表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/158

授業2 レオルと鉱石採取1

 先日、行われた『鍛冶』の授業によって、鍛冶部にあった多くの素材が消費されてしまった。


 基本的な消耗品などは学費で賄われているんだけど、鉱石や魔法石となると限りがある。


 ここは素材の楽園と称される『エリシアス』だ。素材は自然地帯に幾らでもあるし、学校から受けた恩を返すのは、自給自足の生活を送る冒険者としても至極当然の事だ。


 と言うわけで、底をついた素材の補給をする為、教員を含む新入生が、火山の麓の高原地帯にあるギルドのキャンプ地に集まっていた。


「ドミニク。お前の分のツルハシも借りて来たぞ」


「悪いね、ありがとうレオル」


 ギルドの倉庫用のテントから、レオルが採取道具の『ツルハシ』と『大袋』を借りて来てくれた。

 ツルハシは硬い地面や岩を叩いて砕く、持ち手の長い先の尖ったハンマーみたいなやつだな。


 火山地帯には、『鉱石』が採取できる洞窟が至る所にあり、ツルハシと大袋を持ったスタイルの冒険者を頻繁に見かける。

 重くかさ張る鉱石や採取道具を運ぶ手間を考慮すると、なかなか骨の折れるクエストのようだ。


「しかし、ギルドのキャンプに顔を出さなくても良かったのか? 現役の調査隊から冒険の話を聞ける機会なんて中々無いぞ」


「ハハ……僕は良いよ。有名人とか興味ないし」


 まぁ、僕もギルド職員だしな……。

 遠くからキャンプ地を覗いてみると、何人か見知った顔がいた。

 げっ……どこに知り合いがいて、いつ僕の正体がバレるかも分からない。他の生徒がいる時にギルドの職員には近づかない方が賢明だ。

 

「はじめまして、俺たちもドミニクのパーティに入っても良いのか?」


「……近くで見てみると普通だな。カルナ先生を倒したって割には覇気も無い」


「印象が変わったな。魔獣を生で直食いするって噂は本当か?」


 レオルに連れられてやって来たのは、別のクラスの生徒達だ。

 適性武器が『鈍器』だった連中を引っ張って来てくれたらしい。


「みんなよろしくね!」


 嬉しい事に、僕の誤解も解け始めてみたいだな? このメンバーなら打ち解けられそうな気がしてするぞ。


 教員達がテントから出てきた。

 今回も追影、カルナ、ドーリスの担任の3名が、ギルドと連携して授業を取り仕切っている。


 ギルドの職員も一緒になって、『拡声』の魔法で待機していた生徒達へ呼びかける。


「ギルドから登山の許可が降りたでござる! クエスト情報を各々の冒険者カードから確認するでござる」


 先生の言った通り、冒険カード取り出してクエスト情報を開いてみる。

 

『鉱石採取クエスト』か……これは、授業用の特殊クエストだな。


『鉱石採取』は洞窟から各種の鉱石をツルハシで削り取って持ち帰り、不純物を取り除いて『魔法石』『インゴット』などを生成するクエストだ。


 本来なら手に入れた素材はギルドか依頼主に渡し、報酬としてお金を貰うんだけど、今回は授業用に内容が変更されていた。


「報酬は無しだね……その代わりに『B』ランク以上の鉱石を採取出来れば、『資格』が授与されるんだってさ」


「ドミニク。これはチャンスだな……鉱石採取のスキル適性がない俺でも、資格を手に入れればクエストの信頼も段違いだぜ」


 冒険者カードに刻まれる『資格』は、入場制限の設けられた採取場所への入場許可証にもなる。

 この火山にもそういった制限のある洞窟は幾つもあるけど、今回は授業という事で特別に許可されていた。


 珍しいハーブなどの素材が欲しい採取クエストマニアなら、持っていて損は無いな。


 再び、教員達の『拡声』の魔法が火山に響いた。


「これから各自、自由にパーティを組んで登山開始でござる!」


「単独行動は遭難の可能性にも繋がります。パーティメンバーの『検索』の魔法の範囲内から出ず、チームワークを心がける様!」


 これだけの生徒が一斉に山に入るんだ……検索の魔法を使って特定の人物の魔力を嗅ぎ分けるのは、教員でもなかなか骨が折れるはずだ。


 病んでいたカルナ先生も今は元気そうだ。目を輝かせて、火山の入口へ生徒を誘導している。


「ルミネスの尻尾きもちー」


「柔らかくてふさふさだねっ!」


「にゃー! もふもふするな!」


 入口の近くで、カレンとリーシャに尻尾をもふもふされているルミネスの姿を発見した。


 今回はいつものメンバーとは別のパーティで組む事になった。多分、レオルと鈍器組がいるので、カレンが僕に気を利かせてくれたんだろう。


 ※


 縦に列を組んで進む生徒の群に続き、ぼちぼちと山を登り始めた。


 火山地帯には火のエレメンタルが程よく流れていて、年中過ごし易い気候となっている。


 突発的な噴火がある所為で、周囲は降り注いだ火山灰によって白く濁り、足場は硬く、頂上から流れて来たマグマによって墨色に固まっていた。

 生えている草木は火山環境に適応して縮んで細くなり、燻んだ赤色の葉を生やしていた。


 見通しはかなり良い。山の反対側に向かって道を逸れたりしなければ、離れた所からでもギルドのキャンプ地を確認できた。


 これなら、迷う心配はそうそうなさそうだ。

 そう思った矢先にレオルが列から外れ、僕に手招きをした。


「俺たちは頂上を目指す。 Bランクのルビーの鉱石を手に入れないと資格が貰えないからな」


「別に洞窟があれば、頂上じゃなくても良いんじゃないの?」


「駄目だ。鉱石の採取ポイントを見てみろよ」


 事前に貰ったクエスト情報を開いてみた。


 高度『1500m』付近で採れるのは『鉄鉱石』。

 一番安く手に入る鉱石で、盾や剣の素材では定番中の定番だ。

 質によってF〜Cランクまで分けられ、今回の資格を取るにはBランクの鉱石が必要なので足りない。


 高度『2000m』付近で採れるのは『ルビー鉱石』だ。

 B〜Aランクに該当する鉱石で、やはり、不純物の多さや素材の痛み方によってランクは上下するけど、資格は手に入る。


 ふむふむ……採取できる鉱石は高度によって変わるのか。

 どうやら頂上に向かって登るほど、高価な素材が採れるらしい。


「とにかく、午前中いっぱい掛けて山を登るか。寄り道はしないぞ!」


「「了解!」」


 無鉄砲のレオルを筆頭に、鈍器組に混じって頂上を目指す事となった。

 まぁ、今回はレオルに乗ってみるか……迷わないよね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ