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授業1.5 適性武器

 さて、この杖にはせっかく立派な宝玉が付いているので、付与魔法を幾つか刻もう。


「まずは、杖を改造しようかな。追影先生は近接用の武器を作るのが今日の課題だって言ってたからね」


「その杖をどう強化するのですか? 既に危なげな魔法が付与されているようですが……」


「物理攻撃を強化する為に、硬度を上げて『重く』するだけだよ」


 物体を重くするには、質量を増やしてやれば良い。

 アースエンドスタッフに走っている金の模様はオリハルコン金属だ。そこに無機質を強化する『オリハルコンマテリアル』の魔法を直に焼き付ければ、簡単に質量は増加させられる。


初級魔法(オリジナル)・『オリハルコンマテリアル・ヘビメタ(質量増加)』」


 金の模様にジワりと魔法陣が溶け込んだ瞬間。ベキベキ!!!!っと足下の石畳に亀裂が走った。

 げっ!? ちょっと重くし過ぎたかな……。


「ドミニク様! 足場に亀裂が!」


「どれだけ重くしたの……?」


「30トンくらいだね。それより早く床を直さないと」


 キョトンとする2人をよそに、慌てて足場に『思考形成』の魔法を掛けて亀裂を修復し終えた。


 これじゃ重くて駄目だな、魔法の効果を落として杖を軽しよう……魔獣を殴って倒すなら2トンくらいあれば十分だろ。


『ヘビメタ』の魔法陣を劣化させると、さっきよりも杖がグンと軽くなった。


「よーし、これで近接武器化は成功だ」


「……兵器化の間違いじゃ?」


 あともう一つくらいなら宝玉に魔法を刻めそうだな。

 ……そうだ、『植物系魔法』はどうだろう?


 収納の魔法を発動し、四弦楽器のウクレレを取り出した。


 このウクレレは、先日ウーリッドから貰ったものだ。骨董品らしく、特殊な植物系の魔力波が秘められている。


『植物系魔法』は花や植物系の魔獣が操る魔法だ。

 人間達の魔力とは質が違う為、魔法陣を崩す『解除』の魔法が通用しない。冒険者達の間でも未知の魔法として語られている。


 四弦楽器の弦がポロロンっと振動し、植物系の魔力派が工場の汚れた壁に反響した。


「んー、全然わからない……人間の魔力波とどこが違うんだ?」


「っ!……これは……」


 ルミネスが目を瞑り、ふさふさの猫耳を震わせて耳を澄ましている。


「……確信はありませんが、植物系魔法とは『音階』の組み合わせによって発動される魔法なのではないでしょうか?」


「音階? 音で魔法を操るって事?」


「はい。聴覚強化の魔法を掛けて、そのウクレレの音を聴いてみて下さい」


 言われた通りに聴力を強化し、ウクレレの弦を上から順番に弾いてみる。


 ……1つ1つの音が、構成魔力数に似ている。

 この音を魔法理論に照らし合わせて組み立てれば、魔法が発動するかも知れない。


 要は、魔法陣を描く代わりに、音階の組み合わせで魔法陣を再現するだけだ。

 試しに、花竜が使っていた木を槍に変える植物系魔法を再現してみよう。無限の霧樹海で、ルミネスが花竜から受けた『(いばら)』の魔法だ。


初級魔法(オリジナル)・『メロディー』」


 詠唱に合わせて、綺麗なピアノの音階が鳴り響いた。

 変化させるのは、さっき合成に使った釜の木蓋だ。


 転がっていた木蓋が鋭利な槍に変形して伸び、工場の天井をバキバキィ!っと豪快に突き破った。


「せ、成功だ! 旋律に反応して魔法が発動したよ!」


「さすがドミニク様です! お役に立てて光栄です!!」


「み、未知の魔法が解明された……? 奇跡……」


 よーし、まだまだ未完成だけど、『旋律』の魔法をアースエンドの杖に刻んでおこう。慣れれば色々な植物系魔法が使える様になる筈だ。


 次は外で隕石の魔法を試してみるか! それにしても、今日のルミネスは無駄に賢いな……? ついさっき、秘境で黒竜を狩って来た奴とは思えない。主人としては複雑な気持ちだ。

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