王宮魔法師1
転移魔法で王都の遥か上空へと転移した。
「絶景だな~」
落下しながら見下ろす王都の街並みは華やかだ。王都の内部へと続く水路を、船が行き来している。
テンション上がるなー。前来たときは、草原地帯の方から船に乗ってあの辺の水門を潜ったけな。カレンに自慢できないのが残念だ。
「到着っと。さて、人に見つかると不味いし、姿を隠しておこう」
丈夫そうな民家の屋根へと着地し、『光学迷彩』の魔法陣を描く。
バチバチッと全身に閃光が走り、体が透明になった。
これでよし!さて、王城はどっちだっけな?
つい先日、僕の元にエドワード王子から一通の手紙が届いた。
その手紙を要約すると、王宮調合師となった僕に与えられる『王宮専用の設備』の案内を、近日中に行いたいという旨のものだった。
僕と同じく、『王宮』の称号を持つ案内人を用意してくれたって書いてあったけど、『王宮魔法師』ってどんな人なんだろ。
「とにかく、エドワード王子のいるお城を目指すか」
追影先生流で、屋根伝いに走りながら王城を目指して移動を開始する。
軽やかに屋根を飛び移りながら進んでいくと、大きな通りに出た。
向こうの屋根まで少し遠いな……人通りも多いし、飛び移ったら誰かに見つかるかも。
転移魔法って手もあるけど、ここで下手に古代魔法を使って魔力波を発生させるよりマシか。
ステルスの魔法で姿は見えないし大丈夫……。
ダダダっと助走をつけながら、通りの向こうの屋根目掛けてジャンプする。
跳びながらチラッと下を見下ろすと、真下の大通りに武装した2人組が立っていた。
騎士団だ……この辺りを警備中みたいだな。
「屋根の上に誰かいます……!」
下にいた騎士の1人が、パッと反射的に手をかざして空を見上げた。
やば! もしかしてバレたか?
迷わないように屋根のルートを選んだけど、泥棒と間違われちゃったかも。まぁ僕は透明化してるわけだし、この魔法を見破られる可能性は低いだろ。
一応、どこかに隠れて様子を伺っとこう。
地上から見えない位置に姿勢を屈めると、走るスピードを上げた。
そのまま、王城へと続く通路の屋根まで辿りつくと足を止める。
「ふぅ、ここまで来れば安全かな……ん?」
……飛行魔法で誰かが降りてくる。
ローブを羽織った小柄な騎士が、僕の行く手を阻もうと向かいの通路の屋根へと舞い降りた。
腕を組んだまま顎を上げて、勝気な眼で僕を見下ろそうとしている。
僕より頭一つ小さいけどね……。
「そこの怪しいやーつ! 隠蔽の魔法を解除しなさい!」
さっきの大通りから飛行魔法で追ってきたのか……僕と年もそう変わらなそうだけど、騎士見習いって奴かな?
やっぱりさっきの大通りでステルスの魔法が見破られてたのか。




