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授業1.6 適性武器

 ルミネスとウーリッドの適性武器もささっと作り、遅れながらも鍛冶部の工場から外に出た。


 武器を作ったら裏の林に集合するでござる、とか言ってたっけな。いってみよう。


「手裏剣です! あっちに忍のカカシが!」


 高く伸びた竹を指差し、手裏剣が刺さっているのを発見したルミネス。その下に、忍装束を着せられた数体のカカシが立っていた。


「ここは忍式の修行場かな?」


「向こうにみんな集まってる……」


 真新しい剣や槍を持ったAクラスの面々が、武器の使い心地を確かめていた。


 先生の見守る中、地面に建てられた訓練用の『カカシ』が、ザックザックと切り落とされていく。


「にん! 皆、なかなか筋が良いでござる! 初めてにしては上出来の剣が完成したようでござるな」


「すごーい! 切っても切っても伸びてくるよー。えぃ!」


「不思議だねっ!やあっ!」


 カレンとリーシャも、知らぬ間に適性武器を作り終えていた。お揃いの片刃のショートソードで試し斬りしている。

 

 切り落とされたカカシの頭が、不気味にゴロりと転がって来た。


 うわっ、切られたカカシの首からニョキニョキっとまた頭が生えてきたぞ。竹製のカカシか……自己再生する遺伝子組み換えが施されてるんだな。


 爽やかな汗を流し剣を振るAクラスの面々。

 これが、普通のクラスメイトとの普通の青春ってやつか……みんな楽しそうで何よりだ。近頃、SSSランクやら王宮の称号やらで大変だったからなー。


 その様子に浸っていると、とあるグループからもっさりとした暗黒のオーラが流れ込んで来た。


「はぁ……適性武器が剣の奴が羨ましいぜ……」


「お前は槍なだけマシってもんだろ? 俺は木こりの斧だ」


「レオルなんてフライパンなんだぞ。斧くらいでガタガタ抜かすな」

 

 斧、ハンマー、杖を握ったまま暗い顔をした連中が、小さな円を組んで肩を落としている。


 適性武器が剣じゃなかった『鈍器組』だ。


 確かにハンマーは華が無いというか、格差を感じるような……僕は杖も地味で好きだけどね。


「ふっ……惨めな俺を笑ってくれドミニク。狂戦士が聞いて呆れるだろ?」


 レオルに至ってはまた鍛冶を失敗したらしく、フライパンが二刀流になっていた。


「僕も杖で鈍器だし、そんなに気にする事ないんじゃないの?」


「同情はやめてくれ。親父に合わせる顔がないぜ……はぁぁぁ」


 今朝まであんなに元気だったのになぁ……廊下でロングソードを振り回してた面影が全く無いぞ。


「貴様ら何を落ち込んでいるのだ。適性武器に自信を持て!」


「鈍器は素敵……」


 ちなみに、喝を入れてるルミネスの適性武器は『メリケンサック』。ウーリッドは『ハンマー』だったので、2人とも漏れなく鈍器組みの仲間入りだ。


「せっかくだし、僕らも武器を試そうか。あのカカシを叩けば良いのかな?」


「その様ですね」


 うじうじしていても仕方ないので、さっき使ったばかりの武器の威力を試す事にした。


 カカシに近づき、両手で握りしめた杖を大きく振り被った。


「いくよー!」


 声を上げたその瞬間、ザザザザ!っとクラスメイト達が蜘蛛の子を散らす様に退避していく。


「ドミニクだ! 急いで退避! 防御魔法を発動しろ!」


「事故る前に追影先生を呼んでこい! 早くしろ!」


 防御魔法のシールドを貼り、細い竹の陰に隠れてしゃがみ込んで万全の態勢で待ち構えている。


 えぇ……何でみんな逃げてくんだ?

 近くに熊の魔獣でも現れたのかな。


「見事なチームワークでござる……クラスが一丸となって事故を未然に防ごうとは、成長したでござるな」


 追影先生まで印を結んで待機してるし……。


 もういっか、振り上げたままの腕がだるくなってきた……。

 2トンの重量があるアースエンドの杖をグッと握りしめ、フルスイングでカカシに叩きつけた。


 音速を超えた杖が一撃でカカシを粉砕し、ドーン!!!!っとそのまま地面を大きく揺らした。


 防御魔法のシールドに、粉砕したカカシがパラパラと降り注ぐ。


「カ! カカシが粉々だ! どうなってるんだ、再生しないぞ……」


「地面に亀裂が入ってる……あの武器はなんなんだ?」


 シールドを解除し、一斉にみんなが集まって来た。

 粉々になって消えたカカシと、割れた地面を見て不思議そうにしている。


 うーん、宝玉は頑丈だし振り心地も良いな。近接武器としても申し分ないだろ。

 それにしてもあのカカシ、粉砕すると自己再生できないのか、さすがに盲点だった。


 レオルが目を輝かせながら、僕の肩を揺さぶってくる。


「ドミニク! どれだけ凄ぇ威力の武器を作ったんだよ! 地割れを起こす伝説のエクスカリバーが完成したのか!?」


「いやー、ただの杖だよ」


「「ど、鈍器すげぇぇ!!」」


 さっきまで円を組んでイジけてた鈍器組が……急にテンションを上げて騒ぎ始めちゃったぞ。


「見たか今の一撃を……あれが鈍器に隠された本当の力だ」


「剣を使ってる澄まし野郎は2度とでかい顔すんなよ」


「いやもう鈍器は関係ないだろ……ドミニクは馬鹿力なんだから」


 偶然にもカカシが一体破壊された事によって、武器にも適材適所があるという事が証明された。

 たまたまだったけど、剣組と鈍器組の垣根が取り除かれたみたいだな。


 こうして、授業はお終いとなった。

 散らかった林を念入りに掃除してから、武器を持って養成学校へと戻っていく。


「にゃー、ドミニク様。いつになく楽しそうでしたねー」


「杖が好きなんだね……」


「そうかなー? 隕石の魔法も試してみたかったんだけどね」


 うちのクラスは約30名、今日の鍛冶の授業でみんなが武器を作り、大量の素材が消費されてしまった。後日、インゴットなどの素材をみんなで採取しにいくんだとか。

 隕石の魔法はその時に試せばいいか。

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