にもファルコンさんは王宮の施設の管理も行っています。なにかあったら、気軽に相談に乗ってくれますよ」
ファルコンさんは、キリッ! っとした鷲の顔に屈強な人間の体がくっついていて、とてもシュールだ。
背中には翼が生えていて背は僕らよりも高い。レヴィアさんに年齢は聞かなかったけど、見た感じそこそこおじさんだろう。
「綺麗になれー」
両手を伸ばして大理石の壁の汚れを落とすファルコンさん。
その様子を見ていると、僕たちの気配に感づいたらしく、急にバ! っとこっちを振り返った。




